廃課金最強厨が挑む神々の遊戯

葉簀絵 河馬

文字の大きさ
504 / 509
アフターストーリー

第五百三話 神様らしい行為

しおりを挟む
 端的に言って、現代リアルワールドは取り返しのつかない状況まで来ていた。

 サイコロを振って一万回連続で一を出せるマリアステラにも観測できないのだから、不可能と言って良いかも知れない。いや断言できる。まともな方法で神や魔法の存在しない世界へ戻すことなど不可能。

 ただし、まともでなければ別だ。

 今、フォルティシモの手の中に百億の信仰心エネルギーがある。

 神思うが故に神在るならば、新たな神さえも誕生させられる信仰。

「エン、セフェ、解析結果を寄越せ」

 フォルティシモは拠点攻防戦の際、サポートAIエンシェントをほぼ戦いへ参加させなかった。また巨大亜量子コンピュータを乗っ取ったセフェールは現代リアルワールドで強力な助力ができるのに、何もさせていないように見える。

 当然、そんなはずがない。フォルティシモが自らの手で作り上げた最強の二人のAI。それぞれに神戯【現代リアルワールド】と神戯【VRMMOファーアースオンラインの拠点攻防戦】の解析をさせていたのだ。

 神戯【現代リアルワールド】は、ゼノフォーブフィリアが勝利者となった神戯。

 神戯【VRMMOファーアースオンラインの拠点攻防戦】は、つい先ほど引き分けになった神戯。

 後者は予定外だったが、非常に参考になった。あの神戯はマリアステラがフォルティシモたちの目の前で開催した。

 開催場所がVRMMOファーアースオンラインというVR世界の中であり、現代リアルワールドの一部だった点は非常に興味深い仕様システムが見えて来る。

 神戯は世界の一部だけで開催可能。異世界そのものが神戯の舞台、なんて必要は無い。

 加えて神戯の中に神戯を開催することで、局所的に別の法則を持った世界を創り出せる。

 魔法で言うと結界、ゲームで言うとMAP、VR空間で言うとサンドボックス。

 解析した神戯の仕様、フォルティシモが異世界ファーアースで行った世界創世、そして集まった百億の信仰心エネルギー。

神戯ディオスフエゴ創世グラーシア

 それはフォルティシモが指定した範囲に、新しい世界を創造する神の御技だった。



 この時点で、フォルティシモはおそらく始祖神であるマリアステラと同じレベルの創世能力を得たと言って良い。

 フォルティシモはマリアステラのやっていることが羨ましかった。だから手に入れなければならなかったのだ。

 他者がやっている偉業は自分もやる。どれだけ気に入らない奴が使っていたとしても、前の装備やスキルに愛着があっても、習得が困難であっても、絶対に。

 フォルティシモが何度もマリアステラを見逃した真の理由は、それかも知れない。



『地球全土を包み込むような神戯を開催したようだが。………この際、吾に無許可でやったことは咎めない。しかし何をするつもりだ?』

 ゼノフォーブフィリアはフォルティシモが創造開催した神戯をすぐに把握し、その意図を尋ねて来た。

 彼女からすればフォルティシモの神戯開催は、現代リアルワールドの常識を更に塗り替えてしまうような行為で、警戒するのも仕方がない。

「安心しろ。どうせみんな忘れる」
『脳の記憶領域への干渉アルゴリズムを使うつもりか? 無駄だとは言わないが、効果は絶対ではない。インターフェースが必要になるため、VRダイバー所有者に限定される』
「この状況がリアルワールドの技術でどうにもならないことは、俺も理解している」

 フォルティシモはそれを言った後、思わず別の事実が気になった。

「………いや、ちょっと待て。聞き捨てならない話を聞いたぞ? VRダイバー所有者の記憶を操るだと?」
『人間の脳を完全に解析したVRダイバーを使っているのだから、記憶領域くらい操れるに決まっているだろう?』

 人間の記憶を操作する。人間の脳へ干渉するフルダイブ技術に、脳をAIへコピーする魂のアルゴリズム、それらに比べたら技術的には劣るのかも知れない。

「だがそれを自由に使えるって道義的にどうなんだ? ヘルメス・トリスメギストス社って、ヤバイ企業か? 魔法じゃなくて科学なら、何でも有りか?」

 まるでディストピアではないだろうか。ファンタジーとSFは紙一重とまでは言わないが、途端にゼノフォーブフィリアの信念が納得いかないものになった気がした。ゼノフォーブフィリアの中で、どこまでが“有り”なのだろうか。

 理性ではキュウたちの言う魔力が関係しているのだと分かっている。しかし、現代リアルワールド出身のせいか魔力知覚の感覚器官を持っておらず、どこか納得できなかった。

『今はどうでも良いことだろう。其方は何をするつもりなのだ?』
「最強のフォルティシモの力で、地球を破壊する。それですべて解決だ」
『頭がイカれたか?』

 フォルティシモは察しの悪いゼノフォーブフィリアへ溜息を吐いた。

「分からないのか? キュウとマリアステラは既に理解しているぞ」
『其方は未来聴と未来視としか会話できないのか?』

 フォルティシモはゼノフォーブフィリアへ説明するため、インベントリから目的のアイテムを取り出した。

 それはVRMMOファーアースオンラインに実装された【刻限の懐中時計】と言うガチャアイテムで、一日一回死亡時に完全回復して蘇生する効果を持つものである。

 本来の使用用途としては、デスペナを一回だけ回避できる装備アイテムでしかない。正直、装備枠を潰す価値があるかは疑問で、フォルティシモにとっては初見殺し対策の価値しかなかった。

 しかし刻限の懐中時計は異世界ファーアースで色々な意味で大活躍してくれた、今やフォルティシモにとって一押しのアイテムである。

 元々デザインが気に入っていた点に加え、キュウがフォルティシモからの初めてのプレゼントとして大切に使っていて、神戯の中ではAIフォルティシモが使用して太陽神ケペルラーアトゥムを追い詰める切り札となった。

「こういうことだ」

 フォルティシモは得意げに刻限の懐中時計を掲げて見せる。

『ゲームのアイテムを取り出して、それで説明した気になっているとしたら、ヘルメス・トリスメギストス社が新入社員向けに開催しているコミュニケーション能力研修を受講させてやろう。全二十四回で給与も出してやる』
「それは少し興味があるが、今はこれだ」
『まさか地球を、刻限の懐中時計で再生しようと考えているんじゃないだろうな?』
「理解してるじゃないか」
『できない。たしかに星を一つの生命体、もしくは神と捉えれば、刻限の懐中時計での時間回帰が発現する』

 刻限の懐中時計で神に近い存在が蘇生可能であることは、最果ての黄金竜やAIフォルティシモが使ったことで証明されている。

『だが、それで戻って来る地球は、地球以外の生命体が一切いないものだ。その人間が死亡した後、その人間の時間を戻して蘇生したとして、微生物や細菌まで一緒に戻って来ることはない』
「察しが悪いな。刻限の懐中時計は、装備やステータスも元の状態に戻るだろ?」
『………地球に生きる人類、あらゆる生命が、地球の装備品だと』
「地球にとったら人間なんて従魔みたいなもんだろ? 地球をPKした後、刻限の懐中時計を使わせる。これだけの信仰があればやれる」

 ゼノフォーブフィリアから唖然とした空気が伝わって来る気がする。

『其方、気は確かか?』
「俺は最強のフォルティシモだぞ」
『ねぇ、魔王様、世界を救うためとか、元に戻るとか言い訳したところで、百億の人命を奪うのに罪悪感を覚えない?』
「なんだ、突然? 時間が戻るんだから良いだろ?」

 最強のフォルティシモの力で、地球を破壊する。

 近衛翔を苦しめた世界を粉々にする。

 フォルティシモは少し楽しみになって笑った。

 もちろん地球への攻撃開始前に、キュウや従者たちは退避させるし、神戯を知る者たちも同様の要請を行う。

『あははは、ふふ、魔王様、愛してる』



 フォルティシモは大騒ぎになっている都心の上空から下界を眺め、最後にファーアースオンラインの掲示板へ書き込んだ。

> 最強のフォルティシモを刮目しろ

 今なら掲示板で散々フォルティシモを貶めた奴らに謝罪させられるかも知れない。

 フォルティシモはそんな強烈な誘惑を覚えながらも、何とか振り払って空へ昇っていく。地球の重力など最強のフォルティシモからすれば簡単に打ち破れるものだ。

 天烏の最高飛行高度を超え、地球から宇宙へ到達する。

 人間ならば酸素が無く、生身で宇宙線に晒される宇宙へ到れば無事ではすまない。しかしフォルティシモは神で、ここは新しい世界神戯である。

 フォルティシモは宇宙から地球を見下ろす。火星旅行もできるようになった現代リアルワールドでも、宇宙から青い地球を眺めた人類は一握りの金持ちだけだ。多くがこの星の中、その中でも更に小さな国、都市、地域に縛られ、生涯を終える。

 しばらくその状態のまま、退避が完了するのを待つ。ここからは【転移】や権能を使い放題なので、そこまで時間は掛からない。

「全員の退避は完了したか?」
『知り合いの中立神域で受け入れて貰った』
『<星>のところでも一時退避させたよ、魔王様』
「そうか」

 フォルティシモは再び青い地球を見回した。

 今なら少しだけ、世界を洪水で洗い流したり、文明の塔を破壊したり、街を焼き払う存在の気持ちが分かる気がする。往々にして神は世界をリセットして元へ戻す。

「恨むなら、この最強のフォルティシモの“前”に立ち塞がったことを恨め」

 フォルティシモは世界最大の物体を破壊するため、最強の力を収束させる。

辰星エストレジャ爆裂エクスプロシオン

 フォルティシモの目の前で、地球という六十垓トンの物体が爆発四散した。

 皮肉にもそれは、文屋一心の記事が事実になったことを意味しているかも知れない。フォルティシモが勝利したことで、百億の人間は消滅するのだ。苦しむ暇もない上、すぐに時間が戻り何も覚えていないのが唯一の救いだろうか。

 そして数瞬後、地球を包み込む懐中時計のエフェクトが現れた。

 刻限の懐中時計が地球の時間を戻す。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

愛鶴ソウ
ファンタジー
十二の公爵によって統制された大陸の内、どの公爵にも統治されていない『東の地』 そこにある小さな村『リブ村』 そしてそこで暮らす少年剣士『クロト』。 ある日リブ村が一級魔物『ミノタウロス』によって壊滅させられる。 なんとか助かったクロトは力を付け、仲間と出会い世界の闇に立ち向かっていく。 ミノタウロス襲撃の裏に潜む影 最弱属性魔剣士の雷鳴が今、轟く ※この作品は小説サイト『ノベルバ』、及び『小説家になろう』にも投稿しており、既に完結しています。

【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】 ・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー! 十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。 そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。 その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。 さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。 柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。 しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。 人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。 そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...