いちばん好きな人…

麻実

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出会い

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ある日、雪子のもとに大学時代の友人の榊 芳江から電話が掛かってきた。
「お願い!雪子。個展会場の受付やって貰えない?」

芳江は大学を出てから、折角決まっていた大手企業の就職を断りカメラマンとなっていた。

「どうしたの?」
「受付する予定の子が都合悪くなって困ってるのよ。雪子、暇でしょ?」
「暇でしょ、は余計だけど 」
と言いつつ翌日から、東京で一人暮らしをしている息子の部屋から、芳江の個展に通うことにした。





受付といっても、狭い銀座の画廊の中に入ってくる人は滅多にいない。
だから入口が見える椅子に殆ど座っている雪子である。

「よっ」
と言って入ってきた中年男性がいた。背は170㎝少しだろうか、細く見えるけれど肩幅の廣いスマートなその男性は、一通り写真をみるとソファに座った。

「鈴木くん、どう落ち着いた?
雪子、鈴木くんはね、海外に単身赴任している間、奥さんに六年も不倫されてようやく離婚したところよ」
「ちょっ、榊さん、いきなりこんな美人を前にして何いってんの‼」
鈴木という男性は慌ててお茶をむせた。
「ごめんごめん。だって、雪子からも非道い話を聞いたところなのよ」

「雪子も好きなことしないと人生勿体無いよ」
とはっぱを掛けられていた雪子は苦笑する。

開き直った鈴木さんが、夕食を誘ってきて銀座の高級居酒屋に案内された。
個室に向かい合って二人座る。

鈴木はメニューを開いて雪子の好みを聞きながら、てきぱきと注文した。
そして、生ビールとグレープフルーツジュースで乾杯する。
「改めまして、鈴木隆道です。僕の親父があの画廊をやってまして」
「そうでしたの。こちらこそ宜しくお願いします」

彼は、雪子に煙がいかないように少し身体を斜めにしながら煙草を吸う。
テーブルの上が汚れればこまめに拭くが、神経質過ぎる印象ではない。
むしろ、自分も綺麗好きな雪子は好感を持った。

雪子はふと、学生時代に付き合っていた皆藤くんのことを思い出した。
彼も長身ですらりと引き締まった身体をしていたし、やっぱり綺麗好きだった。

「私、こういう人が好きだったはずなのに。なんで夫と結婚したのかしら?」

⭐⭐


翌日、画廊に行くと芳江が興味深そうに聞いてきた。
「どうだった?」
「うん。私、なんで夫みたいな人と結婚したのかしら?」
「ヘ? 雪子が皆藤くんと別れて落ち込んでたところに、全然違うタイプの旦那が現れたからよ」
と呆れ顔で言われた。

「雪子は一途だから間違ったと思っても我慢して、引き返せないだろうから心配したよ」

ああ!そうだったかも。

「今、凄く納得してるでしょ。馬鹿な子」

芳江はそういって雪子を抱きしめた。


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