断罪するのは天才悪女である私です〜継母に全てを奪われたので、二度目の人生は悪逆令嬢として自由に生きます

紅城えりす☆VTuber

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グリンダの兄

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 ラングスレッタ家の大広間。高価そうな絵画や、壺、花飾りで彩られている空間を、オーケストラの音楽が包んでいた。

 使用人の数も、いつもより多く、ラングスレッタ子爵が客人に経済力を見せつけようと、あれこれ努力していたことが伝わってくる。

 オーケストラが絶え間なく響き渡る中、客人の紳士、令嬢は、ビュッフェ式の食事を楽しみながら舞踏会を楽しんでいた。

 六曲目の音楽が流れ始めてから五分が経ち、酒を飲みながら噂話をする人々の視線は段々と”ある二人組”の元に集まり始めた。

 それは、パーティの”花”であるグリンダと、美しい紳士の二人組であった。

 二人の容姿から、一挙一動に至るまで洗練された動きは見る人々を魅了した。

「あの紳士どなたかしら?」

「見たことが無い方ね」

「後で名前を伺わないと」

「容姿は素敵だし、あとは家督が継げる長男なら完璧よね」

 そわそわとする娘たちの存在に気づいた、紳士は「ん?」と言わんばかりに首を傾げる。
 まるで小悪魔のような対応に、令嬢たちの黄色い悲鳴が上がったことは言うまでもない。

 やがて、ダンスが終わりグリンダと紳士が喫茶室へお菓子を摘みに行く。
 なにやら楽しげに話している二人の姿を見て、令嬢たちは悔しそうに奥歯を噛み締めた。

「ねぇ、見た?」

「あの二人。そのままティールームに入ったわ」

「ということは初対面ではないのよね?」

「くやしぃー、グリンダ嬢より早く、あの方に出会いたかったわ」

 ダンスパーティにおいて初対面の男女はむやみに言葉を交わしてはならない。
 話したり、散歩をして楽しむことができるのは三回踊ってからだ。


***


 時は一時間前に戻る。

 大広間の入口で、来客に挨拶をしているのはグリンダと長男であるアンソニーであった。

「ミス・グリンダ。お誕生日おめでとうございます」

「ありがとうございます。どうぞ、ゆっくりと楽しんで下さい」

 グリンダの前で、優雅に礼をする紳士が一人。茶色の紳士服に、質のいいシルクハットを被った男は、ニッコリ微笑んでからグリンダの前を立ち去る。

 心做しか紳士の姿を見たグリンダの表情も、柔らかくなった。

「知っているヤツか?」

 アンソニーがグリンダに尋ねる。

「いいえ、初めてお会い致しましたわ」

 ニコニコと笑うグリンダの様子をアンソニーは気に入らないと言わんばかりの目つきで見つめていた。

 パーティが始まった後、しばらくして茶色の紳士服をまとった男がグリンダをダンスに誘った。

 二人が踊るさまに人々は魅了され、グリンダの表情もいつもより明るかった。

 ダンスが終わると、二人はティールームへ移る。

 人脈を広げたい貴族たちが、楽しげに言葉を交わす中。グリンダと紳士は、マフィンをつまみながら談笑していた。

「グリンダは社交場が、あまり好きではないようだね」

「どうして、そう思うの?」

「だって僕が、ダンスに誘うまで君は周囲を警戒しているような素振りを見せていたからね。笑顔もぎこちないし」

 グリンダが赤面する。

「嘘、私って、そういうふうに見えていたの?」

「誰にだって苦手なことはあるし仕方ないよ。それより、僕は今のような『ありのままのグリンダ』が好きだよ。無理して取り繕っていない、今の君がね」

「……、貴方って本当に……ね」

 親しげに話す二人。
 物陰から忌々しそうに見つめるアンソニーの姿には気づいていないようであった。

 




 
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