22 / 62
22
しおりを挟む
「ビタミンを摂取することで免疫力がアップして、風邪にかかりにくい身体になるとか言うものね」
「そうだな。さいわい古墳時代や弥生時代にあったのに廃れたガラス製法技術と違って、茶に関しては明恵上人などが主導した栽培が上手くいった為、ガラス製法のように輸入頼りの材料が無くなるという事態にならなかったのも日本に茶が普及した要因だろう」
「私たちが今、お茶を普通に飲む習慣があるのは大陸からお茶を持ち帰ってくれた明菴栄西や、お茶の栽培に成功してお茶を飲む習慣を広めてくれた明恵上人みたいなお坊さんのおかげだったのね」
「明菴栄西が亡くなったのは1215年。74歳で死去していることから当時としては非常に長生きをしたといえる。明菴栄西は71歳になった晩年。1211年に喫茶養生記という茶の効能や製法を綴った書を当時、将軍だった源実朝に献上している。室町時代から茶の文化が武家に広まり、安土桃山時代に定着していたのは明菴栄西や明恵上人のように茶の文化を広めようとした僧の存在が大きいだろうな」
「74歳……。明菴栄西って当時としては、ずいぶん長生きしたのね……。お茶の効能も大きかったのかしら?」
二十代半ばが平均寿命だった時代に74歳まで生きていたというのは、かなり珍しかったのではなかろうか。
「平安時代や鎌倉時代は人体に必要な栄養の概念なども碌に無かった頃だ。そういう時代にいち早くお茶を飲む習慣を作ってビタミンなどの栄養を摂取していたなら、当時としては異例の長寿だったことに関係がないとは言えないだろうな」
「明菴栄西は、自分の寿命でお茶の栄養や有用性を証明したともいえるわね」
今でもお茶は健康に良い飲み物として日本人に親しまれ、最近では海外でも『グリーンティ』という名称で抹茶味のお菓子や抹茶そのものが人気だ。昔から、その効能が実証されていたというのは素晴らしいことだと思ったが、何故か兄は顔に影を落とした。
「大陸からもたらされた物には茶文化など良い点もあったが、弊害もあった……」
「弊害?」
「飛鳥時代から日本に仏教文化が伝わると同時に奈良時代などは肉食を禁止するということが、たびたびあった。その為に人間が生きていく上で必要な、動物性たんぱく質などの栄養素が不足して人々は慢性的な栄養失調になっていたようだ。当時、結核や脚気が原因で亡くなる者が多かったり、平均寿命が低かった理由の一つだろう」
「ただでさえ医療のレベルが低いのに肉食まで禁止して栄養不足な状態になってるんじゃあ、流行り病で大量に人が死んでいたのも無理ない話だったのね……」
大陸から仏教文化が取り入れられたことで芸術や文化、学門などで大きな利点があった反面、仏教の教えを忠実に守ろうとした結果、肉食を禁止して栄養不足になっていたとは思わなかった。しかも、医療が発達していない時代にそんな無茶を国主導でやっていたというのは無謀にもほどがある。
『無知は罪』という言葉があるが、まさに人体に必要な栄養素を知らないという無知ゆえに肉食を禁止して、人々が栄養失調や病気で死んでいたというのだから肉食禁止を指示したであろう当時の偉い人が知らなかったとはいえ、無知ゆえにどれだけの人々が衰弱したり被害を受けたのかと考えるとゾッとする話だ。
「尤も完全に肉食禁止というのは浸透しなかったようで、いつの頃からか隠語で猪肉を牡丹、鹿肉を紅葉、馬肉を桜、鶏肉を柏と呼び、薬膳として食べているということもあったようだ」
「ああ~。牡丹鍋とか紅葉鍋とかは聞いたことあるわ! てっきり肉の色が由来かと思っていたけど、肉食が禁止されていた時代の名残だったのね!」
猪鍋や鹿鍋の際に薄切りした生肉を大皿に盛りつける際、花に見立てて美しく盛り付けていたから色や形から肉を花の名前で呼んでいたのかと思っていたけど、まさか隠語だった名残がそのまま今の時代でも定着していたとは思わなかった。
「まぁ、由来については肉の色と隠語であったこと両方かもしれないが、何せ肉食が禁止されていた時代の隠語ということで、この呼び方になったというはっきりした時期や由来については残念ながら分からない。江戸時代には完全に定着していた呼び方なのは間違いないようだが……」
