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第49話 大切な場所
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朝、私が朝食を作っていると、彼が起きてきた。
「颯真さん、おはよう。」
「雅、おはよう。」
颯真さん、髪はねてるよ。寝癖がついた彼を初めて見た。
いつも彼が先に起きていたから。
今日はなかなか起きられなかったみたいだね。
無理して来たから、疲れたのだろう。
はねた髪を私がなでつける。
彼はされるがままに座っている。
いつもシャンとしている颯真さん。
何だかかわいらしいと、つい笑ってしまった。
すると、反撃とばかり、私の髪をグシャグシャにされた。
やって、やり返して、二人の髪はグシャグシャだ。
お互いの姿を見て、ひどい姿だと笑ってしまう。
彼とじゃれていたからか、トーストが少しだけ焦げてしまった。
「ごめん、焦げちゃった。」と謝る私に、「大丈夫、食べられるから。さぁ食べよう。」と何も問題ないよという感じで、笑顔の彼が言う。
優しいな。
忙しい中、時間を作って会いに来てくれた彼。
今日は何をして過ごそうかと考える。
颯真さんに、私のことをもっと知って欲しいと思った。
彼とともに電車に乗り、駅に降り立つ。
学生時代に友達とよく通った小さな喫茶店で、よく食べていた懐かしいメニューを、昔話をしながら食べる。
その後、バスに乗り、海へ向かう。
特に有名でもないただの海。
私のお気に入りの場所だ。
私は、小さい頃から、この海へよく来ていた。
打ち寄せる波の音。
砂浜に残る波の跡。
青い海、青い空、白い雲。
その時の天気や時間で色が変化していく。
たまに遠くを行き交う小さな船が見える。
砂浜近くにある岩場に座り、ただのんびりとした時を過ごすのが好き。
私の心を癒してくれる大切な場所。
颯真さんは、私にとってのこの場所のような存在になりつつある。
彼と一緒に波打ち際で遊び、話しながら浜辺を散策する。
岩場へ座り、二人で波の音に耳を傾ける。
周りには誰もいない。二人だけ。
彼の手が私の肩に置かれる。
そしてゆっくりと近づいてくる。
その近づくキレイな顔に、ぼんやり見とれていると、唇に彼のぬくもりが触れた。
慌てて私は、目をつぶる。
本当に穏やかな時間。
こんな時間がずっと続くといいな。
私は、今とても幸せだ。
今は青空。
夕陽に染まる茜色の空も好き。
次回は、彼と夕陽を見に訪れたい。
帰りの飛行機の時間が迫る。
もう少し一緒にいたかったが、残念ながら時間切れのようだ。
また、二人で空港へと移動する。
彼と繋いだ手をまだ離したくない。
彼の手を握る私の手に、ギュッと力が入る。
「雅、もう帰らないと。また電話する。」
彼は困ったように笑うと、私の手を離して、搭乗口へと消えていった。
「颯真さん、おはよう。」
「雅、おはよう。」
颯真さん、髪はねてるよ。寝癖がついた彼を初めて見た。
いつも彼が先に起きていたから。
今日はなかなか起きられなかったみたいだね。
無理して来たから、疲れたのだろう。
はねた髪を私がなでつける。
彼はされるがままに座っている。
いつもシャンとしている颯真さん。
何だかかわいらしいと、つい笑ってしまった。
すると、反撃とばかり、私の髪をグシャグシャにされた。
やって、やり返して、二人の髪はグシャグシャだ。
お互いの姿を見て、ひどい姿だと笑ってしまう。
彼とじゃれていたからか、トーストが少しだけ焦げてしまった。
「ごめん、焦げちゃった。」と謝る私に、「大丈夫、食べられるから。さぁ食べよう。」と何も問題ないよという感じで、笑顔の彼が言う。
優しいな。
忙しい中、時間を作って会いに来てくれた彼。
今日は何をして過ごそうかと考える。
颯真さんに、私のことをもっと知って欲しいと思った。
彼とともに電車に乗り、駅に降り立つ。
学生時代に友達とよく通った小さな喫茶店で、よく食べていた懐かしいメニューを、昔話をしながら食べる。
その後、バスに乗り、海へ向かう。
特に有名でもないただの海。
私のお気に入りの場所だ。
私は、小さい頃から、この海へよく来ていた。
打ち寄せる波の音。
砂浜に残る波の跡。
青い海、青い空、白い雲。
その時の天気や時間で色が変化していく。
たまに遠くを行き交う小さな船が見える。
砂浜近くにある岩場に座り、ただのんびりとした時を過ごすのが好き。
私の心を癒してくれる大切な場所。
颯真さんは、私にとってのこの場所のような存在になりつつある。
彼と一緒に波打ち際で遊び、話しながら浜辺を散策する。
岩場へ座り、二人で波の音に耳を傾ける。
周りには誰もいない。二人だけ。
彼の手が私の肩に置かれる。
そしてゆっくりと近づいてくる。
その近づくキレイな顔に、ぼんやり見とれていると、唇に彼のぬくもりが触れた。
慌てて私は、目をつぶる。
本当に穏やかな時間。
こんな時間がずっと続くといいな。
私は、今とても幸せだ。
今は青空。
夕陽に染まる茜色の空も好き。
次回は、彼と夕陽を見に訪れたい。
帰りの飛行機の時間が迫る。
もう少し一緒にいたかったが、残念ながら時間切れのようだ。
また、二人で空港へと移動する。
彼と繋いだ手をまだ離したくない。
彼の手を握る私の手に、ギュッと力が入る。
「雅、もう帰らないと。また電話する。」
彼は困ったように笑うと、私の手を離して、搭乗口へと消えていった。
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