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しおりを挟むリリスティーナは新たに聖力を持つ者が現れても、聖女として取り立てないでほしいと国王陛下に言った。
「これまでの聖女は聖力を授けられていただけで、失えば元の自分に戻るだけです。
ですが、新たに聖力を持っているとなると、その者自体の聖力ということになります。」
「そうだな。素晴らしいことではないか。」
「攫われてしまいますよ?」
「あっ……だ、だが、守るという意味でも名乗り出てもらうべきではないか?」
「治癒の聖力を持つ子を産ませるための道具にされてしまうのではないですか?」
「そうならないように、守れるだけの力がある者と結婚させることもできるだろう。」
確かに。有力な貴族の方が安心ではある。
「でしたら、強さに関わらず聖力があることを申請してもらえばいいと思います。」
「……イボンヌが聖力を持つ者が現れると知っているように話すのはなぜだ?」
「そう感じるからです。リリスティーナ様も突然授かったと伝え聞いております。私の聖力が無くなった時、どこかで誰かが聖力を授かる。そして結婚して子供を産み、その子にも聖力があるでしょう。」
「その子供が結婚してまた聖力を持つ者が増える。……気の長い話だな。」
「ですが、我々の魔力もそうして繋がってきたはずです。」
そしていつしか、他の魔力を持つ者ほど多くはないけれど、確実に増えていき、特別に取り立てなければならないほどの存在ではなくなる。
初めは高位貴族が続々と縁を結ぶようになり、やがて下位貴族に。それから平民に。
それは元々、リリスティーナから始まるはずだったこと。
500年が過ぎ、リリスティーナの精神が浄化されてから起こるであろうことを、乗っ取った体で妊娠して自分の目で見届けようと思った。
まだ300年以上あるのに今の暮らしを続けていては何も変わらないし、飽きたし。
聖力は子に受け継がれる。
そう思う。
これはリリスティーナから始めるべきでしょう?
「……イボンヌの言いたいことはわかった。数年後にそなたが聖力を失い、誰かが新たに授かるかもしれない。それは王太子の時代になるだろう。私もあと数年で退くからな。」
「そうですね。聖力を授かった者が安全に暮らせるように事前に方針を決めておくといいと思います。
そうしていれば、安心して名乗り出てくることでしょう。」
その名乗り出る者は、誰かを乗っ取ったリリスティーナと自分が産むはずの子供たちなので、ちゃんと安心できるものであるかを見届けてから聖女を辞めることにした。
その後、リリスティーナは聖女イボンヌとして領地を回りながら、聖力の終わりが近づいてきていることを領主や国境と隣接している町や村にも伝えて回った。
兵士の増強、国境整備などに金と力が注がれて不満も出ていたが、聖力に頼っていなかった昔の者たちができていたことなのだから、結界で守られていた間に得た知識で自分たちならそれ以上にできるはずだと奮闘した。
最後の一年は結界の修復は何もせず、綻びから獣が現れても対処してもらうことにした。
怪我人は増えたが、仕方がないのだ。
今、こうすることで、リリスティーナにかけられた術が消える頃には聖力を持つ者が増えているはずだから。
300年以上、それが早まったというだけ。
それを知っているのはリリスティーナしかいないけれど。
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