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しおりを挟む数カ月後、ヴィオラが女の子を出産したことが公表された。
その子が『リリスティーナ』と名付けられたと聞き、大いに驚いた。
王族では禁忌の名前になっていたのではないかと思ったが、ヴィオラが押し切ったのかもしれない。
ヴィオラにとって、リリスティーナは先祖でもある。
500年が近いということもあり、過去の王族の罪の浄化とリリスティーナの精神の浄化の象徴でもあるのだろう。
聖力の強い子らしい。
ヴィオラと子供たち、ついでに王太子殿下の幸せを願った。
一年後には、ヴィオラが三人目を妊娠したという噂が聞こえてきた。
ヴィオラは王太子殿下を受け入れ、仲良くやっているらしい。
リリスティーナはヴィオラの選択を嬉しく思った。
現在、王都の『リリスティーナ聖堂』では聖女候補が集まっている。
聖女は、聖力を持つ貴族令嬢の中から一人選ばれ、二年の任期と決まっており、一度しか立候補できない。
聖女と呼ばれることに憧れた令嬢が発端となって、二十年ほど前から聖女が選ばれることになった。
今では恒例行事の一つとなっている。
いくつもの課題をこなし、公正に選ばれる。
大した任務があるわけでもないが、憧れている令嬢も多い。箔付けのようなものでもある。
しかも、今回の聖女選定は特別だった。
今回の聖女を第二王子殿下の婚約者にすると発表されたからだ。
第二王子殿下は、ヴィオラの夫の異母弟である。
これまで、あまり表に出てきていない王子殿下には婚約者がいなかった。
多くの記憶にあるのは、王太子殿下の結婚式で見た10歳頃の可愛らしい王子殿下。
現在15歳の王子殿下に対し、上は18歳から下は10歳まで、聖女候補に多くの令嬢が立候補した。
「僕はアレクサンドル。昔、最後の聖女と呼ばれることになった女性と結婚した王族と同じ名前だと知って、僕も聖女と結婚しようと思ったんだ。」
そう胸を張って語ったアレクサンドル王子殿下。
彼の姿を見て、集まった聖女候補たちは絶句した。
アレクサンドルは巨漢といえばまだ聞こえはいいが、つまりは特に横に大きいデブだった。
集まった聖女候補たちは顔が引き攣っていた。
リリスティーナも呆気にとられた。
リリスティーナはヴィオラを乗っ取っていた時にアレクサンドルに何度も会ったが、その度に大きくなるので驚いていたのに。
しかも、リリスティーナがヴィオラから出て、見ないうちに更に大きくなったらしい。
アレクサンドルの母は、国王陛下が酔っ払った際に水を運んだ侍女で、国王陛下がうっかり手を出したらしいが、おそらく侍女から誘ったのではないかと言われている。
国王陛下が避妊薬を飲むように手配したのに妊娠した侍女は子爵令嬢だったので、側妃となった。
当時は可愛い令嬢だったらしいが、今ではアレクサンドル同様に太ってしまい、表に一切出てこない。
アレクサンドルの体質は側妃に似てしまったようだ。
しかし、第二王子殿下であることは間違いない。
金銭的に困るような結婚生活にならないことは保証されるのだ。
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