55 / 100
55.
しおりを挟むリリスティーナ様が友人を作らないのは、親しくなった人が先に亡くなってしまうという、どうしようもない事実から逃れられなくなるからだろうとラヴェンナは思った。
友人になりたいなどと、軽率なことを口にしてしまったと反省した。
「ラヴェンナ、気にしないで。これは私が勝手に決めたことなのだから。」
「はい。ついでにと言ったら失礼ですけど、最後の恋はクレッセル様ですか?」
リリスティーナ様はクレシア様の顔で真っ赤になった。
「ど、どうしてそれを。何人かに同じ話をしたけれど、今まで気づいた子なんていなかったわ。」
「元はリリスティーナ様の護衛だったのですよね?」
「ええ、そうよ。殿下の傷を治した日、彼は非番だったの。私が無理やり研究施設に連れて行かれたことだって、自分がいれば違和感を覚えていたかもしれないのにって後悔していたわ。」
王家からは、リリスティーナ様が自ら研究施設で過ごすことを望んだと報告があり、未知の魔力を得たことを両親にも会えないほど恐れているのかとその時は誰もが静観するつもりでいた。
だが後日、侍女や護衛にも一言もなく研究施設に向かったと聞き、クレッセル様はやはりおかしいと公爵夫妻に伝えたらしい。
そこから公爵夫妻は、何度も会わせてくれと研究施設に訴え、研究者からはウォルタス殿下を通してほしいと言われ、会えないままひと月が経ったのだ。
あの日、リリスティーナ様の棺を公爵家まで運んだ一人がクレッセル様だったらしい。
研究者たちを捕らえに向かった騎士の中にもクレッセル様はいたという。
その後は、リリスティーナ様の兄ラッセル様の騎士になっていたけれど、ユリア様の中にいるリリスティーナ様の盾になるために、クレッセル様は聖女の騎士になられたという。
「クレッセルが贖罪として私の側にいたことはわかっていたわ。何度もあなたは悪くないと言ったけど、彼は受け入れなかった。研究施設に押し入って私を探すべきだったと護衛失格なのだと言って。」
そこまで言われたら、側にいることを許してしまうわね。
「彼は強面顔だったけど、とても優しい人だったの。婚約者だった殿下があんな人だったから、もうその優しさと頼りがいがあるクレッセルを好きになってしまったわ。口にしたことはなかったけれど。」
「クレッセル様は気づいておられたのですか?」
「どうかしら?でも、多分そうね。護衛を辞めてからも毎日来てくれたわ。庭の一角に綺麗な花壇を作ってくれたの。私の誕生日にはね、花の種を贈ってくれて一緒に植えたわ。この花を見たら自分を思い出してくれって。ふふ。寂しくならないようにそう言ってくれたのね。」
リリスティーナ様の視線の先には、色とりどりの花が咲いている。
この場所は彼女のお気に入りということらしい。
「……リリスティーナ様?それって、自分以外の男に恋をするなという意味ではないですか?」
自分の死後、460年くらい?精神体でいるリリスティーナ様にずっと思い続けてもらえるように。
リリスティーナ様に対するクレッセル様の気持ちの方が何百倍も重くない?
「あら。そうだったの?ふふ。嬉しいわ。」
嬉しい、のであればクレッセル様の作戦勝ちね。
1,704
あなたにおすすめの小説
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
私の願いは貴方の幸せです
mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」
滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。
私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる