108 / 144
生奪
生奪~前編~
しおりを挟む
最近、殿下の様子がおかしい。
もともと自分の感情を表に出すタイプではなかった。
それでも五歳の頃から側近見習い兼遊び相手として殿下の近くに居た。
幼い頃はただ殿下の友達になりたかった。
年月が流れ、気がつけば幼かった殿下が美しい少年になった頃、殿下に対する想いが友情ではなく恋だと知った。
わかっている。
この想いは間違えていると…
殿下には婚約者がいて私とは身分も違う。
でも想うくらいなら…
好きでいるくらいなら…
殿下への想いをのみ込みながら殿下の一番の腹心として側に居た。
「ホーリー、一つお願いがあるのだけれど…」
そう言って殿下はネックチェーンを外すとペアーになっているリングの小さな方を私に渡す。
「ここ指輪の持ち主を探して欲しいんだ。
多分、西の国境近くの町にいると思うんだが…」
指輪から独特のマナと聖力が感じることが出来る。
どこか殿下と似たマナと聖力…
「殿下…これはいったい……」
殿下は深々と頭を下げる。
「お願いだ。
今は何も言わずに探して欲しいんだ……
頼む。」
殿下の温もりが、まだ残った指輪を軽く握りしめる。
「承知しました。」
指輪の主を見つけるのは簡単だった。
殿下の言っていた通り、西の国境近くの町で才色兼備で既に有名だったからだ。
傭兵の父親と二人暮らしのその少女は殿下と似たマナと聖力を持っていた。
何より目をひいたのは彼女の右手の薬指にはめられたリボーン王国の王印。
ここ十数年間続いた後継者争いの内戦がようやく第一王子の勝利で終わったと聞いた。
「まさか…そんなわけないわよね。」
私はあえて指輪の話を殿下にはしなかった。
あの日、殿下は黙って少女を見つめていた。
殿下の少女を見つめる瞳は優しくて甘くて切なくて…まるで宝物を慈しむようで見ているこちらまで切なく狂おしくなる。
殿下だけを見つめていたからわかる。
殿下は間違いなく少女を愛している。
あぁ…少女のためだったんだ。
婚約者の王女の元に使いとして頻繁に公爵家の次男を派遣したのは…
気がつけば王女は一度も会いにこない殿下より、年に数回も会いに来てくれる方を好きになる。
婚約解消が決まった時、殿下は言った。
『これで一つ解決した。』と…
殿下は少女を娶るつもりなのか…
胸が苦しくなる。
あの指輪がもし本物なら…二人は結ばれてしまう。
でも…私が黙っていれば……
結ばれることはない。
大粒の涙をこぼしながら少女を見つめる殿下の背中をたたく。
いつの日にか殿下に気持ちが届くと信じて…
もともと自分の感情を表に出すタイプではなかった。
それでも五歳の頃から側近見習い兼遊び相手として殿下の近くに居た。
幼い頃はただ殿下の友達になりたかった。
年月が流れ、気がつけば幼かった殿下が美しい少年になった頃、殿下に対する想いが友情ではなく恋だと知った。
わかっている。
この想いは間違えていると…
殿下には婚約者がいて私とは身分も違う。
でも想うくらいなら…
好きでいるくらいなら…
殿下への想いをのみ込みながら殿下の一番の腹心として側に居た。
「ホーリー、一つお願いがあるのだけれど…」
そう言って殿下はネックチェーンを外すとペアーになっているリングの小さな方を私に渡す。
「ここ指輪の持ち主を探して欲しいんだ。
多分、西の国境近くの町にいると思うんだが…」
指輪から独特のマナと聖力が感じることが出来る。
どこか殿下と似たマナと聖力…
「殿下…これはいったい……」
殿下は深々と頭を下げる。
「お願いだ。
今は何も言わずに探して欲しいんだ……
頼む。」
殿下の温もりが、まだ残った指輪を軽く握りしめる。
「承知しました。」
指輪の主を見つけるのは簡単だった。
殿下の言っていた通り、西の国境近くの町で才色兼備で既に有名だったからだ。
傭兵の父親と二人暮らしのその少女は殿下と似たマナと聖力を持っていた。
何より目をひいたのは彼女の右手の薬指にはめられたリボーン王国の王印。
ここ十数年間続いた後継者争いの内戦がようやく第一王子の勝利で終わったと聞いた。
「まさか…そんなわけないわよね。」
私はあえて指輪の話を殿下にはしなかった。
あの日、殿下は黙って少女を見つめていた。
殿下の少女を見つめる瞳は優しくて甘くて切なくて…まるで宝物を慈しむようで見ているこちらまで切なく狂おしくなる。
殿下だけを見つめていたからわかる。
殿下は間違いなく少女を愛している。
あぁ…少女のためだったんだ。
婚約者の王女の元に使いとして頻繁に公爵家の次男を派遣したのは…
気がつけば王女は一度も会いにこない殿下より、年に数回も会いに来てくれる方を好きになる。
婚約解消が決まった時、殿下は言った。
『これで一つ解決した。』と…
殿下は少女を娶るつもりなのか…
胸が苦しくなる。
あの指輪がもし本物なら…二人は結ばれてしまう。
でも…私が黙っていれば……
結ばれることはない。
大粒の涙をこぼしながら少女を見つめる殿下の背中をたたく。
いつの日にか殿下に気持ちが届くと信じて…
10
あなたにおすすめの小説
五周目の王女様
輝
恋愛
「私、今度はどうやって殺されるの?」
バザロス国へ嫁ぐことになった王女ジゼルは、数度の死に戻りの記憶を持っていた。 1度目は毒殺、2度目は即死、3度目は逃亡先での裏切り。どう足掻いても結婚初夜を越えられず死に戻る運命に私の心はクタクタだった。
今世の夫も「冷酷皇帝」と恐れられる皇帝レオポルド。
実は彼もまた孤独に戦い、ループする人生から脱出を図ろうする一人。
夫婦がようやく絡まりだす4度目の死に戻り。
どうやら今世は他に女がいる皇帝は全く私に見向きもしない……と思っていたら、誰にも見つからずに私に会いに来るんですが?
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
私たちの離婚幸福論
桔梗
恋愛
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
転生してもオタクはなおりません。
しゃもん
恋愛
活字中毒者である山田花子は不幸なことに前世とは違いあまり裕福ではない母子家庭の子供に生まれた。お陰で前世とは違い本は彼女の家庭では贅沢品でありとてもホイホイと買えるようなものではなかった。とは言え、読みたいものは読みたいのだ。なんとか前世の知識を魔法に使って少ないお金を浮かしては本を買っていたがそれでも限界があった。溢れるほどの本に囲まれたい。そんな願望を抱いている時に、信じられないことに彼女の母が死んだと知らせが入り、いきなり自分の前に大金持ちの異母兄と実父が現れた。これ幸いに彼等に本が溢れていそうな学校に入れてもらうことになったのだがそこからが大変だった。モブな花子が自分の願望を叶えて、無事幸せを握り締めるまでの物語です。
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる