ホウセンカ

えむら若奈

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アサギリソウをリースにして

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 ボタンを全部外して、桔平くんが私のポニーテールをほどく。心臓の音が聞こえてしまいそう。
 私をじっと見下ろすと、桔平くんは優しく微笑んだ。
 
「最上級だな」
「え?」
「愛茉と抱き合うことが、オレの幸せの最上級。今、それを再認識したわ」

 言葉を返す前に、また唇を塞がれた。

 桔平くんはいつも、言葉でも行動でも気持ちを伝えてくれる。だけど言葉よりも、態度や仕草から感じる愛情の方が大きい気がした。
 私を見つめる瞳、髪を撫でる手、優しく触れる唇。そのひとつひとつが、空っぽだった心を溢れるくらい満たしてくれる。

 だから私も桔平くんを満たしてあげたい。その大きな器を、いっぱいにしてあげたいよ。
 絶対に、この人を幸せにしたい。2人で幸せになりたい。桔平くんのあたたかさを全身に感じながら、心底そう思った。

「……で、黒島は人間より牛が多いんだよ。人口は200人くらいかな。そんで、牛は3000頭」

 たくさん抱き合った後、お風呂に入りながら、桔平くんが旅のことをいろいろと話してくれた。

 今回は沖縄本島ではなくて、久高島、津堅島、黒島、竹富島、石垣島と、離島をいろいろと回ったみたい。
 北海道で生まれ育った私からすると、沖縄って外国並みに遠いイメージなんだよね。だから桔平くんの話は、とても面白い。
 
「牛が3000頭って……人の15倍もいるの?」
「うん。島には信号機も交番もなくてさ。すげぇ平和で、聞こえるのは牛の鳴き声ばっか。街灯もあんまないし夜は真っ暗なんだけど、やっぱり星がすげぇ綺麗だったよ」
「いいなぁ。ここじゃ全然見えないもんね」
「新婚旅行のプランに入れるか。沖縄の離島めぐり」

 桔平くんが私の頭へ泡を盛って、オブジェのように形をつくっている。いつもやっているけれど、毎回やたらと凝るんだよね。今日のテーマはエッフェル塔らしいです。

「でも、愛茉を連れて行きたいところが多すぎてさ。新婚旅行じゃ回りきれねぇし、毎年少しずつ行くか」
「うん」
「一生かけて、世界一周だな」

 胸がギュッとなった。桔平くんとずっと一緒にいたいって気持ちが、体中から溢れてくる。
 ちょっと涙目になりそうだったから、誤魔化すために少し俯いた。

「こら、頭動かすなって。塔が傾くだろ」
「いいじゃない、傾いても。ピザの斜塔みたいな感じで」
「ピザだと食いたくなるじゃん」
「え、私“ピザ”って言った?」
「言った。運動したから、腹減ってんの?」
「そうだっ!ご飯食べてない!」

 今ごろ気がついたよ。もう20時過ぎてるじゃない。
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