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第八章
第四百九話 フォルティシモは想う
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フォルティシモがオウコーにアカウントを乗っ取られる瞬間。フォルティシモは己の情報ウィンドウに表示された文字を見た時、思わず驚きで思考停止してしまった。
しかし、その停止時間は本当に一瞬で、すぐに状況を理解した。
残された時間はほんの少しだった。しかし焦れば焦るほど冷静になっていく思考が、フォルティシモなりにできることを行動させた。
左手で信頼する親友へメッセージを送りつつ、右手で残されるキュウのために希望を創り出す。
そしてフォルティシモは、神戯から、異世界ファーアースから、完全にその姿を消した。
フォルティシモは闇に堕ちたのだ。
フォルティシモは元々、近衛天翔王光の代役として神戯へ参加していた。それはエルフ王ヴォーダンを倒した日から分かっていたことで、フォルティシモの失格と交代の主導権は常に近衛天翔王光にあった。失格についてはキュウが解決してくれたものの、交代の懸念はずっと付きまとっていた。
ちなみにフォルティシモがギリギリまで神戯というゲームを逸脱した力に手を出さなかったのは、この辺りに理由がある。そうでなければ、フォルティシモは容赦なく開発委託者としての権限やグリッチ技を使ったに違いない。
だからフォルティシモは、準備をしていた。己が近衛天翔王光に取って変わられる可能性を知っていたから。
「やってくれたな、トッキー」
闇の中でフォルティシモは、あるプレイヤーの名前を呼んだ。それは異世界ファーアースへ召喚された日、最後にVRMMOファーアースオンラインで会話したプレイヤーの名前だった。
フォルティシモは世界を焼き尽くす巨神を倒して、異世界ファーアースへ召喚された、のではない。ピアノと異世界で再会した時も話したが、あるメールのボタンをタップした時に異世界召喚されたのだ。
あの日、フォルティシモは異世界からの誘いのメールに対して何を思ったか。
―――トッキーの返信だろう
フォルティシモはトッキーにメールを送った。その返信が、あのメール。
ずっと不思議だった。他のプレイヤーは大なり小なり、異世界召喚される直前に神様と出会って何かしらの説明を受けたりしているのに、フォルティシモにだけはそれがない。あったのは召還後に近衛天翔王光と出会ったくらいだ。
フォルティシモを異世界召喚したのは誰なのか。
答えは、トッキーだ。
トッキーは現代リアルワールドに存在していた、実在する神。
考えてもみれば、あの日はおかしかった。VRMMOの最新アップデートの日、実装されたワールドレイドボスモンスターに対して、十五分もの時間、ほとんど誰もフォルティシモの邪魔をしなかったのは何故か。
普通のゲームだったら、フォルティシモの行動を無視して次々にプレイヤーがワールドレイドボスモンスターに襲い掛かるはずだ。
それがされなかったのは、トッキーが大勢の主要プレイヤーに呼び掛けていたからだ。フォルティシモの邪魔をしないように、VRMMOファーアースオンラインをプレイしていた大多数のプレイヤーへ―――命令したからだ。
トッキーはあの日、フォルティシモを異世界召喚するつもりだった。それも単なる異世界召喚ではない。近衛天翔王光のアカウントとして、フォルティシモを異世界召喚する。
つまりトッキーは近衛天翔王光の仲間で、フォルティシモの行動は最初から、VRMMOファーアースオンラインの頃から近衛天翔王光の手の平の上だった。
しかし、それはここまでの話だ。
フォルティシモが異世界ファーアースで出会い、今や心から愛してやまないキュウ。
VRMMOファーアースオンラインの頃は恥ずかしさや相手の事情を気にしていたけれど、ようやく本当の親友になれたピアノ。
最初は性欲と取引だったけれど、その有能さと献身は疑う余地もなく、今では他の従者と同じくらい頼りにしているラナリア。
出会いこそよくなかったが、すっかり仲間の一員で頼りになる、神戯に敗北しても戦い抜いたテディベア。
フォルティシモが初めて異世界で出会い、異世界の人々の覚悟を教えてくれたフィーナ。
ずっと変わらずフォルティシモと同じ最強を憧憬する、異世界ファーアースでできた友人カイル。
プレイヤーの子孫でキュウとの将来に関係し、何だかんだ言いながら協力してくれるエルミア。
認めたくはないが同じ血筋なのか、色んな行動にどこか親近感を覚えるルナーリス。
アクロシア王国のギルドマスターガルバロス。<青翼の弓とオモダカ>のサリス。ノーラ。エイダ。デニス。Aランク冒険者のギルバート。アクロシア王国のアクロシア王。ラナリア母マリアナ。ラナリア祖父。カリオンドル皇国の外交官ニコラス。聖マリア教でフィーナの母親のテレーズ大司教。マグナの一番弟子エイルギャヴァ。
フォルティシモが思い描く皆は、信じているはずだ。
「爺さん」
フォルティシモの言葉は近衛天翔王光へ届かないだろう。それでもフォルティシモは口にした。
「最強が天才ごときに負けると思ったか?」
やはり近衛天翔王光にその言葉は届かない。
代わりに。
―――いえ、思っておりません。ご主人様、お願いいたします。
フォルティシモという最強を信仰する声を聞いた気がする。
――――――――――
ここまでお読み頂きありがとうございます!
これで第八章は完結いたしました。
どうかこれからもよろしくお願いいたします。
しかし、その停止時間は本当に一瞬で、すぐに状況を理解した。
残された時間はほんの少しだった。しかし焦れば焦るほど冷静になっていく思考が、フォルティシモなりにできることを行動させた。
左手で信頼する親友へメッセージを送りつつ、右手で残されるキュウのために希望を創り出す。
そしてフォルティシモは、神戯から、異世界ファーアースから、完全にその姿を消した。
フォルティシモは闇に堕ちたのだ。
フォルティシモは元々、近衛天翔王光の代役として神戯へ参加していた。それはエルフ王ヴォーダンを倒した日から分かっていたことで、フォルティシモの失格と交代の主導権は常に近衛天翔王光にあった。失格についてはキュウが解決してくれたものの、交代の懸念はずっと付きまとっていた。
ちなみにフォルティシモがギリギリまで神戯というゲームを逸脱した力に手を出さなかったのは、この辺りに理由がある。そうでなければ、フォルティシモは容赦なく開発委託者としての権限やグリッチ技を使ったに違いない。
だからフォルティシモは、準備をしていた。己が近衛天翔王光に取って変わられる可能性を知っていたから。
「やってくれたな、トッキー」
闇の中でフォルティシモは、あるプレイヤーの名前を呼んだ。それは異世界ファーアースへ召喚された日、最後にVRMMOファーアースオンラインで会話したプレイヤーの名前だった。
フォルティシモは世界を焼き尽くす巨神を倒して、異世界ファーアースへ召喚された、のではない。ピアノと異世界で再会した時も話したが、あるメールのボタンをタップした時に異世界召喚されたのだ。
あの日、フォルティシモは異世界からの誘いのメールに対して何を思ったか。
―――トッキーの返信だろう
フォルティシモはトッキーにメールを送った。その返信が、あのメール。
ずっと不思議だった。他のプレイヤーは大なり小なり、異世界召喚される直前に神様と出会って何かしらの説明を受けたりしているのに、フォルティシモにだけはそれがない。あったのは召還後に近衛天翔王光と出会ったくらいだ。
フォルティシモを異世界召喚したのは誰なのか。
答えは、トッキーだ。
トッキーは現代リアルワールドに存在していた、実在する神。
考えてもみれば、あの日はおかしかった。VRMMOの最新アップデートの日、実装されたワールドレイドボスモンスターに対して、十五分もの時間、ほとんど誰もフォルティシモの邪魔をしなかったのは何故か。
普通のゲームだったら、フォルティシモの行動を無視して次々にプレイヤーがワールドレイドボスモンスターに襲い掛かるはずだ。
それがされなかったのは、トッキーが大勢の主要プレイヤーに呼び掛けていたからだ。フォルティシモの邪魔をしないように、VRMMOファーアースオンラインをプレイしていた大多数のプレイヤーへ―――命令したからだ。
トッキーはあの日、フォルティシモを異世界召喚するつもりだった。それも単なる異世界召喚ではない。近衛天翔王光のアカウントとして、フォルティシモを異世界召喚する。
つまりトッキーは近衛天翔王光の仲間で、フォルティシモの行動は最初から、VRMMOファーアースオンラインの頃から近衛天翔王光の手の平の上だった。
しかし、それはここまでの話だ。
フォルティシモが異世界ファーアースで出会い、今や心から愛してやまないキュウ。
VRMMOファーアースオンラインの頃は恥ずかしさや相手の事情を気にしていたけれど、ようやく本当の親友になれたピアノ。
最初は性欲と取引だったけれど、その有能さと献身は疑う余地もなく、今では他の従者と同じくらい頼りにしているラナリア。
出会いこそよくなかったが、すっかり仲間の一員で頼りになる、神戯に敗北しても戦い抜いたテディベア。
フォルティシモが初めて異世界で出会い、異世界の人々の覚悟を教えてくれたフィーナ。
ずっと変わらずフォルティシモと同じ最強を憧憬する、異世界ファーアースでできた友人カイル。
プレイヤーの子孫でキュウとの将来に関係し、何だかんだ言いながら協力してくれるエルミア。
認めたくはないが同じ血筋なのか、色んな行動にどこか親近感を覚えるルナーリス。
アクロシア王国のギルドマスターガルバロス。<青翼の弓とオモダカ>のサリス。ノーラ。エイダ。デニス。Aランク冒険者のギルバート。アクロシア王国のアクロシア王。ラナリア母マリアナ。ラナリア祖父。カリオンドル皇国の外交官ニコラス。聖マリア教でフィーナの母親のテレーズ大司教。マグナの一番弟子エイルギャヴァ。
フォルティシモが思い描く皆は、信じているはずだ。
「爺さん」
フォルティシモの言葉は近衛天翔王光へ届かないだろう。それでもフォルティシモは口にした。
「最強が天才ごときに負けると思ったか?」
やはり近衛天翔王光にその言葉は届かない。
代わりに。
―――いえ、思っておりません。ご主人様、お願いいたします。
フォルティシモという最強を信仰する声を聞いた気がする。
――――――――――
ここまでお読み頂きありがとうございます!
これで第八章は完結いたしました。
どうかこれからもよろしくお願いいたします。
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