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途中
Dear
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聖木から出てきた子供をレイヤが抱き上げた時、胸が苦しくなった。
私の知らないレイヤの前世でレイヤは私ではない誰かの子を生み育てたかと思うと胸が痛みで張り裂けそうになる。
レイヤの腕に抱かれている子供を抱いた時、頭の中に途切れ途切れの物語が浮かび上がった。
その物語の中の私は騎士団長で王女に非情な決断をさせる。
泣きながら首を横にふる王女に私は心を鬼にして告げる。
『国を守るための犠牲』だと……
場面がかわる。
王女は騎士団に告げる。
正義の名のもとに町中の人を殺せと…
悲鳴と怒号そして赤く染まる地面…
全てを終えて王女のもとへ急いで向かう…
でもそこで見たのは愛する王女の変わり果てた姿だった。
子供を抱く手が震える。
何故、騎士団長が王女に町中の人を殺すよう進言したのかはわからない。
でも確かなことがある。騎士団長の言葉が王女を追いつめ、王女を死に追いやったのだ。
私が愛する人を死に追いやったのだ。
「パパ~」
小さな手が私の頬をペチペチとたたく。
「パパ~」
場面がかわる。
「一緒に逃げよう。」
彼女の手をとり懸命に訴える。
「駄目よ。そんなことをしたら、貴方の家族も私の家族も殺されてしまうわ…」
泣きじゃくる彼女の涙をぬぐうことしか出来ない自分に嫌気がさす。
「私が聖女なんかになってしまったから…聖女なんかに…」
場面がかわる。
「王妃様の血が万能薬として売られているらしいぞ。」
恐ろしい噂が町中に流れ始める。
それを裏づけるように日に日にやつれ顔色が悪くなる王妃に初めのうちは同情の声が集まった。
でも人は他人の痛みに鈍感だ。
時が経つにつれ、王妃のことを気にかける者などいなくなる。
かつて婚約までしていた私ですら、新しく婚約者をむかえると、彼女のことを思い出すことがなくなった。
彼女のことを思い出したのは彼女の訃報を聞いた時だった。
形ばかりの葬式には見送られるはずの彼女は居なかった。
空っぽの棺には指輪が入っているだけだった。
葬儀が終わった数日後、彼女の兄が一枚の手紙を持ってきてくれた。
そこには私への想いとあの時逃げなかった後悔が綴られていた。
そして最後にこう書かれていた。
『孫娘を守って欲しい』と…
「パパ~」
子供の声で現実へと引き戻される。
「ディア、顔色が悪いけど大丈夫?」
レイヤが私の顔を覗きこむ。
「あぁ…こんな小さな子を抱くなんて初めてだから緊張しちゃって…」
私の言葉にレイヤが笑う。
「こうして見るとどことなくディアに似ている気がするんだけど…
あっ、もしかしたらディアの子供とか?」
レイヤが私をからかう。
腕の中の子供をまじまじと見つめる。
「私よりもレイヤに似ているよ。
ほら、眉毛の上良く見るとレイヤと同じ小さなホクロがあるし……それに笑った時のエクボも良く似ている。」
レイヤに似た子供…
そう考えたら子供がとても可愛く感じる。
「パパ~」
子供の額に自分の額をスリスリとしながら
「なんだい?ディアー(親愛)。パパに何かようかな?」
そう笑っていた。
私の知らないレイヤの前世でレイヤは私ではない誰かの子を生み育てたかと思うと胸が痛みで張り裂けそうになる。
レイヤの腕に抱かれている子供を抱いた時、頭の中に途切れ途切れの物語が浮かび上がった。
その物語の中の私は騎士団長で王女に非情な決断をさせる。
泣きながら首を横にふる王女に私は心を鬼にして告げる。
『国を守るための犠牲』だと……
場面がかわる。
王女は騎士団に告げる。
正義の名のもとに町中の人を殺せと…
悲鳴と怒号そして赤く染まる地面…
全てを終えて王女のもとへ急いで向かう…
でもそこで見たのは愛する王女の変わり果てた姿だった。
子供を抱く手が震える。
何故、騎士団長が王女に町中の人を殺すよう進言したのかはわからない。
でも確かなことがある。騎士団長の言葉が王女を追いつめ、王女を死に追いやったのだ。
私が愛する人を死に追いやったのだ。
「パパ~」
小さな手が私の頬をペチペチとたたく。
「パパ~」
場面がかわる。
「一緒に逃げよう。」
彼女の手をとり懸命に訴える。
「駄目よ。そんなことをしたら、貴方の家族も私の家族も殺されてしまうわ…」
泣きじゃくる彼女の涙をぬぐうことしか出来ない自分に嫌気がさす。
「私が聖女なんかになってしまったから…聖女なんかに…」
場面がかわる。
「王妃様の血が万能薬として売られているらしいぞ。」
恐ろしい噂が町中に流れ始める。
それを裏づけるように日に日にやつれ顔色が悪くなる王妃に初めのうちは同情の声が集まった。
でも人は他人の痛みに鈍感だ。
時が経つにつれ、王妃のことを気にかける者などいなくなる。
かつて婚約までしていた私ですら、新しく婚約者をむかえると、彼女のことを思い出すことがなくなった。
彼女のことを思い出したのは彼女の訃報を聞いた時だった。
形ばかりの葬式には見送られるはずの彼女は居なかった。
空っぽの棺には指輪が入っているだけだった。
葬儀が終わった数日後、彼女の兄が一枚の手紙を持ってきてくれた。
そこには私への想いとあの時逃げなかった後悔が綴られていた。
そして最後にこう書かれていた。
『孫娘を守って欲しい』と…
「パパ~」
子供の声で現実へと引き戻される。
「ディア、顔色が悪いけど大丈夫?」
レイヤが私の顔を覗きこむ。
「あぁ…こんな小さな子を抱くなんて初めてだから緊張しちゃって…」
私の言葉にレイヤが笑う。
「こうして見るとどことなくディアに似ている気がするんだけど…
あっ、もしかしたらディアの子供とか?」
レイヤが私をからかう。
腕の中の子供をまじまじと見つめる。
「私よりもレイヤに似ているよ。
ほら、眉毛の上良く見るとレイヤと同じ小さなホクロがあるし……それに笑った時のエクボも良く似ている。」
レイヤに似た子供…
そう考えたら子供がとても可愛く感じる。
「パパ~」
子供の額に自分の額をスリスリとしながら
「なんだい?ディアー(親愛)。パパに何かようかな?」
そう笑っていた。
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