45 / 62
45
しおりを挟む
「そうだ。ライフル銃で一発、エゾ鹿に当てた程度だと当たった部位によっては、手負いの鹿にそのまま逃げられてしまう。しかし散弾銃なら、ダメージが広範囲でそのまま逃げられる確率は低い。だから当初は僕も散弾銃を使っていたけど笹野さんから万が一、宿泊客が食べる肉に弾丸の欠片が混入したら大変なことになるからと言われて、散弾銃の使用は辞めて最近はライフル銃を使っているんだ」
ふてくされたような顔で金森さんが語るのを聞きながら思い出す。確かその話もここに来た初日の晩、金森さんはしていた。以前は散弾銃を使用していたけど、最近はライフル銃を愛用していると。
私や兄に対してはライフル銃で集中してエゾ鹿を仕留めるのだと言っていたけど、どうやら本当は人が食べる鹿肉に鉛弾の欠片が混入するのを防ぐため、散弾銃からライフル銃に切り替えていたようだ。
「笹野さんはオーナーである金森の飼い犬が死んだとき、猟銃で狩った鹿の体内に弾丸が残っているんじゃないかということと、鹿の死肉を犬が口にして弾丸を食べてしまった可能性が脳裏によぎったそうだ。しかし、もし自分の撃った猟銃の弾丸が原因で愛犬が死んだという事実がはっきりすれば、オーナーである金森や婚約者を悲しませてしまうと考え、その考えを告げることはできなかったそうだ」
「すいません……。私がちゃんとオーナーに言うべきだったんです。でも、まさか弾丸が毒になって他の生物まで死んでいたなんて……」
悲しそうな顔でうなだれる笹野絵里子さんを、沖原沙織さんは複雑そうな表情で見つめている。沖原沙織さんがこのペンションで婚約者の金森さんとディナーを食べていた時に調理担当の笹野絵里子さんが、まかないで麺類を食べるのはおかしいと難癖つけていたが、笹野絵里子さんが鹿肉を食べなかった原因は鹿肉に弾丸の欠片が混入していたのを見てしまったことによる一種の恐怖症状態になっていたからだったんだ。
私や兄は完全に沖原沙織さんが猜疑心の目で笹野絵里子さんを見ていることで、被害妄想じみた考えに陥っているのだろうと思っていたけど、笹野絵里子さんの方は自分が口にするのをためらう鹿肉を何も知らない沖原沙織さんに出しているという後ろめたさのような気持ちもあって、挙動不審な行動もあったのかもしれない。だからこそ、沖原沙織さんは笹野絵里子さんが怪しいと睨んでしまったのではないだろうか。
笹野絵里子さんは弾丸の素材が鉛という事実までは気づいていなかったようだけど、もし気付いていたら鉛が体内に入れば猛毒と化し、中毒症状を起こすという事実にもっと強いトラウマを抱える羽目になっていただろう。
ふてくされたような顔で金森さんが語るのを聞きながら思い出す。確かその話もここに来た初日の晩、金森さんはしていた。以前は散弾銃を使用していたけど、最近はライフル銃を愛用していると。
私や兄に対してはライフル銃で集中してエゾ鹿を仕留めるのだと言っていたけど、どうやら本当は人が食べる鹿肉に鉛弾の欠片が混入するのを防ぐため、散弾銃からライフル銃に切り替えていたようだ。
「笹野さんはオーナーである金森の飼い犬が死んだとき、猟銃で狩った鹿の体内に弾丸が残っているんじゃないかということと、鹿の死肉を犬が口にして弾丸を食べてしまった可能性が脳裏によぎったそうだ。しかし、もし自分の撃った猟銃の弾丸が原因で愛犬が死んだという事実がはっきりすれば、オーナーである金森や婚約者を悲しませてしまうと考え、その考えを告げることはできなかったそうだ」
「すいません……。私がちゃんとオーナーに言うべきだったんです。でも、まさか弾丸が毒になって他の生物まで死んでいたなんて……」
悲しそうな顔でうなだれる笹野絵里子さんを、沖原沙織さんは複雑そうな表情で見つめている。沖原沙織さんがこのペンションで婚約者の金森さんとディナーを食べていた時に調理担当の笹野絵里子さんが、まかないで麺類を食べるのはおかしいと難癖つけていたが、笹野絵里子さんが鹿肉を食べなかった原因は鹿肉に弾丸の欠片が混入していたのを見てしまったことによる一種の恐怖症状態になっていたからだったんだ。
私や兄は完全に沖原沙織さんが猜疑心の目で笹野絵里子さんを見ていることで、被害妄想じみた考えに陥っているのだろうと思っていたけど、笹野絵里子さんの方は自分が口にするのをためらう鹿肉を何も知らない沖原沙織さんに出しているという後ろめたさのような気持ちもあって、挙動不審な行動もあったのかもしれない。だからこそ、沖原沙織さんは笹野絵里子さんが怪しいと睨んでしまったのではないだろうか。
笹野絵里子さんは弾丸の素材が鉛という事実までは気づいていなかったようだけど、もし気付いていたら鉛が体内に入れば猛毒と化し、中毒症状を起こすという事実にもっと強いトラウマを抱える羽目になっていただろう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる