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しおりを挟むリリスティーナは聖女として活動するようになってからずっと、ユリアの中にいた。
ユリアは人間関係の煩わしさに疲れ、更にリリスティーナと一緒にいることが心地いいので一人になりたくないというのだ。
ずっと、このままでいい。
後ろめたく思いながらもユリアがそう願うならば、とリリスティーナはユリアとして何年も過ごしていた。
面倒になって、ベールも被らず治癒するようになっていた頃、ある領地で驚く人に出会った。
「え……?ユリアじゃない?まさか、あんたが聖女なの?」
誰だったかな?私の知っている人?とリリスティーナがは首を傾げた。
服装は平民のように思えるし、ここはユリアと縁のある領地ではない。
ユリアの知人がリリスティーナの知人とは限らないし。
(姉のリオーネ、だわ。)
((生きていたのね。))
ユリアの呟いた声に、リリスティーナの心の声が重なった。
リオーネは、リリスティーナの婚約者であったウォルタス殿下の浮気相手の女性である。
うまくいけば、王太子妃になれていたかもしれないリオーネは平民の身分に落ちた。
今はどんな暮らしをしているのかはわからないが、顔を殴られたように腫らしていた。
「早く治してよ。」
こんな横柄な患者は久しぶりだった。
まだ治癒力を半信半疑のように思う者がいた頃、頭の固い隠居貴族にこのような態度が多かった。
しかし、患者は患者であるため、リリスティーナはリオーネの怪我を治癒した。
「ふう~ん。本当にあんたが聖女だなんてね。」
「……私は聖人です。聖力を授からなければ元のユリアですから。」
「ね、私でも聖人になれる?お給金はいい?どうなの?」
ウォルタスと浮気をして既に純潔ではないリオーネは聖人にはなれない。
念のため、リリスティーナは彼女を”視て”みたが、やはり資格はなかった。
この頃には、リリスティーナは女性が乙女であるかどうかも視られるようになっていたのだ。
聖力はまだまだ未知なところが多い。
「王都追放の身であるあなたが聖人になれるわけがありません。『リリスティーナ聖堂』は王都にあるのですから。」
聖堂の名前を言うと、リオーネは顔を顰めた。
「……久しぶりに嫌な名前を聞いたわ。」
「よくそんなことが言えますね?ここはクレベール公爵領ですのに。」
そうなのだ。
まさかのクレベール公爵領。リリスティーナの実家の領地にリオーネは住んでいるらしい。
「何よ、姉に向かって。そうそう、両親はもう死んだわ。だから、あんたの身内は私だけね。お金、困ってるのよ。聖人の給金、毎月送ってくれない?」
「……衣食住を聖堂でお世話になっているのです。給金と呼べるようなものはほとんどありません。」
「え?無料奉仕なの?あり得ない。じゃあ、聖人辞めて別のところで働きなさいよ。」
「お断りいたします。今の暮らしが合っていますので。」
「……あんた、いくつになったっけ?あの時15だったから24歳?」
そう言って、リオーネはユリアをジロジロと見ていた。
嫌な予感しかしないよね?
だって、何となくリオーネの思考が読めてしまったから。
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