廃課金最強厨が挑む神々の遊戯

葉簀絵 河馬

文字の大きさ
130 / 509
第四章

第百三十話 祈りの結果

しおりを挟む
 カイルたちが横一列に並び、手を合わせて祈りを捧げている。信仰心エネルギーの一人ずつでのテストは行ったので、今度はカイルたち全員で一斉にやったらどうなるかをテストしているのだ。手を合わせているのは、聖職者であるフィーナの真似をしているようだ。

 その様子をキュウはフォルティシモの顔色を窺いながら、ラナリアは興味深そうに、エンシェントやセフェールは何かを分析するように、アルティマとダアトは離れた場所でお菓子を摘まみながら見ていた。

「もういいぞ」
「冒険者として色んな依頼をやる覚悟はしてきたけど、こんな依頼をこなすことになるとは夢にも思わなかったな」
「もし同じような依頼をする奴が居たら教えてくれ。謝礼は出す」
「居ないとは思うが覚えておくな」

 信仰心エネルギーについて、大まかなことが分かって来た。

 このエネルギーは、フォルティシモの領域内でフォルティシモのことを想うことで回復する。回復量は人と行動によって異なり、フォルティシモへの関心の強弱によって上下すると考えられた。

 かなり真剣に取り組んでくれたシャルロットは、あくまでラナリアへの忠誠のためにフォルティシモの言葉に従っているため、回復量は安定していたが多いとは言えなかった。

 対して、サリスとノーラは祈りの最中に別のことを考えるためか、回復量が多かったり少なかったり安定しない。

 優秀なのがフィーナで、他の者の何倍もの量を安定して回復させていた。

 意外だったのはカイルだ。最初の数分の回復量が圧倒的で、平均値を考えるとトップだ。

 全員一斉に祈って貰ったところ、一人一人の回復量に個別だった時との差異はないようだった。誰がどの程度の回復量かも理解することができる。

 フォルティシモは頭の中で、ローカルデータをVR空間にコピーする時のアップロード転送量を思い浮かべた。フィーナは帯域幅が大きく回線も安定、カイルは帯域幅は大きいが回線が不安定。

 何でもVR空間を基準に考える自分に少しだけおかしくなった。

 今更だがデニスとエイダから感じられる回復量も興味深い。他のメンバーに比べると回復量はかなり少なく、およそ十分の一以下と言ったところだろう。時間が長くなればなるほど差異は開いていく。

「いかがでしょうか?」

 ラナリアは結果が気になるようで、誰よりも先に問い掛けてきた。

「良い結果が得られた」
「それは幸いです」
「詳細は夕食の後に説明する」
「はい。お待ちしております」

 その後、約束通りカイルたちにパワーレベリングを行うことにした。

 これはパワーレベリングを行うことによって、フォルティシモへの関心度が高まることを期待すると共に、今後はエルフや冒険者たちに同様の作業を行う可能性を考慮し、そのための練習を兼ねている。



 【拠点】を誰でも出入り自由の設定にするつもりはなかったので、夕食は森に建てたロッジのところでバーベキューを行うことにした。料理担当は当然つうであり、キャロルがどこからか手に入れてきた大量の肉を焼いている。

 フォルティシモの従者たちも全員が合流していて、何人かはカイルたちと交流をしていた。カイルたちからは、やはり以前からの知り合いであるエンシェントとセフェールの評判が良いようだ。

 アルティマが櫓を組んでキャンプファイヤーを始めた辺りで、フォルティシモは付いていけなくなり端の方で座っている。お祭りでもなく目的もなく騒ぐのは苦手だ。

 とは言え、こうして友人たちと集まってバーベキューをするなんて初めての経験だったので悪い気分ではない。

「フォルティシモさん」

 食事を済ませたフォルティシモが情報ウィンドウを立ち上げて、ピアノから送られて来たエルフの状況が書かれたメールを読んでいると、ノーラから声を掛けられた。

「何か用か?」

 レベリングを手伝い、美味しい食事を振る舞ったことで、カイルたちから得られる信仰心エネルギーが多くなったことは確認している。その中でもノーラの増加量が目覚ましい。

 顔を上げてノーラの表情を確認すると、どこか思い詰めたような表情をしている。聞いてるだけで気分が重くなる話をされそうだった。

「少し聞きたいことがあって」

 ノーラが首を動かして別の方向を見た。フォルティシモも釣られて同じ方向へ視線を動かす。そこにはキャンプファイヤーの前でラナリアと踊っているキュウが居て、ラナリアに交代を命令するべきだろうか迷った。しかしフォルティシモにダンスなどできるはずもなく、やむなく諦めるしかない。

