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第一章
第二十一話 最強のカンストプレイヤー
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キュウが怪我はないと申告して来たとしても、これを鵜呑みにしてはいけない。従者のステータス画面でHPが減っていないことは確認しているので、身体的な怪我ないのは本当でも心の怪我に関しては分からない。
「てめぇ、何者だ?」
両手槍を構えた男が何かを言っていたが、無視してキュウの頭から爪先までを観察する。乱れているが服も脱がされていないし、目立った傷もない。しかし、目が赤く涙の痕がある。
「変なことされてないか?」
「変なこと、ですか?」
「蝋燭を垂らされたり、鞭を打たれたり」
「………さ、されてません」
エロいことをされなかったか聞こうとしたのに、何故か具体的なプレイ内容になってしまった。キュウが引いている。フォルティシモがSM好きなどと勘違いされたら困るので、訂正しておいたほうがいいだろう。しかし本音でメイドさんプレイが好きだなんて言ったら、キュウにどん引きされるのは確実だ。否、逆に考えて、軽く伝えておいて後々にキュウにメイド服を着て貰うのは有りかも知れない。
「私は大丈夫です。でも、ラナリアさんが」
キュウの視線の方向を見ると、下着姿の美少女がフォルティシモを見つめていた。名前も顔も知らない少女であってもキュウの友達なのだろう。キュウの身代わりをしてくれたのかも知れない。だとしたら、この子には感謝してもし足りない。しかもエロい。
フォルティシモはインベントリから上着を取り出す。作成に多くのレアドロップ品が必要なL級アイテムであっても、キュウを助けてくれた友人で美少女にならあげても惜しくない。可能な限り下着姿の胸や素足に目が行かないようにして、少女に上着を掛ける。
「よく頑張った。そして、キュウを助けてくれたこと、礼を言う。あとは俺に任せておけ」
固い口調なのは、気を緩めると下心が飛び出しそうだったからだ。相手が美少女だからと言って、キュウを助けに来たはずなのにキュウの前で他の女の子に見とれるのは格好悪すぎる。
「あ、あなたは?」
「俺はフォルティシモという。キュウを従者にしてるのは俺だ」
少女は驚いた顔をしていたが、キュウを見て、顔を横に振った。
「フォルティシモさん、キュウさんを連れて逃げてください。あのヴォーダンという男のレベルは四二〇〇、個人の力でどうにかなる相手ではありません!」
「レベルは聞いた」
カイルが事前にレベルを教えてくれていたので、フォルティシモは相手の強さが最初からある程度は分かっている。キュウが不安そうな顔でやってくる。
「ご主人様、あの人は、カンストを超えたって言っていました」
キュウの言葉に物凄い勢いで振り向く。
「キュウ、確かか?」
「はい………」
切望したカンストを超える情報。フォルティシモはそれに失望した。しかし、キュウの不安そうな顔を前にして、怒りよりも安心させる言葉を言うべきだった。
「安心しろ。俺が四二〇〇程度の奴に負けると思ったか?」
キュウは、フォルティシモが二番目に好きな驚いた顔をして。
「いえ、思っておりません。ご主人様、お願いいたします」
前よりも少し優雅な所作で頭を下げた。
「舐めてんじゃねぇぞ、こらぁ!?」
両手槍の男が叫んだ。フォルティシモはゆっくり歩いて男の前へ出る。
「分析」
「アナライズ!」
互いに【解析】スキルを打ち込んだ。瞬時に情報ウィンドウを確認。
「「雑魚か」」
意図せずに感想が重なった。
「てめぇ、レベル五〇〇で俺に逆らおうってのか? 憐れすぎて涙が出るぜ」
「【偽装】も【隠蔽】もなし、レベル四二五八、未覚醒、ディアルクラスもなし、装備もゴミ、死ねよ、お前」
キュウを怖がらせた、キュウの友人を下着姿にした、カイルの友人を傷付けた、王女も奴隷にしたらしい、フォルティシモの邪魔をした、フォルティシモの期待を裏切った、フォルティシモに生意気を言った、フォルティシモの前に雑魚が立ち塞がった、フォルティシモの力を疑った、フォルティシモを知らなかった、フォルティシモの―――キュウを泣かせた。
フォルティシモの【偽装】によって偽ったレベルを見て、両手槍の男は構えを解いた。
「そのショートカット、お前、俺と同じか? ははっ、なら、持ってるアイテム全部置いていけば、命だけは助けてやってもいいぜ」
「ああ、お前と同じファーアースオンラインのプレイヤーだ」
「だったら分かるだろ? 俺のレベルはファーアースオンラインの頃を超えた! てめぇに勝ち目はねぇ。俺の部下になるなら、女くらいは融通してやってもいいけどな」
「クソ雑魚が。俺の希望を奪いやがって、その上にキュウに手を出す? こんだけイラついたのは、生まれて初めてだ」
「てめぇ、何を言ってやがる?」
「もう口を開くな。憐れすぎだ」
「不快な野郎だな、お前」
両手槍の男は顔を歪ませると、持っていた槍を片手で持ち上げ、槍投げのようなフォームを取った。
「神の槍を受けろ、グングニル!」
両手槍の男が手に持った槍を投擲した。【グングニル】、投擲後に相手に当たるまで飛び続ける追尾効果と、相手に当たった後に戻ってくる帰還効果に、効果スロットを占有されたL級でありながら史上希に見るゴミ武装。ただ、その名前の知名度から鍛える者も多かった。一言で言えば、趣味装備。
「ご主人様っ!!」
「フォルティシモさん!!」
キュウとキュウの友人の悲鳴が聞こえた。しかし、続く声は聞こえない。投擲された【グングニル】はフォルティシモの身体を貫くことなく、停止した。フォルティシモは【グングニル】を掴む。直線にしか向かってこない武器は、武器奪取や武器破壊の格好の餌食だ。
奪取した場合、一定距離を離れれば武器は元の持ち主のインベントリに戻るのがファーアースオンラインの仕様だった。そんな生温いことはしない。フォルティシモは手に力を入れ、握力だけで【グングニル】の柄を握りつぶした。
【グングニル】の耐久は瞬時にゼロになり、紫色の光に包まれて消滅する。こんなことをしなくてもレベル四二〇〇程度のプレイヤーが放った武器など、フォルティシモのHPを一すら削れない。それでもフォルティシモは無意味とも思える力の誇示をした。
両手槍の男は、後ずさりをしていた。それは【グングニル】を消滅させたからではない。【隠蔽】と【偽装】を解除し、フォルティシモの本当のレベルを晒したからだ。
「れ、レベル、九九九九、ステータスが一億………?」
両手槍の男の情報ウィンドウには表示されているはずだ。
BLv:9999+++
CLv:9999
DLv:9999
TLv:9999
HP :999,999,999
MP :999,999,999
SP :999,999,999
STR:99,999,999
DEX:99,999,999
VIT:99,999,999
INT:99,999,999
AGI:99,999,999
MAG:99,999,999
最強のステータスが。
「れ、レベル、九九九九………?」
男とまったく同じ言葉を放ったのはキュウだった。キュウにはレベルを伝えたつもりだったが、正確に伝わっていなかったようだ。驚かせてしまったので、後でフォローしておこう。
「う、嘘、だろ? なんかの、間違い、だよ、な?」
男の瞳は驚愕に開かれ、舌が上手く動かないのか言葉は途切れ途切れになっていた。
このステータスは装備や従者の効果が反映されていない素のステータスで、これ以上何をやっても上げることができない限界値、カウンターストップ。略して、カンストだ。
一歩、男へ近づく。
男は、一歩引いた。
「てめぇは、ベースレベルをカンストさせてからこの世界へ来た。そしたら経験値が入った。だからモンスターを倒してレベルを上げた」
フォルティシモは失望した理由を口にする。
「俺は経験値が入らなかったんだよ。つまり、俺は、この世界でもレベルカンストで、もう強くなれない」
命の危険があると理解していても諦めなかったのは、全ての制限が取り払われると言われたからで、だからこそ色々調べながら慎重に行動してきた。それが無駄だと証明されることのなんと不快なことか。
「ま、待て、待ってくれ、は、話し合おう!」
「いや、ははっ、それだけなら恨むのは運営だ。そりゃいつものことだ。そうだよな。俺がてめぇを殺したいのは、そうじゃない」
男の声を無視して、フォルティシモは自分の言葉の意味を知る。
「俺はNPCじゃない! 俺を殺したら殺人だぞ!?」
男はこの世界に生きる者たちをNPCだと思いゲームの延長だと考えているようだ。フォルティシモは彼らを人間だと思い、新しい人生だと考えている。だからこれまで脅しで「殺す」だなんだと口にしても実行には移さなかった。
「お前を殺したら殺人って、そんなのは当たり前だろ?」
「だ、だったらっ!」
「当時カンストしてて、俺の名前を知らないってことは、お前もソロか?」
「あ、ああ、そうだ。お、お前もソロなら、パーティを組もうじゃないか!」
「確かに仲間はいいな」
まだ一方的なことが多いけれど、食事を何にようか話し合ったり、部屋を散らかすと悪いなと考えるようになったり、洗濯物をまとめてみたり、買い物では彼女が喜びそうな服やアクセサリに目が行くようになったり、孤独を考えることがなくなり、朝起きてゲームにログインではなくキュウの顔を確認することが嬉しくなった。
リアルでもゲームでも一人だったけれど、誰かと一緒であることを久々に思い出した。近衛翔は最強厨で独占欲が強くて承認欲求の塊だからこそ、それを満たしてくれる誰かを奪われそうになったことに、自分でもどうしようもないほどの衝動が沸いて来る。
「俺のキュウを泣かせた時点で、俺はお前を許せないわ」
自分の親でも子供でも恋人でも、大切な者を奪おうとした者を許せるか否か。
フォルティシモは絶対に許せない。それだけだ。
「究極・乃剣」
フォルティシモがその手の黒剣を掲げると、黒色の光が放たれる。
光は次第に大きくなり、その光は天を衝き雲を割く。巨大な光の黒剣。すべてをカンストさせた魔術スキルを収束させて、剣術スキルに載せて放つ、フォルティシモの最強攻撃スキルの一つ。本来、消費MPが大きいだけで事前動作もキャストもない、最強攻撃スキルに相応しいものだが、キュウが見ているので格好付けることにした。
天空ごと男を両断する。男は悲鳴をあげて、逃げようとしたが意味はない。フォルティシモの黒色の斬撃は容赦なく男に襲いかかり、その身体を両断ではなく消滅させた。
> 【魔王神】のレベルがアップしました。
フォルティシモが情報ウィンドウに流れるその文字に気付くのは、宿屋に帰って寝る時である。
「てめぇ、何者だ?」
両手槍を構えた男が何かを言っていたが、無視してキュウの頭から爪先までを観察する。乱れているが服も脱がされていないし、目立った傷もない。しかし、目が赤く涙の痕がある。
「変なことされてないか?」
「変なこと、ですか?」
「蝋燭を垂らされたり、鞭を打たれたり」
「………さ、されてません」
エロいことをされなかったか聞こうとしたのに、何故か具体的なプレイ内容になってしまった。キュウが引いている。フォルティシモがSM好きなどと勘違いされたら困るので、訂正しておいたほうがいいだろう。しかし本音でメイドさんプレイが好きだなんて言ったら、キュウにどん引きされるのは確実だ。否、逆に考えて、軽く伝えておいて後々にキュウにメイド服を着て貰うのは有りかも知れない。
「私は大丈夫です。でも、ラナリアさんが」
キュウの視線の方向を見ると、下着姿の美少女がフォルティシモを見つめていた。名前も顔も知らない少女であってもキュウの友達なのだろう。キュウの身代わりをしてくれたのかも知れない。だとしたら、この子には感謝してもし足りない。しかもエロい。
フォルティシモはインベントリから上着を取り出す。作成に多くのレアドロップ品が必要なL級アイテムであっても、キュウを助けてくれた友人で美少女にならあげても惜しくない。可能な限り下着姿の胸や素足に目が行かないようにして、少女に上着を掛ける。
「よく頑張った。そして、キュウを助けてくれたこと、礼を言う。あとは俺に任せておけ」
固い口調なのは、気を緩めると下心が飛び出しそうだったからだ。相手が美少女だからと言って、キュウを助けに来たはずなのにキュウの前で他の女の子に見とれるのは格好悪すぎる。
「あ、あなたは?」
「俺はフォルティシモという。キュウを従者にしてるのは俺だ」
少女は驚いた顔をしていたが、キュウを見て、顔を横に振った。
「フォルティシモさん、キュウさんを連れて逃げてください。あのヴォーダンという男のレベルは四二〇〇、個人の力でどうにかなる相手ではありません!」
「レベルは聞いた」
カイルが事前にレベルを教えてくれていたので、フォルティシモは相手の強さが最初からある程度は分かっている。キュウが不安そうな顔でやってくる。
「ご主人様、あの人は、カンストを超えたって言っていました」
キュウの言葉に物凄い勢いで振り向く。
「キュウ、確かか?」
「はい………」
切望したカンストを超える情報。フォルティシモはそれに失望した。しかし、キュウの不安そうな顔を前にして、怒りよりも安心させる言葉を言うべきだった。
「安心しろ。俺が四二〇〇程度の奴に負けると思ったか?」
キュウは、フォルティシモが二番目に好きな驚いた顔をして。
「いえ、思っておりません。ご主人様、お願いいたします」
前よりも少し優雅な所作で頭を下げた。
「舐めてんじゃねぇぞ、こらぁ!?」
両手槍の男が叫んだ。フォルティシモはゆっくり歩いて男の前へ出る。
「分析」
「アナライズ!」
互いに【解析】スキルを打ち込んだ。瞬時に情報ウィンドウを確認。
「「雑魚か」」
意図せずに感想が重なった。
「てめぇ、レベル五〇〇で俺に逆らおうってのか? 憐れすぎて涙が出るぜ」
「【偽装】も【隠蔽】もなし、レベル四二五八、未覚醒、ディアルクラスもなし、装備もゴミ、死ねよ、お前」
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フォルティシモの【偽装】によって偽ったレベルを見て、両手槍の男は構えを解いた。
「そのショートカット、お前、俺と同じか? ははっ、なら、持ってるアイテム全部置いていけば、命だけは助けてやってもいいぜ」
「ああ、お前と同じファーアースオンラインのプレイヤーだ」
「だったら分かるだろ? 俺のレベルはファーアースオンラインの頃を超えた! てめぇに勝ち目はねぇ。俺の部下になるなら、女くらいは融通してやってもいいけどな」
「クソ雑魚が。俺の希望を奪いやがって、その上にキュウに手を出す? こんだけイラついたのは、生まれて初めてだ」
「てめぇ、何を言ってやがる?」
「もう口を開くな。憐れすぎだ」
「不快な野郎だな、お前」
両手槍の男は顔を歪ませると、持っていた槍を片手で持ち上げ、槍投げのようなフォームを取った。
「神の槍を受けろ、グングニル!」
両手槍の男が手に持った槍を投擲した。【グングニル】、投擲後に相手に当たるまで飛び続ける追尾効果と、相手に当たった後に戻ってくる帰還効果に、効果スロットを占有されたL級でありながら史上希に見るゴミ武装。ただ、その名前の知名度から鍛える者も多かった。一言で言えば、趣味装備。
「ご主人様っ!!」
「フォルティシモさん!!」
キュウとキュウの友人の悲鳴が聞こえた。しかし、続く声は聞こえない。投擲された【グングニル】はフォルティシモの身体を貫くことなく、停止した。フォルティシモは【グングニル】を掴む。直線にしか向かってこない武器は、武器奪取や武器破壊の格好の餌食だ。
奪取した場合、一定距離を離れれば武器は元の持ち主のインベントリに戻るのがファーアースオンラインの仕様だった。そんな生温いことはしない。フォルティシモは手に力を入れ、握力だけで【グングニル】の柄を握りつぶした。
【グングニル】の耐久は瞬時にゼロになり、紫色の光に包まれて消滅する。こんなことをしなくてもレベル四二〇〇程度のプレイヤーが放った武器など、フォルティシモのHPを一すら削れない。それでもフォルティシモは無意味とも思える力の誇示をした。
両手槍の男は、後ずさりをしていた。それは【グングニル】を消滅させたからではない。【隠蔽】と【偽装】を解除し、フォルティシモの本当のレベルを晒したからだ。
「れ、レベル、九九九九、ステータスが一億………?」
両手槍の男の情報ウィンドウには表示されているはずだ。
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TLv:9999
HP :999,999,999
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VIT:99,999,999
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最強のステータスが。
「れ、レベル、九九九九………?」
男とまったく同じ言葉を放ったのはキュウだった。キュウにはレベルを伝えたつもりだったが、正確に伝わっていなかったようだ。驚かせてしまったので、後でフォローしておこう。
「う、嘘、だろ? なんかの、間違い、だよ、な?」
男の瞳は驚愕に開かれ、舌が上手く動かないのか言葉は途切れ途切れになっていた。
このステータスは装備や従者の効果が反映されていない素のステータスで、これ以上何をやっても上げることができない限界値、カウンターストップ。略して、カンストだ。
一歩、男へ近づく。
男は、一歩引いた。
「てめぇは、ベースレベルをカンストさせてからこの世界へ来た。そしたら経験値が入った。だからモンスターを倒してレベルを上げた」
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「俺は経験値が入らなかったんだよ。つまり、俺は、この世界でもレベルカンストで、もう強くなれない」
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「ま、待て、待ってくれ、は、話し合おう!」
「いや、ははっ、それだけなら恨むのは運営だ。そりゃいつものことだ。そうだよな。俺がてめぇを殺したいのは、そうじゃない」
男の声を無視して、フォルティシモは自分の言葉の意味を知る。
「俺はNPCじゃない! 俺を殺したら殺人だぞ!?」
男はこの世界に生きる者たちをNPCだと思いゲームの延長だと考えているようだ。フォルティシモは彼らを人間だと思い、新しい人生だと考えている。だからこれまで脅しで「殺す」だなんだと口にしても実行には移さなかった。
「お前を殺したら殺人って、そんなのは当たり前だろ?」
「だ、だったらっ!」
「当時カンストしてて、俺の名前を知らないってことは、お前もソロか?」
「あ、ああ、そうだ。お、お前もソロなら、パーティを組もうじゃないか!」
「確かに仲間はいいな」
まだ一方的なことが多いけれど、食事を何にようか話し合ったり、部屋を散らかすと悪いなと考えるようになったり、洗濯物をまとめてみたり、買い物では彼女が喜びそうな服やアクセサリに目が行くようになったり、孤独を考えることがなくなり、朝起きてゲームにログインではなくキュウの顔を確認することが嬉しくなった。
リアルでもゲームでも一人だったけれど、誰かと一緒であることを久々に思い出した。近衛翔は最強厨で独占欲が強くて承認欲求の塊だからこそ、それを満たしてくれる誰かを奪われそうになったことに、自分でもどうしようもないほどの衝動が沸いて来る。
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自分の親でも子供でも恋人でも、大切な者を奪おうとした者を許せるか否か。
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光は次第に大きくなり、その光は天を衝き雲を割く。巨大な光の黒剣。すべてをカンストさせた魔術スキルを収束させて、剣術スキルに載せて放つ、フォルティシモの最強攻撃スキルの一つ。本来、消費MPが大きいだけで事前動作もキャストもない、最強攻撃スキルに相応しいものだが、キュウが見ているので格好付けることにした。
天空ごと男を両断する。男は悲鳴をあげて、逃げようとしたが意味はない。フォルティシモの黒色の斬撃は容赦なく男に襲いかかり、その身体を両断ではなく消滅させた。
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