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父との交渉
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昼は皇子二人に遭遇して、帰ってきたら後は使用人虐めの疑いをかけられる。
しかも使用人の子は不審な死を遂げていた……。
肉体的にも、精神的にも疲れる一日だったわ。
さっさと、お父様に今日の報告を終わらせて寝ましょう。
執事に父であるクリスの所在を聞き、執務室に向かう。扉をノックすると「入れ」というクリスの声が耳に届いた。
「お父様、失礼します」
執務室に入ると、クリスが手紙に封をするため便箋の上に蝋を流していた。
「命じられた通りモルガナ教会への寄付がどのように使われているか調べて参りました」
「ご苦労であった。それで、なにか不審な点はあったか?」
「寄付金の使い先――つまり、支出に異常はありませんでした。しかし……」
封筒を見下ろしていたクリスが、顔を上げる。
「収入の帳簿におかしな点がありました。教会の神官が不法な商売に手を染めている可能性があります。しかも、神に使えるものとして、あるまじき方法で」
「話してみなさい」
メアリーは順を追いながらクリスに、自身の推測を話す。ただし魔法を使って帳簿を複製したことだけは伏せておくことにした。
きっとクリスに魔法が使えるようになったことを話したら、フィネラにも伝わってしまうわ。切り札は、いざという時のために隠しておかないと。
もし私がメギスから魔法を教わっていることを彼女が察していても、せめて使える魔法の種類ぐらいは隠したい。
「ふむ……」
一通り話を聞き終えたクリスは腕を組んで、なにやら考え始めた。
「信じ難い話であることは理解しています。お父様も一日執務でお疲れのところ、このような話をしてしまい申し訳ございません」
「いや、構わん。お前の主張は十分理解出来る」
良かった。
どうやら父に叱責された上に、呆れられる結末は避けられたようだ。
「お父様。この件については私が引き続き調査致します。できれば彼らへの懲罰も私に任せていただけると嬉しいです」
「メアリー、お前の熱意は十分に伝わった。だから、この件については望みどおりお前に一任しよう」
「ありがとうございます。必ずご期待に応えます」
「ただし条件がある」
クリスは席から立ち上がり、私の前に立った。
「今、お前が持っている証拠だけでは神官どもを罰するには不十分だ。上に立つものが裁きを下すためには、ふさわしい”理由”が理由が必要となる」
かつて我が帝国には平民を理不尽な理由で罰し続けた貴族が居た。彼らは最終的に、人々からの信用を失い、爵位も奪われてしまった。
ようするにクリスが言いたいことは「ターレンバラ家にも同じような結末を辿らせるな」ということだろう。
重々承知している。
「はい、もちろん。ターレンバラの名に恥じない結果をお父様に差し上げます」
「よろしい」
目的は達成したので執務室の扉へと向かったが、ふとクリスに尋ねたい質問が浮かんだ。
「お父様、一つ質問してもよろしいでしょうか?」
「構わないよ。なんだね?」
「私は本当にお父様とお母様の子供ですよね?」
クリスが片眉を吊り上げる。
「どうして、そのようなことを聞く?」
「不安なのです。私が今年の予言に出てきた『魔女』なのではないかと……我がターレンバラの血筋に私が知る限り銀髪の者はいません。ですから、私の正体が偶然お父様とお母様の元に届いた妖精の取り替え子ではないかと」
メアリーは顔を手で覆い、すすり泣く。
むろん、演技である。
「よく聞きなさい。お前は確かに私たちの娘だ。妖精ではない」
指の隙間から見えるクリスの表情は、ひどく困惑していた。
まだなにか隠しているわね。
「妖精ではないですが……だからといって人間でもないと?」
「ちっ、違う。それは……」
クリスがたじろき始める。
よし、あと一押し!
