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しおりを挟む四ヶ月ぶりに彼氏のよーちゃんと会えた。
「今日は朝まで一緒にいられると思う」
と寄り添った言葉をくれた彼に、私の心は少しだけ揺れた。
思えば、こういうフレーズはここ三年ほどの付き合いで計二十回以上にものぼっていること、そして、そのうち一回たりとも朝までいられたことがないことを、私は思い出す。
「朝まで一緒にいるつもりはないよ」
「なにか、用事がある?」
と問われて否定のために、首を振った。
「別れよ、よーちゃん」
「……」
目の前の男性、陽亮ことよーちゃんは高校の頃から付き合っている恋人だ。付き合ってからはもう八年くらいになる。期間は長いけれど、就職してからはほとんど会えていないので、実質はそんなに会えていない。
今回も四ヶ月前にご飯をしたきりだ。
その間に何度か会いたいと思ったタイミングが来ていた。会いたい、と言えないほどの多忙な彼なので、もはや相手からの連絡を待つだけだ。
おはようもおやすみも、連絡しない。既読になっても返信があると思えないし、返信があったとしても「どうせ会えないもんな」と思うだけだ。
「何かあった?」
慌てることなく、私の現状を把握しようとするのは彼らしい。
よーちゃんに対して、「この質問は愚問だよ」いう資格が私にあるとは思えない。
けれど、「何か」ありすぎていて、いうべきタイミングには彼がいない。
言えないことが会えていない四か月分以上、たまっていた。会ったとしても、すぐに解散になるのだから。
結果、今すぐに「何か」があるとは言いにくい。何かは私の体の細胞になりつつあるのだ。
でも、別れるつもりの私は全てをぶつける。別れを覚悟している一般女性の言動として、至ってありがちだと思うけれど。
「あんまり会えないのは、仕方ないと思ってるし、泊まりのはずがすぐに行かなきゃいけない仕事が出来ちゃうのは仕方ないと思ってる。今日もきっと、朝まで一緒なのは、七割方無理だって思ってるよ」
「今日は大丈夫だよ。オレが出ていかなきゃいけない仕事はないと思う」
「今日は帰るつもりだから関係ないし、どっちでもいいよ」
「怒ってる?」
「今は怒ってない。ただ、何回もがっかりしているから、怒る段階じゃないかな。詳しく話すのは、もう疲れる」
「これまでなら、何でも話してくれたと思うけど」
「もうさ、その段階はなくなってる。話すにはお互いに時間と心の余裕が必要だよ」
大学時代もいろんな話が出来たから、その関係性が好きで、付き合ってきた関係だ。
社会人になって彼がめきめきと才能を発揮してきて、輝く姿を尊敬しつつも、気にしている方向が違うことにがっかりする。
足を引っ張るつもりもないけれど、人生の舵取りの方向性は違うのだ。
付き合っていくことは「できる」。でも、今以上に好転する気はしないし、ワクワクしない。
結婚を考えるなら子どももセットで考える、という私の感覚からすれば、多忙な相手と結婚するのは、疲弊の予感しかない。結婚生活に折半なんてものはあり得ない、と姉や結婚している友達から聞き及んでいた。
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