「キュウさんは、特別だから強くなれたんですか?」
「キュウは今育ててる最中であってまだ弱い。まあ、特別ってか才能があるかって意味ならあるだろうな。何より可愛いし控え目でいじらしいし、尻尾の手触りが最高だし」
「後半は趣味ですか? フォルティシモさんも男ですね」
「性別くらい見れば分かるだろ」
「そういう意味ではないんですが」

 フォルティシモがファーアースオンライン時代によく向けられたどうしようもない男を蔑む眼を、久しぶりに向けられた気がする。従者を見目麗しい女性のみで作り、しかも全員がフォルティシモのことが好きである性格設定。今更どんな眼で見られようとも痛くも痒くもない。

「フォルティシモさん」
「なんだ」
「私に魔術を教えてください」

 ノーラの真剣な瞳に対して、フォルティシモは何も答えない。彼女が何を思ってそれを言い出したのか、それが分からなかった。

 フォルティシモが黙っていると、ノーラはその沈黙を拒否と受け取ったのか、更に険しい顔になる。

「………なら、私をパーティに入れてください。荷物持ちでも雑用でもどんなことでもします」

 この異世界で生きる者にとって、その言葉は下手な過去を打ち明けられること以上に重い言葉だと思う。ノーラのような若い女の子が男に付いていくということ、命の危険が大きい世界で遙か格上の冒険者に付いていくこと、そして命を預け合った今のパーティを抜けるということ。

「お前が重そうだから断る」
「それは、どういう意味ですか?」
「大した意味じゃない。楽しくなければパーティは組まない」

 生きることに必死な異世界の住人に対して、楽しくパーティを組もうというのが酷であることも理解している。魔術が使えるようになって何をしたいのかは知らないが、こんな重そうな雰囲気だと、こちらの空気まで重くなりそうで遠慮したい。

 今思うと、ラナリアはほんのわずかなやりとりだけで、フォルティシモの嗜好を把握したのかも知れない。だからいきなり処女だの子供が欲しいだの、空気を軽くするために変なことを言い出したのだ。フォルティシモに「このノリなら良いか」と思わせるために。

 そのラナリアはどさくさに紛れてキュウの尻尾とアルティマの尻尾の触り比べをしていた。それはフォルティシモでさえ、比べられる二人の気持ちを考えてやっていない行為だ。

 本気で、心の底から、羨ましい。

 羨ましいけれども、フォルティシモがやるのとラナリアがやるのでは意味が違うのだと心を落ち着ける。けど、あとでラナリアには感想を聞いてみようと思う。

「楽しくですか?」
「仲間になるなら、笑い合えないと嫌じゃないか?」

 ノーラがもう少し軽い雰囲気で言って来てくれたなら、「俺の奴隷になれば魔術が使えるようになるぜ?」くらいは言った。それらは承諾されるとしても拒否されるとしても、弱みに付け込むような状況ではなく、お互いが望んでその形にしたい。

 ちなみにキュウについては全力で目を背けた。あの時のフォルティシモは、己自身が重い雰囲気だった自覚がある。

「一度、友達と相談してみろ。あとギルドマスターにもな」
「絶対に反対されます」
「だろうな。まともな友達や親なら反対する」
「今」

 ノーラがフォルティシモの口許を指差す。フォルティシモの口許は、ギルドマスターの顔を思い出して緩んでいる。

「今、笑いました」
「………笑ってない」
「笑いました」
「苦笑だ」

 フォルティシモが笑ったことを認めると、ノーラは頭を下げた。

「すいません、今の話は忘れてください」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー

みーしゃ
ファンタジー
生まれつきMPが1しかないカテリーナは、義母や義妹たちからイジメられ、ないがしろにされた生活を送っていた。しかし、本をきっかけに女神への信仰と勉強を始め、イケメンで優秀な兄の力も借りて、宮廷大学への入学を目指す。 魔法が使えなくても、何かできる事はあるはず。 人生を変え、自分にできることを探すため、カテリーナの挑戦が始まる。 そして、カテリーナの行動により、周囲の認識は彼女を聖女へと変えていくのだった。 物語は、後期ビザンツ帝国時代に似た、魔物や魔法が存在する異世界です。だんだんと逆ハーレムな展開になっていきます。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。 広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。 ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。 彼の名はレッド=カーマイン。 最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。 ※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...