ホウセンカ

えむら若奈

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母へと贈るエーデルワイス

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 2人きりの2日間はあっという間に終わり、翌朝は旅館をチェックアウトして、本来の目的である愛茉の実家へ。

 お父さんは今日から休みを取っているらしく、わざわざ旅館まで車で迎えに来てくれた。

「それでね、桔平くんが貴賓館でピアノを弾いてくれて。あっ、動画撮ったから後で見せるね」

 車中では、愛茉がずっとひとりで喋っていた。この2日間の観光について事細かに伝えているが、その話のほとんどがオレの言動。

 お父さんは、ひとつひとつに相槌を打ちながら笑顔で聞いている。可愛いひとり娘の口から出るのが彼氏の話ばかりだなんて、普通なら面白くはないだろう。さすがに、器が大きい。

 愛茉の実家は、小樽駅から車で15分弱の閑静な住宅街にあった。もともとはお父さんの両親が住んでいたところで、結婚を機に全面リフォームをしたらしい。広々とした戸建てだが、お父さんがひとりで生活するには寂しいだろうと思った。

「なんか、10年ぶりに帰ってきた気分」

 玄関で、愛茉が感慨深げな表情を見せる。何言ってんだか。まだ1年も経っていないだろ。

「お父さん、荷物は和室に置いてていい?」
「そうだね。2階に持って上がるのは面倒だろう。桔平君も、和室に置いておくといいよ」
「ありがとうございます」

 リビングと続いている8帖の和室に、キャリーバッグを置かせてもらった。愛茉の荷物までオレのバッグに入れているから、やたらと重い。

「お父さん。これ、旅館で買った日本酒です」

 荷物の中から四合瓶を取り出すと、お父さんの顔が明るくなった。日本酒が好きだとは言っていたが、そこまで量を飲む方ではないらしい。酒の飲み方が綺麗なのも、お父さんに好感を持っている理由のひとつだ。
 
「おっ、ありがとう。夜、一緒に飲もうか」
「寒いし、燗をつけて飲みますか」
「いいねぇ。桔平君は、家でも飲むのかな?」
「普段家で飲むのは、寝酒ぐらいですね」
「いつもウイスキーだよね、桔平くんは」

 自分の荷物からお父さんへのお土産を大量に出してきて、愛茉が言った。札幌でもあれこれと買い込んでいたが、地元の人間に地元の土産ばっかり買ってどうするんだか。まぁ、娘から貰うものは何でも嬉しいんだろうけどな。

 土産をひとつひとつ見せながら、また愛茉が喋り出す。お父さんの前では、どうしても子供に戻ってしまうらしい。

 土産物解説がひと通り終わると、お父さんは役所に所用があるとのことで外出した。そしてそのまま、再婚予定の相手を迎えに行くらしい。今日は家で一緒に昼食をとることになっている。

 オレが同席するのもどうかと思ったが、お父さんも愛茉も、オレはもう家族みたいなものだから一緒にいてほしいと言ってくれた。それに、相手にもオレのことは話しているらしい。

 お父さんが出かけた後は、2階にある愛茉の部屋でひと休みすることにした。
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