聖女になりたいのでしたら、どうぞどうぞ

しゃーりん

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リリスティーナは、イボンヌが28歳になる頃から、『授かっている聖力を使うことができるのはあと五年ほど』だと言い始めた。


「それは代替わりまであと五年だと言うことか?」


アレクサンドルの父である国王陛下に問われた。


「いえ、代替わりではありません。
『リリスティーナ聖堂』で聖力が授けられるようになってから私で十人目なのですが、おそらく聖力の限界を迎えたということになるのだと思われます。」
 
「限界?聖力は聖女から聖女に授けられる。そう伝え聞いてはいるが、それはまだあと340年ほど続くという意味ではなかったのか?」

「最初の頃の聖女様は怪我の治癒だけをされていたと聞いております。ですが後に結界を国中に張り巡らしました。今はその結界の修復をして回っていますが、おそらく結界の維持に聖力が多く使われた結果、聖力の限界がきているのではないかと。」


結界のせいで、聖力の終わりが見えてきたということにした。


「では結界の修復を止めれば、もう少し長く治癒ができるのか?」

「どうでしょうか。もうあまり変わらないかと思います。それよりも、結界が無くなることを周知して、対応を考えていくべきではないでしょうか。」
 
「そうか……結界と治癒が失われる、か。」


いつ結界が消えても大丈夫なように伝えてはきた。
だが、昔に比べて減ってしまった兵の数を戻すようにしなければならないはず。
それに、町や村を守るために、結界代わりの柵を作る必要もある。


「いつの時代か、また聖力を持つ者が現れる可能性もあります。
160年ほど前、リリスティーナ様が突然授かったように。」

「リリスティーナ……王子に殺された彼女の無念が聖力を授けていたというのは事実なのか?」
 

この国王陛下は書物では記録されていなかった事柄を少しは知っているらしい。

それでも、目の前にいるイボンヌにリリスティーナが入っているということを知らないのであれば、精神体となって500年間あの聖堂に閉じ込められたという事実は伝わっていないのだろう。

当時の国王陛下が次代に伝えなかったか、伝えても信じなかったためにどこかで無視されたか。


「国王陛下はご存知かわかりませんが、たとえ聖力が尽きようともあの聖堂は大切にしなければなりません。王家には500年と伝わっていたようですが、その期間は特に蔑ろにすれば何が起こるかはわかりません。」

「……リリスティーナの怨念が降りかかる、と?」


この国王陛下は、そういう類の話が苦手らしい。
新たな女性を選ぶのにあの聖堂は必要な場所なのだから、廃れて誰も来ないような場所にされては困る。


「私には何とも言えません。ただ、本来は聖力は広く伝わるはずだったのではないかと思われます。
リリスティーナ様が子を産んでいれば、聖力は子に受け継がれていくはずだったかと。」 

「だが死んでしまい、残された聖力も限界がきたということか。」

「またどこかに聖力を持った者が現れるかもしれませんが、その者を聖女として取り立てるべきではないと思います。」

「どうしてだ?」


この国王陛下は聖女を腰痛を治してくれる便利な道具のようにしか見ていないから、先のことがわかっていない。


 
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