74 / 100
74.
しおりを挟むセレンティナは女の子を出産した。
夫クローヴィスの望み通りである。
リリスティーナとしても、最初は女の子である方が聖力を持っているかがわかりやすいのではないかと思っていたため、よかったと思った。
そして、確かに感じる。
聖力があることを。
やはり、リリスティーナの仮説は間違っていなかった。
セレンティナが産む子たちから、治癒が使える聖力を持つ者が広がっていくことだろう。
アリアローズと名付けた子はとても可愛く、クローヴィスはメロメロだった。
リリスティーナも、我が子というのがこんなにも愛おしいものだと初めて知った。
安定期に入るまで公表されていなかったが、同時期に王太子妃も妊娠していた。
少し前に王太子殿下にも男の子が産まれており、アリアローズは最有力婚約者候補になるだろうと父であるボッティ公爵に告げられた時、クローヴィスは膝から崩れ落ちるほどショックを受けていた。
この国の王族が他国の王族と政略結婚をしないのは、国の頂点なのに他国の血が混じるのは如何なものかという考えがあるからだ。
他国の王女が産んだ子が国王になると、いいようにも悪いようにも利用されかねない。
さらに違う国の王女と結婚すれば、一体どこの国の王族だ?となってしまう。
そのため、王族の相手は自国の貴族令嬢であることが多い。
公爵家に年齢のつりあう令嬢が産まれたのだから、最有力となってしまうのは仕方ないことなのだ。
セレンティナの実家、クレベール公爵家の兄嫁が数年以内に女の子を産めば、そちらも候補に挙げられることになるはず。
他の高位貴族も頑張って女の子を産んでほしいというのがクローヴィスの願いらしい。
しかし、リリスティーナとしてはアリアローズが王族に嫁ぐのはいいと思っている。
聖力を持つ子が王族にもいれば、無体な扱いは許さないはずだから。
アリアローズはみんなに可愛がられて愛嬌を振りまきながらスクスクと育っていた。
そして一年後、セレンティナは再び妊娠した。
「今度はどっちがいいの?」
セレンティナがそう聞くとクローヴィスは言った。
「男の子、かな。二人目に性別が変わった方がいいらしいよ。」
「そうなの?」
「二人目も女の子だと三人目も女の子の確率が高いらしい。三人目に性別を変えたければ少し年月を開けた方が変わる可能性もあるけれど、それも絶対じゃないし。」
「そうなのね。知らなかったわ。じゃあ、この子が女の子なら三人目は少し開けてから作るのね。」
クローヴィスは二人は欲しいと言っていたけれど、やはり男の子じゃなければ三人目を考えるだろう。
何人産んでもいいけれど、男の子にも聖力があるかは確かめてみたい。
「いや、別に女の子が続いても構わないけどな。セレンに似た可愛い子たちに囲まれるのも幸せそうだ。」
「あら。あなたに可愛いって初めて言われたわ。」
「そうか?まぁ、綺麗で美しいという言葉の方が似あうが、私にとっては可愛いよ。」
「あ、ありがとう。」
何故か照れてしまった。
そう言えば、閨事の最中には可愛いを連発されていたとふと思い出してしまった。
あの可愛いと今の可愛いは違うとわかっているのにっ!
1,646
あなたにおすすめの小説
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
婚約者から悪役令嬢と呼ばれた公爵令嬢は、初恋相手を手に入れるために完璧な淑女を目指した。
石河 翠
恋愛
アンジェラは、公爵家のご令嬢であり、王太子の婚約者だ。ところがアンジェラと王太子の仲は非常に悪い。王太子には、運命の相手であるという聖女が隣にいるからだ。
その上、自分を敬うことができないのなら婚約破棄をすると言ってきた。ところがアンジェラは王太子の態度を気にした様子がない。むしろ王太子の言葉を喜んで受け入れた。なぜならアンジェラには心に秘めた初恋の相手がいるからだ。
実はアンジェラには未来に行った記憶があって……。
初恋の相手を射止めるために淑女もとい悪役令嬢として奮闘するヒロインと、いつの間にかヒロインの心を射止めてしまっていた巻き込まれヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:22451675)をお借りしています。
こちらは、『婚約者から悪役令嬢と呼ばれた自称天使に、いつの間にか外堀を埋められた。』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/572212123/891918330)のヒロイン視点の物語です。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。
千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。
だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。
いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……?
と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
婚約者様は大変お素敵でございます
ましろ
恋愛
私シェリーが婚約したのは16の頃。相手はまだ13歳のベンジャミン様。当時の彼は、声変わりすらしていない天使の様に美しく可愛らしい少年だった。
あれから2年。天使様は素敵な男性へと成長した。彼が18歳になり学園を卒業したら結婚する。
それまで、侯爵家で花嫁修業としてお父上であるカーティス様から仕事を学びながら、嫁ぐ日を指折り数えて待っていた──
設定はゆるゆるご都合主義です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる