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しおりを挟むエステルの寝室を出たアイザックは、自分が両親をうまく説得できる自信がなかった。
「……メイディア嬢、一緒に両親を説得してくれないか?」
「あ、はい。」
「君は本当にいいのか?その、結婚歴がついてしまうが。」
「大丈夫です。だって、もし離婚後に結婚したい相手が出来たとしても、初婚でなければならない相手ではないことは確実ですから!」
確かにそうかもしれない。
持参金を手に結婚できる相手がいたのなら、ここで侍女にはなっていないのだ。
彼女と同じ、継ぐ家のない次男か三男と結婚するなら結婚歴は問題にならない。
「ありがとう。……エステルの命が残り僅かだなんて信じられないな。」
少し前まで、ルイスを腕に抱くこともあったんだ。
「怖い、毒ですね。これまでも気づかれずに多くの人が亡くなったようですし。」
「エステルが気づかなければ、出産が原因だと思っていただろう。」
「そうですね。あの、デボラ様とは親しくされておられたのですか?」
あぁ、毒のことを知らなければ、デボラと再婚していたと思われているのか?
「いや、私はこの通り口下手だから、彼女が一方的に話して帰って行くだけだ。義妹だから、無下にもできないと前に座っていただけで。」
アイザックにはわからない、ドレスの話や流行り物の話、人気のお菓子、学園での不満事などをペラペラと話し、こちらの同意や返答など求められることもない。
デボラは女性の中でも苦手な部類に入る。
「……ここで待っていてくれないか?両親を呼んでくる。」
応接室の前で、メイディアに言った。
両親の元に共に向かうのは使用人たちの目もある。
まだ再婚が決定したわけではないため、二人でいる姿を見られない方がいいだろう。
「わかりました。あ、お茶の準備をしておきますね。」
「よろしく頼む。」
メイディアはアイザックの言いたいことがわかったようだった。
この時間なら両親は食事中だとわかっていた。
顔を出すと、ちょうど食べ終えたところのようだった。
「父上、母上、込み入った話があるので一緒に来ていただきたいのですが。」
「込み入った話?」
「……エステルのことで。」
「わかった。」
アイザックは両親を連れて、応接室へと戻った。
中ではメイディアがお茶の準備をしてくれていた。
「メイディア嬢、君の分もお茶を入れて座ってくれ。」
「かしこまりました。」
アイザックの言葉に、両親共に反応したが、何も言わなかった。
メイディアがお茶を並べ、着席すると母が言った。
「アイザック、彼女を愛人にするつもり?」
「は……?違いますよ。」
いや、当たらずといえども遠からず、か?
「実は、エステルの不調は毒のせいでした。」
「毒?念のために検査をしたが、反応は出なかったと聞いたが?」
「それが、どうやら暗殺用に作られた特殊な毒らしいのです。」
アイザックは、エステルが妹デボラと侍女サリーが話していた会話を伝えた。
「じゃあ、エステルはもう助からないの?!」
母が驚いて悲鳴のような声をあげた。
「そのようです。私もまだ信じられないのですが。
それで、エステルから”最期の願い”だから、とルイスのためにこちらのメイディア嬢と再婚してほしいと頼まれました。」
両親は揃って目を見開いていた。まぁ、そうなるだろうな。
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