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現代と違って個人的な思想から朝廷や公家などを直接、批判して権力者から不興を買えばどんな圧力がかけられるか分からない時代だっただろう。太平記の中でそのように妖怪を絡めた記述をすることで、間接的に人々の不満を集めていた政権を批判するのが無難な表現方法として取られたというのもあるのだろうか。
「尤も太平記の中では源頼政の鵺退治にあやかって、怪鳥を退治すれば良いと考えた公家たちが弓の名手である隠岐次郎左衛門広有に怪鳥退治を依頼し、隠岐次郎左衛門広有は紫宸殿の上にいた怪鳥を鏑矢で射貫いて退治し、時の天皇だった後醍醐天皇から恩賞として五位の位と因幡国、今で言う鳥取県東部にある荘園。そして『真弓』の姓を授かったそうだが……」
「つまり『怪鳥』が疫病の比喩なら、疫病は人間によって退治されたってこと?」
「いや、当時の医療レベルを考えれば、疫病が医学的に根治されたというのは考えにくい。何しろ医者の治療より、まじないや祈祷の効力があると信じられていたような時代だからな」
「今だと考えられないわね……」
人々が医者より、まじないや祈祷の方が効力があると考えていたなんて。現代に生きる私たちからすれば信じられない価値観だ。
「実際、当時の医学レベルが低かったから仕方ない面もある……。平安時代には赤痢や麻疹、天然痘のような伝染病がたびたび流行して、天皇や皇族、公家のような身分が高い者ですら流行病で命を落としていた時代だった。南北朝時代も流行病の蔓延を防げるほど医学が進歩していた訳ではないからな……」
「南北朝時代って、鎌倉時代の後で戦国時代の前よね?」
「戦国時代をいつからと定義するかにもよるが、後醍醐天皇によって鎌倉幕府が倒されたことで鎌倉時代が1333年に終焉を迎えた。そして1336年から南北朝時代が始まった。そのあと1339年に後醍醐天皇が崩御し、1392年に南北朝時代が終わる。朝廷が二つあった為、1336年から足利将軍家が京都の室町に幕府を置いていた室町時代が始まっていた。さらにその後、1573年から織田信長や豊臣秀吉、徳川家康らが活躍する安土桃山時代が始まる訳だから、一般的に安土桃山時代を戦国時代の始まりと定義する場合が多いことを考えれば南北朝時代が鎌倉時代の後で戦国時代、つまり安土桃山時代の前と考えて問題ないだろう」
「そっか……。日本にガラスが普及するのって、安土桃山時代になってからですものね。戦国時代の前じゃあ顕微鏡どころか、ガラスすら一般的じゃなかった時代なんだから医療のレベルが低くても仕方ないわね」
現代社会に生きる、私たちが伝染病の原因となる細菌やウイルスなどを認識できるのは電子顕微鏡のような最新の機器があってこそだ。ガラスも無いような時代では伝染病の原因が特定できないのだから、昔の人々が祈祷などの神頼みで病気の治癒を願ったのも無理ない話かもしれない。
「確かに安土桃山時代、フランシスコ・ザビエルが日本でキリスト教を布教していた時期にガラス製法技術も伝えられ、日本国内でガラス製品が作られるようになったが……。実はそれ以前、ガラス作りについては弥生時代にはすでに日本国内で行われていたらしい」
「えっ!? 弥生時代って、土器とか作ってた時代じゃなかったっけ?」
「その弥生時代で間違いない。縄文時代と古墳時代の間が弥生時代だ」
「ああいう時代って稲作が始まったばかりだったり、住居は竪穴式住居とかそういうレベルで暮らしてたはずでしょ? そんな時代にガラス製品を作ってたなんて嘘でしょ!?」
土器を作って竪穴式住居で暮らしていた時代にガラス製品が作られていたなんて、私の中ではイメージが繋がらなさ過ぎて唖然とする。
「いや。弥生時代には、すでにガラス勾玉やガラス管玉、ガラス小玉などのいわゆるガラス製品をビーズ状の宝飾装飾品として首飾りなどにして身に付けていたようだ。貴人が埋葬されている古墳の埋葬品には鮮やかな青色や緑色のガラス製品が含まれていることがある」
「古墳から出土するような勾玉って、綺麗な石で出来てるのかと思ってたけど全部ガラス製だったの!?」
「もちろん古墳から出土したすべての勾玉がガラス製という訳じゃない。多くの古墳から発掘されている勾玉は翡翠や瑪瑙、琥珀、水晶などといった輝石を加工して作られている。獣の牙を加工して作った勾玉だったり、普通の石製や土器製などあらゆる素材の勾玉が作られていた。青銅製の金属勾玉というのも稀にあった。尤も金属製の勾玉は作られていたとしても錆びたり劣化しやすい為だろう。現存物が確認できるのはごくわずかだが……」
「ああ、槍や剣と違ってアクセサリーにするような勾玉のサイズだと小さいから、いったん錆び付いて長い年月が経つと原形をとどめておくのも厳しいでしょうね」
「尤も太平記の中では源頼政の鵺退治にあやかって、怪鳥を退治すれば良いと考えた公家たちが弓の名手である隠岐次郎左衛門広有に怪鳥退治を依頼し、隠岐次郎左衛門広有は紫宸殿の上にいた怪鳥を鏑矢で射貫いて退治し、時の天皇だった後醍醐天皇から恩賞として五位の位と因幡国、今で言う鳥取県東部にある荘園。そして『真弓』の姓を授かったそうだが……」
「つまり『怪鳥』が疫病の比喩なら、疫病は人間によって退治されたってこと?」
「いや、当時の医療レベルを考えれば、疫病が医学的に根治されたというのは考えにくい。何しろ医者の治療より、まじないや祈祷の効力があると信じられていたような時代だからな」
「今だと考えられないわね……」
人々が医者より、まじないや祈祷の方が効力があると考えていたなんて。現代に生きる私たちからすれば信じられない価値観だ。
「実際、当時の医学レベルが低かったから仕方ない面もある……。平安時代には赤痢や麻疹、天然痘のような伝染病がたびたび流行して、天皇や皇族、公家のような身分が高い者ですら流行病で命を落としていた時代だった。南北朝時代も流行病の蔓延を防げるほど医学が進歩していた訳ではないからな……」
「南北朝時代って、鎌倉時代の後で戦国時代の前よね?」
「戦国時代をいつからと定義するかにもよるが、後醍醐天皇によって鎌倉幕府が倒されたことで鎌倉時代が1333年に終焉を迎えた。そして1336年から南北朝時代が始まった。そのあと1339年に後醍醐天皇が崩御し、1392年に南北朝時代が終わる。朝廷が二つあった為、1336年から足利将軍家が京都の室町に幕府を置いていた室町時代が始まっていた。さらにその後、1573年から織田信長や豊臣秀吉、徳川家康らが活躍する安土桃山時代が始まる訳だから、一般的に安土桃山時代を戦国時代の始まりと定義する場合が多いことを考えれば南北朝時代が鎌倉時代の後で戦国時代、つまり安土桃山時代の前と考えて問題ないだろう」
「そっか……。日本にガラスが普及するのって、安土桃山時代になってからですものね。戦国時代の前じゃあ顕微鏡どころか、ガラスすら一般的じゃなかった時代なんだから医療のレベルが低くても仕方ないわね」
現代社会に生きる、私たちが伝染病の原因となる細菌やウイルスなどを認識できるのは電子顕微鏡のような最新の機器があってこそだ。ガラスも無いような時代では伝染病の原因が特定できないのだから、昔の人々が祈祷などの神頼みで病気の治癒を願ったのも無理ない話かもしれない。
「確かに安土桃山時代、フランシスコ・ザビエルが日本でキリスト教を布教していた時期にガラス製法技術も伝えられ、日本国内でガラス製品が作られるようになったが……。実はそれ以前、ガラス作りについては弥生時代にはすでに日本国内で行われていたらしい」
「えっ!? 弥生時代って、土器とか作ってた時代じゃなかったっけ?」
「その弥生時代で間違いない。縄文時代と古墳時代の間が弥生時代だ」
「ああいう時代って稲作が始まったばかりだったり、住居は竪穴式住居とかそういうレベルで暮らしてたはずでしょ? そんな時代にガラス製品を作ってたなんて嘘でしょ!?」
土器を作って竪穴式住居で暮らしていた時代にガラス製品が作られていたなんて、私の中ではイメージが繋がらなさ過ぎて唖然とする。
「いや。弥生時代には、すでにガラス勾玉やガラス管玉、ガラス小玉などのいわゆるガラス製品をビーズ状の宝飾装飾品として首飾りなどにして身に付けていたようだ。貴人が埋葬されている古墳の埋葬品には鮮やかな青色や緑色のガラス製品が含まれていることがある」
「古墳から出土するような勾玉って、綺麗な石で出来てるのかと思ってたけど全部ガラス製だったの!?」
「もちろん古墳から出土したすべての勾玉がガラス製という訳じゃない。多くの古墳から発掘されている勾玉は翡翠や瑪瑙、琥珀、水晶などといった輝石を加工して作られている。獣の牙を加工して作った勾玉だったり、普通の石製や土器製などあらゆる素材の勾玉が作られていた。青銅製の金属勾玉というのも稀にあった。尤も金属製の勾玉は作られていたとしても錆びたり劣化しやすい為だろう。現存物が確認できるのはごくわずかだが……」
「ああ、槍や剣と違ってアクセサリーにするような勾玉のサイズだと小さいから、いったん錆び付いて長い年月が経つと原形をとどめておくのも厳しいでしょうね」
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