ホウセンカ

えむら若奈

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小さなイベリス

4

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『ずっと連絡できなくてごめん。今度の土日、どっちか空いてない?』

 待ち続けて10日。やっと、桔平くんからメッセージが来た。すごく嬉しくて、返信内容を考えていたら、夕ご飯用に茹でていたパスタが吹きこぼれた。

 日曜日なら授業も予定もない。天気も良さそう。お休みの日だから、この前よりも長く一緒にいられるのかな。
 日曜日が空いていると返信してパスタと明太子ソースをあえていたら、電話していいかってメッセージが来た。

「久しぶりになっちゃって、ごめんな」

 電話で聴く桔平くんの声は、少しだけ低くて。耳元で響くから余計に緊張してしまう。

「大丈夫だよ。課題は終わったの?」
「終わった。今回は徹夜せずに済んだわ」

 いつもは徹夜してるのかな。不規則って言ってたもんね。食生活も偏っているみたいだし、体は大丈夫なのか心配になる。
 
「日曜、どこ行こうかっていう相談……ってのは口実で、声が聞きたかったんだよね。元気してた?」
「うん、元気」

 10日ぶりの桔平くんの声は、やっぱり優しくて。忘れられているかもなんて不安になっていた気持ちも、どこかへ行ってしまった。
 
「良かった。で、どこ行こっか。どこでも人は多いと思うんだけどさ」
「そっか、日曜日だもんね」

 話しながらテレビを消そうとした時、上野動物園のパンダのニュースが目に入った。

「あ、パンダ……」
「パンダ?」
「今、テレビでやってて。上野のパンダ」
「あぁ。上野動物園、まだ行ったことない?」
「うん。ちょっと行ってみたいなぁって……」

 今まで一度もパンダを見たことがないから、東京に来たら絶対に行こうって思ってたんだよね。
 でも動物園デートなんて、子供っぽいかな。中学生みたい?桔平くんには似合わないかも。
 
「いいよ、じゃあ動物園にするか。上野は庭みてぇなもんだから、他にもいろいろ案内できるよ」
 
 桔平くんはまったく嫌がる素振りもなく、そう言ってくれた。
 そっか、藝大って上野にあるんだもんね。桔平くんがいつも通っている町に行くというだけで、なんだか嬉しくなる。

 待ち合わせ場所と時間を決めて、電話を切った。本当はもっと話していたかったんだけど、桔平くんは今から夕ご飯を食べに行くんだって。外食ばっかりみたいだけど、コンビニ弁当よりマシなのかな。
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