「お父様、私はもう適齢期です。つまり大人です。どのような真実であれ受け止める覚悟はあります」
「メアリー、本当にいいのかね?」
「はい」
クリスは観念したようにため息をついた。
「お前が産まれたばかりの赤子であったとき。息をせず、心臓は動いていなかった」
今まで余裕そうな表情をしていたメアリーが、目を見開いた。
「死産だったんだよ」
しかも使用人の子は不審な死を遂げていた……。
肉体的にも、精神的にも疲れる一日だったわ。
さっさと、お父様に今日の報告を終わらせて寝ましょう。
執事に父であるクリスの所在を聞き、執務室に向かう。扉をノックすると「入れ」というクリスの声が耳に届いた。
「お父様、失礼します」
執務室に入ると、クリスが手紙に封をするため便箋の上に蝋を流していた。
「命じられた通りモルガナ教会への寄付がどのように使われているか調べて参りました」
「ご苦労であった。それで、なにか不審な点はあったか?」
「寄付金の使い先――つまり、支出に異常はありませんでした。しかし……」
封筒を見下ろしていたクリスが、顔を上げる。
「収入の帳簿におかしな点がありました。教会の神官が不法な商売に手を染めている可能性があります。しかも、神に使えるものとして、あるまじき方法で」
「話してみなさい」
メアリーは順を追いながらクリスに、自身の推測を話す。ただし魔法を使って帳簿を複製したことだけは伏せておくことにした。
きっとクリスに魔法が使えるようになったことを話したら、フィネラにも伝わってしまうわ。切り札は、いざという時のために隠しておかないと。
もし私がメギスから魔法を教わっていることを彼女が察していても、せめて使える魔法の種類ぐらいは隠したい。
「ふむ……」
一通り話を聞き終えたクリスは腕を組んで、なにやら考え始めた。
「信じ難い話であることは理解しています。お父様も一日執務でお疲れのところ、このような話をしてしまい申し訳ございません」
「いや、構わん。お前の主張は十分理解出来る」
良かった。
どうやら父に叱責された上に、呆れられる結末は避けられたようだ。
「お父様。この件については私が引き続き調査致します。できれば彼らへの懲罰も私に任せていただけると嬉しいです」
「メアリー、お前の熱意は十分に伝わった。だから、この件については望みどおりお前に一任しよう」
「ありがとうございます。必ずご期待に応えます」
「ただし条件がある」
クリスは席から立ち上がり、私の前に立った。
「今、お前が持っている証拠だけでは神官どもを罰するには不十分だ。上に立つものが裁きを下すためには、ふさわしい”理由”が理由が必要となる」
かつて我が帝国には平民を理不尽な理由で罰し続けた貴族が居た。彼らは最終的に、人々からの信用を失い、爵位も奪われてしまった。
ようするにクリスが言いたいことは「ターレンバラ家にも同じような結末を辿らせるな」ということだろう。
重々承知している。
「はい、もちろん。ターレンバラの名に恥じない結果をお父様に差し上げます」
「よろしい」
目的は達成したので執務室の扉へと向かったが、ふとクリスに尋ねたい質問が浮かんだ。
「お父様、一つ質問してもよろしいでしょうか?」
「構わないよ。なんだね?」
「私は本当にお父様とお母様の子供ですよね?」
クリスが片眉を吊り上げる。
「どうして、そのようなことを聞く?」
「不安なのです。私が今年の予言に出てきた『魔女』なのではないかと……我がターレンバラの血筋に私が知る限り銀髪の者はいません。ですから、私の正体が偶然お父様とお母様の元に届いた妖精の取り替え子ではないかと」
メアリーは顔を手で覆い、すすり泣く。
むろん、演技である。
「よく聞きなさい。お前は確かに私たちの娘だ。妖精ではない」
指の隙間から見えるクリスの表情は、ひどく困惑していた。
まだなにか隠しているわね。
「妖精ではないですが……だからといって人間でもないと?」
「ちっ、違う。それは……」
クリスがたじろき始める。
よし、あと一押し!
「お父様、私はもう適齢期です。つまり大人です。どのような真実であれ受け止める覚悟はあります」
「メアリー、本当にいいのかね?」
「はい」
クリスは観念したようにため息をついた。
「お前が産まれたばかりの赤子であったとき。息をせず、心臓は動いていなかった」
今まで余裕そうな表情をしていたメアリーが、目を見開いた。
「死産だったんだよ」
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