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第15話 ガスター兄妹とおでかけ
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翌日、午前はいつも通り教科書を使っての授業をした。
リリーはこの後の楽しみな予定に気を取られ、あまり勉強には身が入らない様子だ。
「ねぇ、アリス先生。先生は何が食べたいですか?私はクレープが食べたいなぁ」
「クレープ、というのはどのような食べ物なのですか?」
「クレープはね、薄いペラペラな紙みたいな生地でクリームとかフルーツとかをくるくる巻いた物よ。甘くておいしいの!」
「全然想像がつかないわ。リリーが食べたいのなら、わたくしも食べてみたいですわ」
「絶対気に入ると思うなぁ。それから、串焼きにしたお肉も食べたい!」
「お肉を串焼きに・・・?どうやって食べるのかしら?」
そんな会話をしていると、扉をノックしてジェイコブが迎えに来て、一行はでかけることになった。
いつもは付いて来てくれるナタリーは、今回はジェイコブがいるため必要がないとのことで、3人だけで行くらしい。
屋敷の前に馬車が用意されていた。
「歩いて行くのではないのですね?食べ歩きというからてっきり歩くのかと思っていました」
「ははは、後で少し歩きますよ。屋台が立ち並ぶ公園の辺りまで行ってみようかと思いましてね。すこし距離があるので馬車で行きましょう」
ジェイコブはさわやかな笑顔を見せ、丁寧にアリステルをエスコートした。
「リリーにもやって!おてて、つないで!」
「はいはい。リリーお嬢様」
ジェイコブはリリーにも手を差し出し、令嬢さながらにエスコートをして馬車に乗せてやった。
アリステルは微笑ましく兄妹のやり取りを見守った。
公園通りまで行くと馬車を降りて、辺りを散策した。
ベンチがずらりと並んでいる辺りには、たくさんの出店があり、何かが焼ける香ばしい匂いや、甘い蜜の香りがただよっていた。
アリステルとリリーをベンチに座らせ、ジェイコブはいくつかの屋台を回って目ぼしい食べ物を買って来てくれた。
串焼き、海鮮焼き、クレープに色とりどりな飲み物。
どれも初めて食べる物ばかりで、アリステルはリリーに食べ方を教わりながら、見よう見まねで口へ運ぶ。
どれも驚くほどおいしく、アリステルは頬を緩めてたくさん食べた。
そんなアリステルの様子を、ジェイコブはとろけるような表情で見つめていたが、見とれている自覚はなかった。
「食べ終わったら、少し歩いて店を見よう」
そう言って、ジェイコブはゴミを片付け、二人を先導して歩き出した。
アリステルとリリーはすっかり楽しい気分になり、手をつないで歩いた。
リリーはウキウキとして、宙に浮いているかのような軽い足取りである。
「お兄ちゃん、見て!あの露店が見てみたいわ!」
リリーが指さしたのは、広げた布の上に手作りのアクセサリーを並べた店だった。
見れば宝石の屑石を使って売り子の女性が自分で作ったアクセサリーだという。
ネックレス、腕輪、指輪、ブローチとたくさん並んでいる。
「かわいいわね。何か記念に買いましょうか」
「うん!リリー、アリス先生とお揃いがいい!」
「いいわね」
二人はいくつもの品物を手に取って見て、ようやくお揃いの髪飾りを選んだ。
光沢のあるリボンに宝石が散りばめられている。
リリーはピンク、アリステルは水色のリボンに決めた。
「とてもお似合いですよ。私からのプレゼントにさせてください」
そう言ってジェイコブがスマートに会計を済ませた。
「お兄ちゃん、ありがとう!」
「わたくしにまで、ありがとうございます」
アリステルが嬉しそうに髪につけたリボンに触れるのが、ジェイコブは何とも言えず幸せに感じた。
その時だった。3人の背後から、突然冷え冷えとした声がかけられた。
「ずいぶん楽しそうにしていること」
マルグリットである。
背後に護衛兼付き人と思われるガタイのよい男を2人連れている。
ジェイコブは少し血の気が引いたような青白い顔になった。
「マルグリット様、ごきげんよう」
「こんにちは!マルグリット様もお買い物ですか?」
アリステルとリリーは礼儀正しく挨拶をしたが、マルグリットは冷たい視線を投げるだけで二人には挨拶も返さなかった。
「ずいぶん安っぽいリボンを付けていること。まぁ、あなた方にはお似合いよ」
「ひどい!これはお兄ちゃんがプレゼントしてくれたのよ!」
憤慨したリリーが食って掛かっても、マルグリットは鼻で笑っただけで相手にしない。
「ジェイコブ。あなた、埋め合わせはすると仰ったわよね?連絡も寄越さず別の女を連れて歩いて、安っぽいプレゼントまで贈って。どういうおつもり?」
「別の女って、妹だよ。もちろん埋め合わせはするさ。本当に昨日はすまなかった」
マルグリットは、ふん、と鼻で笑った。
「すまなかった、ですって?本当にそう思っているのでしょうね?それなら、今からわたくしに付き合ってちょうだい」
「今から?妹たちを家に送り届けないと…」
「なんですって?」
目を吊り上げるマルグリットを見て、アリステルが遠慮がちに声をかける。
「ジェイコブさん、わたくしたちは大丈夫ですから。どうぞマルグリット様とご一緒なさってください」
「いや、しかし」
「馬車で帰るだけですもの。大丈夫ですわ」
それでも迷っているジェイコブに、マルグリットはびしりと扇子を突き付ける。
「その女とわたくしと、どちらを優先しますの?わたくしという者がありながら、他の女を優先するようなことがあれば、あなたの不貞で婚約を破棄いたしますわ」
「・・・もちろん、あなたより優先するものなどありませんよ、マルグリット」
ジェイコブはこうなっては仕方なく、マルグリットに付き合うことにした。
「当り前ですわね。では、行きましょう」
マルグリットに腕を取られ、ジェイコブは行ってしまった。
リリーは頬っぺたを膨らませて怒った。
「なにあれ。いやな女!アリス先生の方がずっとすてきだわ。お兄ちゃんのばーか」
「リリー、そんなことを言ってはいけませんよ。さぁ、馬車のところへ戻りましょう」
さほど馬車から離れていなかったので、二人はすぐに馬車に乗り込みガスター邸へと戻った。
馬車で揺られながら、マルグリットのさげずむようなまなざしを思い出し、心が冷えていく感覚を味わった。あの目は覚えがあった。
継母の冷たい目だ。
アリステルは忘れたくて小さく首を振った。
リリーはこの後の楽しみな予定に気を取られ、あまり勉強には身が入らない様子だ。
「ねぇ、アリス先生。先生は何が食べたいですか?私はクレープが食べたいなぁ」
「クレープ、というのはどのような食べ物なのですか?」
「クレープはね、薄いペラペラな紙みたいな生地でクリームとかフルーツとかをくるくる巻いた物よ。甘くておいしいの!」
「全然想像がつかないわ。リリーが食べたいのなら、わたくしも食べてみたいですわ」
「絶対気に入ると思うなぁ。それから、串焼きにしたお肉も食べたい!」
「お肉を串焼きに・・・?どうやって食べるのかしら?」
そんな会話をしていると、扉をノックしてジェイコブが迎えに来て、一行はでかけることになった。
いつもは付いて来てくれるナタリーは、今回はジェイコブがいるため必要がないとのことで、3人だけで行くらしい。
屋敷の前に馬車が用意されていた。
「歩いて行くのではないのですね?食べ歩きというからてっきり歩くのかと思っていました」
「ははは、後で少し歩きますよ。屋台が立ち並ぶ公園の辺りまで行ってみようかと思いましてね。すこし距離があるので馬車で行きましょう」
ジェイコブはさわやかな笑顔を見せ、丁寧にアリステルをエスコートした。
「リリーにもやって!おてて、つないで!」
「はいはい。リリーお嬢様」
ジェイコブはリリーにも手を差し出し、令嬢さながらにエスコートをして馬車に乗せてやった。
アリステルは微笑ましく兄妹のやり取りを見守った。
公園通りまで行くと馬車を降りて、辺りを散策した。
ベンチがずらりと並んでいる辺りには、たくさんの出店があり、何かが焼ける香ばしい匂いや、甘い蜜の香りがただよっていた。
アリステルとリリーをベンチに座らせ、ジェイコブはいくつかの屋台を回って目ぼしい食べ物を買って来てくれた。
串焼き、海鮮焼き、クレープに色とりどりな飲み物。
どれも初めて食べる物ばかりで、アリステルはリリーに食べ方を教わりながら、見よう見まねで口へ運ぶ。
