断罪するのは天才悪女である私です〜継母に全てを奪われたので、二度目の人生は悪逆令嬢として自由に生きます

紅城えりす☆VTuber

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断罪、そして回帰

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「あら、やっと気づいたの?」

 メアリーは、高台に上り赤いスカートをなびかせながら高らかに笑った。

「世に蔓延る悪は全て【徹底的に断罪】して、ざまぁと見下してあげる」

 足元で許しを乞うのは許されざる悪党たち。

 卑怯?
 これが悪女の流儀マナーよ。


***


 冷たい、怖い、寂しい。

 だれか助けて。

 苦しみの終わりが見えないの。




「厄災の魔女メアリー・ターレンバラ。一族を呪い、我が帝国を滅ぼそうとした罪で貴様を処刑する」



 木槌の音が鳴り響き、メアリーの手に枷がつけられたのは昨日のことである。

 『厄災の魔女が人間の治める帝国を滅ぼす』

 そのような予言が下されたのは一年前のことであり、メアリーは『魔女』として処刑されることになってしまったのだ。

 ただ失望した瞳で牢屋の窓から月を眺めるメアリー。背の裏まで伸びた彼女の銀髪は、月光に照らされオパールのように輝いている。

 肌は雪花のように白く、瞳は琥珀色。
 整った顔は蝋人形のよう。
 彼女の姿を見た者は口を揃えてこう言うだろう。
 
 美しい……と。

 静かで冷たい独房の中で、ただ一人運命を呪うメアリーの前に現れたのは、華やかな黄色のドレスをまとった女性である。

 長くウェーブがかった金髪。透き通った瞳は虹色。まさに美女と呼ぶべき姿だが、メアリーとは似ても似つかない。

「あぁ、悲しいわ。まさかターレンバラに汚らわしい魔女が居ただなんてね。しかも娘だなんて」

「お義母かあ様。つまらない嘘で聖人面をするのは、おやめになったら?」

「うそ? この私が嘘ですって?」

 メアリーの義母であるフィネラは、可愛らしく首をかしげながら聞き返す。

「裁判長はターレンバラの使用人や兄の気が触れたり、目が充血した様子を見て、魔女である私が呪いをかけたとおっしゃったけど、実際はお義母様が全て仕組んだのでしょう?」

「なにを言っているのか分からないわ。あぁ、可哀想な子。きっと悪魔に心を蝕まれたのね」

「可哀想なのは貴方の方よ。まず皆の体調が、おかしくなったのはお義母様が毒を盛ったから。使われた毒は……ベラドンナ、マンドラゴラ、トリカブトってところね」

「メアリー、本当に私が犯人だと思うなら、法廷で証言すれば良かったのに」

「えぇ、全て証言したわ。だけど無理だった。なぜならば銀髪は不吉の象徴だって迷信があるから」

 牢屋に風が入り、メアリーの銀髪がなびく。

「そう、残念ね」

「残念だなんて微塵も思ってないでしょう? 今まで散々、私を騙して利用してきたくせに……いざ、邪魔になったら排除するのね」

 メアリーの小さな声が届いていないフィネラは、表情ひとつ変えず話続ける。

「でも安心して。魔女の処刑は昔から火あぶりだって決まっているけど、貴方は特別にギロチンにして貰えるみたいだから」

 フィネラはニッコリ微笑みながら、牢屋の前から立ち去る。



「さようなら、メアリー。今まで役に立ってくれてありがとう。


 メアリーは喚くこともなく、ただ自身に濡れ衣を着せ、処刑に導いた張本人を見つめていた。

 変ね、憎しみが湧かないわ。ただ胸の内で眠るのは悲しみと失望だけ。

 今度は全身を黒ローブで包まれた男が姿を現す。

「レディ・メアリー。君は……悔しくないのかな?」

 メアリーは男を見上げながら淡々と答えた。

「もちろん悔しいわ。だけど、これ以上、私になす術はないもの。強いて言うなら偽の魔女を処刑したことで我が国が滅ぶ様を見られないことが残念ね」

「へぇー、君一人じゃなんとかできないのなら僕が力を貸してあげよう」

 男はフードの下でニヤケてから、砂時計を取り出した。

「君。もし時間を巻き戻せるとしたら何をやりたい?」

 メアリーは目を閉じて、考える素振りを見せる。ちょこんと座りながら、静かに熟考する彼女の姿はマリオネットのようであった。

「そうね、もし時間を巻き戻せるなら私……良い子をやめるわ」

「へぇ……」

「今まで、お義母様から『良い子にしていなさい』と言われていたから、彼女の命令はなんでも聞いたし、髪の毛だって染めてきた。だけど、もし二度目の人生があるなら良い子なんてやめたいの」

 男はニヤケながらローブの下から、小さなネックレスを取り出した。

 ネックレスの先には小さな砂時計がつけられていて、ガラスの中では虹色の液体が流動している。

「いいね、気に入ったよ。僕が時間を巻き戻してあげよう。代わりに面白いものを見せてくれ」

「どうして私なんかを助けてくれるの。今までお義母様の命令に従って人を傷つけてきた私なんかを」

「だからこそだよ。あの女にを見せてやるんだ」

 あぁ、分かった。
 貴方の求めていることが。
 メアリーは小さく笑いながら、優雅に立ち上がった。

 もうメアリーの中に”絶望”と”諦め”など存在しない。
 あるのは”愉悦”と”希望”だけ。

「いいわ。お望み通り見せてあげる生まれ変わった私の復讐劇を」

 お義母様。覚悟はよろしくて?
 私はもう貴方のお人形ではないわ。
 本物の悪女よ。
 貴方に復讐恐ろしい悪女になるの。

 砂時計がひっくり返され、時間が巻きもどる。

 最後に男がフードを外し、素顔を見せる。
 メアリーと同じ銀髪に、蝋人形のごとく整った顔。緑色の瞳は虹色の光沢を放っている。

 人間だとは思えないほどの美貌。

「さぁ、全てを変えてくれ。君の運命と、帝国の未来を」



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