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しおりを挟むラヴェンナは婚約者のラウルードと馬車に乗って屋敷へと向かっていた。
隣同士に座り、手を握る。
ラヴェンナの侍女も一緒に馬車の中にいるけれど、彼女はそれを微笑ましく見てくれる人だから。
「お疲れさま。聖女はイボンヌ嬢だって?」
「ええ。どうして知ってるの?」
「アレクサンドル殿下のところに誰かが知らせにきて、その後に叫んでいたんだ。『私に相応しい婚約者は聖女になるイボンヌ嬢に決めた』って。」
「決めたって……ジュリエッタ様と婚約したままなのに。」
すぐに解消されることになるけれど。
「ラヴェンナが聖女に選ばれなくてよかったよ。聖女は素晴らしい存在だけど、離れ離れの生活は寂しいからな。みんなの聖女じゃなくて、僕だけのラヴェンナがいい。」
「そう言ってくれて嬉しいわ。もし選ばれたら、一、二年で聖女を辞めるという最短記録を作ろうかと思っていたくらいよ!そうしたら予定通りに結婚できるでしょ?」
ラヴェンナが学園を卒業するまではあと二年あり、もし選ばれればその間だけしか聖女にならないと言うつもりでいた。それならば卒業後に結婚するのと変わらないから。
「ははっ。ラヴェンナらしいな。」
当然よ!絶対にラウルード様と結婚するんだから!!
指を絡ませた手をギュッと握り、ラウルード様にもたれかかった。
ラヴェンナの頭に、ラウルード様も顔を寄せてくれる。
あぁ、幸せだわっ!
屋敷に戻ったジュリエッタは父親に報告に向かった。
「お父様、聖女はソフトス伯爵家のイボンヌ様に決まりました。」
「そうか。」
父はどこかホッとしているように見えた。
「それで、アレクサンドル殿下との婚約なのですが、解消されることになると思います。」
「……殿下が聖女と結婚するという話は広まっている。お前が聖女に選ばれなかったことで、お前たちの婚約は白紙となることが決まっていたのだ。」
「そうなのですか?白紙に……。」
「ああ。お前に傷がついたわけではない。だが、いい縁談があまりないことも事実だ。後妻になるかもしれんが、必ず嫁ぎ先は見つけよう。」
ジュリエッタは公爵令嬢であるため、爵位をどこまで下げるかが問題だと父は言う。
「あの、お父様、爵位のある方でなければなりませんか?」
「……それは相手によるな。一緒になりたい者がいるのか?平民は勘弁してくれ。」
「私の一方的な思いです。お兄様の側近のウェイン様を……」
「ああ、ウェインか。」
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しかし、婚約者が亡くなってしまったのだ。
ウェインは実家の兄と仲が良くないため、実家を出て働くことにした。
そこにジュリエッタの兄が声をかけて、一緒に仕事をするようになった。
兄と一緒に卒業したのが昨年なので、まだ公爵家に来て、一年ほどである。
「悪くないな。打診してみるか。」
ジュリエッタは驚いた。
父がジュリエッタの気持ちを汲んでくれるとは思っていなかったから。
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ウェインはジュリエッタとの婚約を快諾したという。
勇気をくれたリリスティーナ様にジュリエッタは感謝した。
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