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しおりを挟む聖堂の建設はまるで国家の重大案件かのように非常に急ピッチで進められていた。
それに不満を抱いたのは母だった。
「聖堂ができてしまったら、リリスと一緒にいられなくなるわ。」
「お母様、完成は私が殿下に嫁ぐはずだった頃と変わらないのです。嫁に行けば一緒に暮らせなかったのですから、聖堂で暮らしても同じようなものですよ。」
聖堂にはミミも一緒に行くと言っている。
自分のことは自分でするつもりでいるのに、ミミはリリスティーナのお世話がしたいらしい。
今はユリアの中に入っているので、ミミはユリアの世話をしているみたいになっている。
使用人たちの中にも、ユリアの立ち位置を不思議に感じている者もおり、このまま公爵家に居続けるわけにもいかないのだ。
ユリアは死んだ娘リリスティーナの身代わりか、あるいは、長男ラッセルの愛人か。
そのような不本意な噂を立てられてはいけないのだ。
月日が経ち、聖堂が完成した。
聖人と呼ばれる者以外に、料理人やメイド、あとは騎士も国から配属されることになっている。
公爵家からも、兄の護衛騎士の一人がリリスティーナの騎士になると立候補した。
元はリリスティーナの護衛騎士だった男だ。
リリスティーナが誰に憑依しようと、常に近くにいて盾になると言う。
リリスティーナが体を借りているせいで傷つけられるようなことがあれば、リリスティーナは申し訳なく思い、体を乗っ取ることが嫌になってしまうかもしれない。
そうならないよう、聖女とは守られている存在で、不可侵領域であると知らしめるのだ。
その騎士クレッセルは少々厳つい顔をしているので威嚇になる。
こうしてリリスティーナは、両親である公爵夫妻からまるでお目付け役のような指示を受けている侍女ミミと騎士クレッセルと共に聖堂へと住まいを移した。
聖堂の完成披露で、国王陛下は述べた。
「この聖堂はここで亡くなったリリスティーナ・クレベール公爵令嬢のために建てたものだ。
彼女は怪我を治すことのできる治癒、聖力というものを得た令嬢であった。彼女の無念がこの場所に力を与えたのか、その聖力は条件を満たす者に力を貸してくれるということがわかった。一定期間、一人にだけ聖力を授けてくれるのだ。」
だから聖堂が建てられたのか、条件とは何だ?とざわついていた。
「聖力を授かった者を聖女と呼び、ひと月ごとに12領地を周って怪我人を治癒する期間を設ける。
急を要する者は、この聖堂につれて来れば聖女の治癒が受けられるだろう。」
腰や膝の痛みも治るのか?という声も聞かれた。
怪我と言えるかは微妙だが、本人にとっては大問題らしい。
それくらいは治癒しても構わないけど。
「ここにいる二人は聖女の聖力を授かることのできる聖人と呼ばれる者である。今はこちらの聖人が聖女であり治癒が使え、もう一人の聖人は治癒が使えない。日によっては逆の時もある。
聖力は目に見えないものであるが、聖女に無理強いをすると聖力は聖堂に戻るらしい。
聖女の聖力は独り占めできるものではないということだ。」
ユリアとミミはベールを被り、顔の造形はわからなくしていたが、ミミは注目を浴びたことで小刻みに震えていたので可哀想なことをしたとリリスティーナは思った。
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