ホウセンカ

えむら若奈

文字の大きさ
314 / 407
貴方によく似たリンドウを

8

しおりを挟む
「2人が箱根に行った日の夕方、俺と約束してたからさ。流れで事情は全部聞いちゃったんだけど。スミレさんは、桔平の才能に惚れ込んでるだけなわけ?」

 スミレは翔流を真っ直ぐ見つめている。口を出すと余計ややこしくなるかもしれないと思って、オレは何となく押し黙ってしまった。

「もちろん、桔平の才能にも惚れ込んではいるけど」
「一応、こいつの友達としては心配でさ。こう見えて、めちゃくちゃ純粋なヤツだし。しかも超不器用。恋愛偏差値低いんだよね」
「そうね、それは私にも分かる」
「でしょ?だから傷つく姿は見たくないわけ。もしスミレさんが遊びのつもりなら……」
「軽い女と思われているなら、とても心外なんだけど。誰彼構わずセックスする趣味はないから」

 言葉を遮って、スミレは翔流を睨みつけた。それでも翔流は怯んでいない。一体どうなっているんだ、こいつの神経は。
 
「でもこいつ、まだ高1だよ。年上のスミレさんから見たらガキじゃん?」
「人を好きになるのに年齢とか性別とか肩書きなんて関係ないでしょ?それにたった3歳差なのに、上とか下とか線引きしないで」
「女にも性欲はあるわけじゃんか。そんで女の方がセックスした相手に情が移りやすいって言うし」
「だからなに?好きでもないのに体を許して、付き合う気もないのに桔平を振り回しているって言いたいの?」
 
 スミレは明らかに憤慨している様子だった。初対面のガキにこんなことを言われたら、そうなるのも当然だろう。スミレは非常に気が強く、プライドも高かった。
 そして翔流は翔流で、わざとスミレの癇に障るような言い方をしている。将来は弁護士か検察官になりたいらしいが、確かに向いていると思った。

「別にそうは言ってないけどさぁ。気持ち伝える前にヤッちゃってるわけじゃん?それってセフレみたいなものなんじゃないの」
「そんなつもりないけど」
「じゃあ桔平のこと好きなわけ?」
「好きよ」

 スミレがきっぱりと言い放つ。あまりに迷いなく言うものだから、オレは思わず目を丸くしてしまった。
 
「……だってよ、桔平」

 オレに視線を向けて、翔流がニヤリと笑う。ムカつく表情だ。そして満足げな顔で背伸びをすると、腹をさすりながら立ち上がった。

「よし。満腹になったし気が済んだから、俺は帰るね。後は若い2人でごゆっくり~。あ、避妊はしろよ」

 まるで竜巻のように感情を掻き回したあと、翔流はそそくさと去っていった。どうしろってんだよ、この状況。
 スミレは眉間に皺を寄せたまま、俯いている。オレが何か言った方がいいのか。しかし気の利いた言葉など思い浮かばない。
 
「……売り言葉に買い言葉ってやつじゃねぇの」

 重苦しい空気に耐えられなくなってそう言うと、スミレの鋭い視線が突き刺さった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

