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第4章 鏡の真実
魂の傷跡
しおりを挟む2009年当時の私が、池川先生宛てに送ったメールを転写。
>画家は生涯で、おそらく14人の子供をもうけていましたが、そのうち3人の子供を亡くしています。
私は、その中の一人です。
私が見たビロードの服の夢と同じ部屋『絵画芸術』を完成した時期の翌年に亡くなった子供だと思います。
その子供の存在が、とても気になっていました。
驚くべき事にその子供は、1667年7月10日に死んでいます。
私は1967年9月5日生まれです。
私は、その子供の、丁度300年後に、この世に生を受けたのでした。
>病にかかり、生死をさまよい、少女の私は死んでしまいました。
画家である父親は、私の死を悼み、酷く悲しみました。
なんと父親は、傷心のあまり、自分が描いた(私の死の)10年前の最高傑作と思われる『頬杖をつく女』の奥の鏡を塗りつぶしました。
精密な描写で描かれてあった、その部分を黒っぽい色に塗り潰し、絵を台無しにしてしまったのです。
>父親にしてみれば、一人の人間として、自分の名声を得るよりも娘のほうが大事だったのでしょう。愛娘を失ってしまう現実に、どうする事もできなかったのだと思います。
>私は父親が絵を変えてしまった事が、辛くてたまりませんでした。尊敬する父親の絵です。自分が死ぬことより、愛する父親の絵を…私が、私のせいで傷つけてしまった事に深い悲しみを背負うことになります。
私のせい、私のせいで、お父さん、ごめんなさい。
私が死んでしまうせいで、絵を傷つけてしまった。
なんという愚かで罪深い、自分なのでしょう。
私は絵が好きで、父親と同じように、父親の絵も大切に思っていました。
それなのに…私は、なんて事をしてしまったんだろう。
私は、自分が嫌になりました。
世界で一番、自分が嫌いになりました。
そして、300年経っても、悲しみは癒える事はなく、「お父さんごめんなさい。お父さんごめんなさい。」と泣き続けていたのです。
私は、ついに今まで閉じていた
パンドラの箱を、開いてしまいました。
魂の傷跡を
知ってしまいました。
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