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しおりを挟むアレクサンドルが帰った後、聖女候補たちはどうやって逃げようかと誰もが必死に頭を悩ませていた。
「おほほ。お若いアレクサンドル殿下に私のような歳上は気の毒ですので辞退させていただきますわ。皆様、どうぞ頑張って下さいませ。おほほほ。」
「私、実は聖女には興味ないのです。親に言われて無理やり……ですので皆様は、聖女になりたくてお集まりなのですから、どうぞどうぞ。」
あなたがお似合いですわ……。
いえ、あなたの方が……。
どうぞどうぞ……。
そんな声ばかり聞こえてきて、リリスティーナは笑えてきた。
昔の聖女候補も、聖女になりたくない令嬢はいたけれど、これは意味合いが違う。
体型は確かにアレだと受け入れ難いかもしれないけれど、アレクサンドルは優しい子である。
イボンヌという名の令嬢がいたので、選ばれれば面白いけれど、性格は似ていてほしくない。
心優しい令嬢が選ばれることを願った。
……でもアレクサンドル、ちょっとは瘦せようね。
そろそろこの世ともお別れになるはず。
聖力は広まり、強い者は治癒師として働いている。
平民にも増え、特別な魔力ではなくなった。
人体実験のような研究も無くなり、リリスティーナの思い通りになった。
これでよかったかどうかはわからない。
正しいことをしたという満足感はない。
余計なことをしていると思ったこともあるが、後にも引けなかったから。
それでも、治癒の力を与えられた者として、義務は果たしたのではないかと思うことにした。
リリスティーナはクレッセルとの思い出の花壇を見ながら、意識が薄れるのを感じていた。
初恋のクレッセル、最愛のクローヴィス。
二人と過ごした記憶のお陰で、500年を乗り越えられたと感謝して……
しかし、500年の術の呪いが固定化されてしまったのか、リリスティーナの精神を浄化させないような力も働いているようにも感じる。
意識が薄れそうなのに、留められる。
それが繰り返されている気がした。
不安がそう感じさせているのだろうか。
リリスティーナの元婚約者が、研究施設に閉じ込めたひと月の間のいつ術をかけたのかは不明なのだ。
そんな時……
『リリスティーナ様。』
クレッセルが呼んでいる気がする。
『セレンティナ。』
クローヴィスが呼んでいる気がする。
その声に導かれるように、見えない手を伸ばした。
すると、幻聴だけでなく、幻覚まである。
手が二本、見えるのだ。
片方は、ほとんど触れ合うことができなかったけれど、聖女のリリスティーナを守ってくれていた優しい手。
もう片方は、いつも温かく触れてくれていた安心する手。
リリスティーナの伸ばした見えない手は、それぞれの手に握られたように感じた。
リリスティーナの精神を留めようとしていた場所から、掬い上げられたのだ。
500年の時が過ぎ、『リリスティーナ聖堂』にリリスティーナはもういない。
大切な二人が迎えに来てくれたお陰で、今度は、幸せな最期だったから。
〈終わり〉
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