同居人の一輝くんは、ちょっぴり不器用でちょっぴり危険⁉

朝陽七彩
恋愛
突然。 同居することになった。 幼なじみの一輝くんと。 一輝くんは大人しくて子羊みたいな子。 ……だったはず。 なのに。 「結菜ちゃん、一緒に寝よ」 えっ⁉ 「結菜ちゃん、こっちにおいで」 そんなの恥ずかしいよっ。 「結菜ちゃんのこと、どうしようもなく、 ほしくてほしくてたまらない」 そんなにドキドキさせないでっ‼ 今までの子羊のような一輝くん。 そうではなく。 オオカミになってしまっているっ⁉ 。・.・*.・*・*.・。*・.・*・*.・* 如月結菜(きさらぎ ゆな) 高校三年生 恋愛に鈍感 椎名一輝(しいな いつき) 高校一年生 本当は恋愛に慣れていない 。・.・*.・*・*.・。*・.・*・*.・* オオカミになっている。 そのときの一輝くんは。 「一緒にお風呂に入ったら教えてあげる」 一緒にっ⁉ そんなの恥ずかしいよっ。 恥ずかしくなる。 そんな言葉をサラッと言ったり。 それに。 少しイジワル。 だけど。 一輝くんは。 不器用なところもある。 そして一生懸命。 優しいところもたくさんある。 そんな一輝くんが。 「僕は結菜ちゃんのこと誰にも渡したくない」 「そんなに可愛いと理性が破壊寸前になる」 なんて言うから。 余計に恥ずかしくなるし緊張してしまう。 子羊の部分とオオカミの部分。 それらにはギャップがある。 だから戸惑ってしまう。 それだけではない。 そのギャップが。 ドキドキさせる。 虜にさせる。 それは一輝くんの魅力。 そんな一輝くんの魅力。 それに溺れてしまう。 もう一輝くんの魅力から……? ♡何が起こるかわからない⁉♡

再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛~

松本ユミ
恋愛
夏木美桜(なつきみお)は幼なじみの鳴海哲平(なるみてっぺい)に淡い恋心を抱いていた。 しかし、小学校の卒業式で起こったある出来事により二人はすれ違い、両親の離婚により美桜は引っ越して哲平と疎遠になった。 約十二年後、偶然にも美桜は哲平と再会した。 過去の出来事から二度と会いたくないと思っていた哲平と、美桜は酔った勢いで一夜を共にしてしまう。 美桜が初めてだと知った哲平は『責任をとる、結婚しよう』と言ってきて、好きという気持ちを全面に出して甘やかしてくる。 そんな中、美桜がストーカー被害に遭っていることを知った哲平が一緒に住むことを提案してきて……。 幼なじみとの再会ラブ。 *他サイト様でも公開中ですが、こちらは加筆修正した完全版になります。 性描写も予告なしに入りますので、苦手な人はご注意してください。

イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~

美和優希
恋愛
木下紗和は、務めていた会社を解雇されてから、再就職先が見つからずにいる。 貯蓄も底をつく中、兄の社宅に転がり込んでいたものの、頼りにしていた兄が突然転勤になり住む場所も失ってしまう。 そんな時、大手お菓子メーカーの副社長に救いの手を差しのべられた。 紗和は、副社長の秘書として働けることになったのだ。 そして不安一杯の中、提供された新しい住まいはなんと、副社長の自宅で……!? 突然始まった秘密のルームシェア。 日頃は優しくて紳士的なのに、時々意地悪にからかってくる副社長に気づいたときには惹かれていて──。 初回公開・完結*2017.12.21(他サイト) アルファポリスでの公開日*2020.02.16 *表紙画像は写真AC(かずなり777様)のフリー素材を使わせていただいてます。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜

泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。 ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。 モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた ひよりの上司だった。 彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。 彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……

契約結婚!一発逆転マニュアル♡

伊吹美香
恋愛
『愛妻家になりたい男』と『今の状況から抜け出したい女』が利害一致の契約結婚⁉ 全てを失い現実の中で藻掻く女 緒方 依舞稀(24) ✖ なんとしてでも愛妻家にならねばならない男 桐ケ谷 遥翔(30) 『一発逆転』と『打算』のために 二人の契約結婚生活が始まる……。

恋に異例はつきもので ~会社一の鬼部長は初心でキュートな部下を溺愛したい~

泉南佳那
恋愛
「よっしゃー」が口癖の 元気いっぱい営業部員、辻本花梨27歳  ×  敏腕だけど冷徹と噂されている 俺様部長 木沢彰吾34歳  ある朝、花梨が出社すると  異動の辞令が張り出されていた。  異動先は木沢部長率いる 〝ブランディング戦略部〟    なんでこんな時期に……  あまりの〝異例〟の辞令に  戸惑いを隠せない花梨。  しかも、担当するように言われた会社はなんと、元カレが社長を務める玩具会社だった!  花梨の前途多難な日々が、今始まる…… *** 元気いっぱい、はりきりガール花梨と ツンデレ部長木沢の年の差超パワフル・ラブ・ストーリーです。

処理中です...