損切り女子はスパダリ彼氏と別れたい

KUMANOMORI(くまのもり)

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 家に帰れば、観葉植物が増えていてまるでジャングルのようになっている。
 クワズイモやパキラ、モンステラのような大きめの観葉植物が、幾つも置かれていた。
(困ったなぁ……)

 ソファでゴロゴロと転がっているよーちゃんは、指に観たことのな小鳥をのせている。
「おかえり、サユ」
 ニコニコと微笑むよーちゃんは、一気に若返ったように感じた。
 でも、私の心にはどろっとしたものが湧いてくる。

「サユ、ご飯食べに行こう」
 ソファから立ち上がって、私に抱きついてきたよーちゃんはまるで大型犬のようだ。
 大学生の頃のよーちゃんみたいで可愛いと思ったし、懐かしいと思った。大学生の頃のよーちゃんはもったいないイケメンの名前を冠していたのだ。

「もったいない」とつけるのは、よーちゃんが服装にこだわりもなければ、見た目の無頓着で、さらにはこの上ない面倒くさがりで出席日数ギリギリの最低評価ばかりの成績だったからだ。 
 高校生の頃からのよーちゃんを知っている私は、彼のことをイケメンだと思ったことがない。
 私にとってよーちゃんはよーちゃんでしかなくて、もったいないイケメンだろうが、ハイスペックなビジネスマンだろうが、関係ないのだ。

「よーちゃん、部屋がジャングルみたいになってるよ」
「うん、サユは森の精霊だから」
「え、えっと。う~ん、じゃあ、よーちゃんは森の主?」
「俺は土、全てを育む父」
「へ、へぇ、そうなんだ……」
 会話の種類が一昨日までのよーちゃんとは全く違うのだ。彼の才能は一瞬で何者にでも染まれることだ、と私は思っている。

 ビジネスの世界においては、一流のビジネスマンに染まったので、出世株だったけれども、仕事を辞め家にいる現状においては、一流の・・・無職なのかもしれない。

 と思ったけれど。よーちゃんはさらに一歩先を行っていた。

「サユ、移住しよう」
「えっ?」
「もっと自然がある場所に移住しよう。子どもを育てるなら」
「いやいや、よーちゃん?急にそんな話されても」
「結婚しよう、サユ」

 両手で私の両手を包み込んで、よーちゃんは言う。一昨日、別れ話をした時のよーちゃんとは全く違う表情だ。
 よーちゃんの瞳の中には、光がピカッと輝いているみたいに見える。
 就職先が決まった時に、これでサユに安心してもらえる、と言っていた時のよーちゃんだ。

「できることなら、いつかは結婚はしたいと思ってた。でもね、子どもとか移住とかは、もう少し冷静に検討しないと」
「もう決めた」
 私から離れて、よーちゃんは日本地図を持ってきた。

「ここに行くよ」
 指でさした場所は、離島だ。
「えっ、そんな場所?私も仕事あるしそんなすぐには決められないよ」 
「一緒じゃなければ、意味がない」
「で、でも、よーちゃんが勝手に決めたんだよ」

 仕事を辞めたのも、よーちゃんだ。私はよーちゃんと別れるつもりだったのだから。

「サユと一緒にいたい。俺の優先順はいつもサユだから。サユは自分が言ったことを覚えてないんだと思う。十分な資金が貯まったら、結婚しようって言っていたのに」
 ここまで言われると、恐怖がちゃんとした形で頭の中に見えてきた。

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