「そうだな。さいわい古墳時代や弥生時代にあったのに廃れたガラス製法技術と違って、茶に関しては明恵上人などが主導した栽培が上手くいった為、ガラス製法のように輸入頼りの材料が無くなるという事態にならなかったのも日本に茶が普及した要因だろう」
「私たちが今、お茶を普通に飲む習慣があるのは大陸からお茶を持ち帰ってくれた明菴栄西や、お茶の栽培に成功してお茶を飲む習慣を広めてくれた明恵上人みたいなお坊さんのおかげだったのね」
「明菴栄西が亡くなったのは1215年。74歳で死去していることから当時としては非常に長生きをしたといえる。明菴栄西は71歳になった晩年。1211年に喫茶養生記という茶の効能や製法を綴った書を当時、将軍だった源実朝に献上している。室町時代から茶の文化が武家に広まり、安土桃山時代に定着していたのは明菴栄西や明恵上人のように茶の文化を広めようとした僧の存在が大きいだろうな」
「74歳……。明菴栄西って当時としては、ずいぶん長生きしたのね……。お茶の効能も大きかったのかしら?」
二十代半ばが平均寿命だった時代に74歳まで生きていたというのは、かなり珍しかったのではなかろうか。
「平安時代や鎌倉時代は人体に必要な栄養の概念なども碌に無かった頃だ。そういう時代にいち早くお茶を飲む習慣を作ってビタミンなどの栄養を摂取していたなら、当時としては異例の長寿だったことに関係がないとは言えないだろうな」
「明菴栄西は、自分の寿命でお茶の栄養や有用性を証明したともいえるわね」
今でもお茶は健康に良い飲み物として日本人に親しまれ、最近では海外でも『グリーンティ』という名称で抹茶味のお菓子や抹茶そのものが人気だ。昔から、その効能が実証されていたというのは素晴らしいことだと思ったが、何故か兄は顔に影を落とした。
「大陸からもたらされた物には茶文化など良い点もあったが、弊害もあった……」
「弊害?」
「飛鳥時代から日本に仏教文化が伝わると同時に奈良時代などは肉食を禁止するということが、たびたびあった。その為に人間が生きていく上で必要な、動物性たんぱく質などの栄養素が不足して人々は慢性的な栄養失調になっていたようだ。当時、結核や脚気が原因で亡くなる者が多かったり、平均寿命が低かった理由の一つだろう」
「ただでさえ医療のレベルが低いのに肉食まで禁止して栄養不足な状態になってるんじゃあ、流行り病で大量に人が死んでいたのも無理ない話だったのね……」
大陸から仏教文化が取り入れられたことで芸術や文化、学門などで大きな利点があった反面、仏教の教えを忠実に守ろうとした結果、肉食を禁止して栄養不足になっていたとは思わなかった。しかも、医療が発達していない時代にそんな無茶を国主導でやっていたというのは無謀にもほどがある。
『無知は罪』という言葉があるが、まさに人体に必要な栄養素を知らないという無知ゆえに肉食を禁止して、人々が栄養失調や病気で死んでいたというのだから肉食禁止を指示したであろう当時の偉い人が知らなかったとはいえ、無知ゆえにどれだけの人々が衰弱したり被害を受けたのかと考えるとゾッとする話だ。
「尤も完全に肉食禁止というのは浸透しなかったようで、いつの頃からか隠語で猪肉を牡丹、鹿肉を紅葉、馬肉を桜、鶏肉を柏と呼び、薬膳として食べているということもあったようだ」
「ああ~。牡丹鍋とか紅葉鍋とかは聞いたことあるわ! てっきり肉の色が由来かと思っていたけど、肉食が禁止されていた時代の名残だったのね!」
猪鍋や鹿鍋の際に薄切りした生肉を大皿に盛りつける際、花に見立てて美しく盛り付けていたから色や形から肉を花の名前で呼んでいたのかと思っていたけど、まさか隠語だった名残がそのまま今の時代でも定着していたとは思わなかった。
「まぁ、由来については肉の色と隠語であったこと両方かもしれないが、何せ肉食が禁止されていた時代の隠語ということで、この呼び方になったというはっきりした時期や由来については残念ながら分からない。江戸時代には完全に定着していた呼び方なのは間違いないようだが……」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる