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しおりを挟むテレサとして暮らしたのは、クローヴィスが亡くなるまでの一年半の間だけだった。
クローヴィスはテレサをすごく可愛がっていた。……ように周りには見えただろう。
実際にはセレンティナに接するようにテレサに接していたからだが、クローヴィスは中にいるテレサに向けてもよく話しかけていた。
テレサは以前の明るさを取り戻し、聖力の使い方や病気を治す判断をした際の覚悟をセレンティナから教わり、ちゃんと理解してくれた。
セレンティナとして、もう思い残すことはなかった。
愛する夫の最期を、今度は自分が見送った。
(テレサ、体を貸してくれてありがとう。クローヴィスを見送ることができたわ。)
(お祖母様も行ってしまうのですか?もう会えないの?)
(あなたの祖母であるセレンティナは亡くなってしまったわ。だからこれが最後ね。私はセレンティナになれてすごく幸せな人生だったわ。テレサも幸せになってね。さようなら。)
(ありがとう、お祖母様。)
テレサの中から出ると、『リリスティーナ聖堂』に戻っていた。
これで完全に、セレンティナとしての人生を終えた。
愛する夫クローヴィスとの間に、4人の子供、13人の孫、3人のひ孫まで見ることができた。
聖力を広めるために結婚することを決めたが、このまま人生を終えたいと思ったほど幸せだった。
しかし、残念なことにまだあと280年以上も精神体は続く。
聖力を広めるために、また新たな人生を歩まなければやってられないくらい先は長いのだ。
セレンティナとしての人生をリリスティーナの心の奥底にしまい、聖堂の庭園の片隅にあるクレッセルと植えた花壇の花に癒されて、リリスティーナは再び動き出した。
その後に乗っ取った女性たちの人生は様々だった。
夫の結婚前の恋人に襲われて死んだ人生もある。
夫に子種がないことが判明し、離婚した人生もある。
夫が愛人と事故で亡くなり、子供が成長するまでに伯爵代理として過ごした人生もある。
こっそり浮気した人生もある。
聖力は子供を産むたびに引き継がれていったが、再び聖女という存在が現れたのはセレンティナが亡くなって80年くらい経ってからのことだった。
病気を治癒することができる者がいる、と平民の間で噂が広まったのだ。
聖力を持っているほとんどの者は思ったことだろう。
『とうとう、目立ちたがり屋が現れた』と。
セレンティナは子や孫に、病気を治癒した際の起こりうる出来事を言って聞かせた。
『聖力を持つ者が少ない間は酷使される人生になる。自分の人生を治癒に捧げるのであれば構わないが、感謝されるばかりではなく、見当違いの罵倒をされることにもなるので覚悟が必要である。』と。
こっそり、本人に気づかれないように、家族や友人、使用人などに治癒した経験のある者は多い。
だが、過去の聖女のように領地を周って治癒することなど貴族としての暮らしを捨てるようなものであり、聖力を広めるためにも結婚して子供をつくることを選ぶ者ばかりだったのだが。
聖女と崇められそうな女性は、自分の選択に後悔しないだろうか。
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