どれも驚くほどおいしく、アリステルは頬を緩めてたくさん食べた。
そんなアリステルの様子を、ジェイコブはとろけるような表情で見つめていたが、見とれている自覚はなかった。
「食べ終わったら、少し歩いて店を見よう」
そう言って、ジェイコブはゴミを片付け、二人を先導して歩き出した。
アリステルとリリーはすっかり楽しい気分になり、手をつないで歩いた。
リリーはウキウキとして、宙に浮いているかのような軽い足取りである。
「お兄ちゃん、見て!あの露店が見てみたいわ!」
リリーが指さしたのは、広げた布の上に手作りのアクセサリーを並べた店だった。
見れば宝石の屑石を使って売り子の女性が自分で作ったアクセサリーだという。
ネックレス、腕輪、指輪、ブローチとたくさん並んでいる。
「かわいいわね。何か記念に買いましょうか」
「うん!リリー、アリス先生とお揃いがいい!」
「いいわね」
二人はいくつもの品物を手に取って見て、ようやくお揃いの髪飾りを選んだ。
光沢のあるリボンに宝石が散りばめられている。
リリーはピンク、アリステルは水色のリボンに決めた。
「とてもお似合いですよ。私からのプレゼントにさせてください」
そう言ってジェイコブがスマートに会計を済ませた。
「お兄ちゃん、ありがとう!」
「わたくしにまで、ありがとうございます」
アリステルが嬉しそうに髪につけたリボンに触れるのが、ジェイコブは何とも言えず幸せに感じた。
その時だった。3人の背後から、突然冷え冷えとした声がかけられた。
「ずいぶん楽しそうにしていること」
マルグリットである。
背後に護衛兼付き人と思われるガタイのよい男を2人連れている。
ジェイコブは少し血の気が引いたような青白い顔になった。
「マルグリット様、ごきげんよう」
「こんにちは!マルグリット様もお買い物ですか?」
アリステルとリリーは礼儀正しく挨拶をしたが、マルグリットは冷たい視線を投げるだけで二人には挨拶も返さなかった。
「ずいぶん安っぽいリボンを付けていること。まぁ、あなた方にはお似合いよ」
「ひどい!これはお兄ちゃんがプレゼントしてくれたのよ!」
憤慨したリリーが食って掛かっても、マルグリットは鼻で笑っただけで相手にしない。
「ジェイコブ。あなた、埋め合わせはすると仰ったわよね?連絡も寄越さず別の女を連れて歩いて、安っぽいプレゼントまで贈って。どういうおつもり?」
「別の女って、妹だよ。もちろん埋め合わせはするさ。本当に昨日はすまなかった」
マルグリットは、ふん、と鼻で笑った。
「すまなかった、ですって?本当にそう思っているのでしょうね?それなら、今からわたくしに付き合ってちょうだい」
「今から?妹たちを家に送り届けないと…」
「なんですって?」
目を吊り上げるマルグリットを見て、アリステルが遠慮がちに声をかける。
「ジェイコブさん、わたくしたちは大丈夫ですから。どうぞマルグリット様とご一緒なさってください」
「いや、しかし」
「馬車で帰るだけですもの。大丈夫ですわ」
それでも迷っているジェイコブに、マルグリットはびしりと扇子を突き付ける。
「その女とわたくしと、どちらを優先しますの?わたくしという者がありながら、他の女を優先するようなことがあれば、あなたの不貞で婚約を破棄いたしますわ」
「・・・もちろん、あなたより優先するものなどありませんよ、マルグリット」
ジェイコブはこうなっては仕方なく、マルグリットに付き合うことにした。
「当り前ですわね。では、行きましょう」
マルグリットに腕を取られ、ジェイコブは行ってしまった。
リリーは頬っぺたを膨らませて怒った。
「なにあれ。いやな女!アリス先生の方がずっとすてきだわ。お兄ちゃんのばーか」
「リリー、そんなことを言ってはいけませんよ。さぁ、馬車のところへ戻りましょう」
さほど馬車から離れていなかったので、二人はすぐに馬車に乗り込みガスター邸へと戻った。
馬車で揺られながら、マルグリットのさげずむようなまなざしを思い出し、心が冷えていく感覚を味わった。あの目は覚えがあった。
継母の冷たい目だ。
アリステルは忘れたくて小さく首を振った。
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