断罪するのは天才悪女である私です〜継母に全てを奪われたので、二度目の人生は悪逆令嬢として自由に生きます

紅城えりす☆VTuber

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メアリー

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「そんなはずは……では、どうして今の私は心臓が動いているのですか? 死産の後、黒魔術で作られた生きた屍アンデッドになってしまったとでもおっしゃるのですか?」

 混乱した様子で叫ぶメアリーを見つめるクリスは、両手の拳を握りしめた。

「まずは今までお前に黙っていたことを謝ろう。これから話すのはお前が産まれた日の出来事だ」

 そう言ってクリスが語り出したのは、今から遠い昔の話――。





 お前の母親、グレイスはターレンバラ家に嫁いだときから病弱だった。

 だから、医者には「子供は産めないだろう」と言われていたのだ。

 私も彼女に「自分の身を大切にしなさい。私のために危険を犯す必要はない」と伝えていたが、結局、彼女は無理を承知でお前を産んだ。

 しかし、無事に産まれてきた――と思われていた、お前は息をしていなかった。

 万が一の時に備えて屋敷に呼んでいた魔道士によれば産まれつき、お前の魂には欠陥があったらしい。

 そこで私は頼んだ。

「なんとかして娘を助けてもらえないか?」

 グレイスが命を賭してまで産んでくれた娘だ。彼女を泣かせるような結果で終わらせたくなかった。

 すると魔道士は言った。

「助ける方法はあるが、いつか必ず対価を払うことになる」

「それでも良い。娘を助けるためならどんな対価でも支払おう」

 私が懇願すると魔道士は、お前の亡骸を預かって屋敷の台所で魔法薬を作り始めた。それから、半日後。お前はやっと産声を上げてくれたんだ。

 あの日は多分、私とグレイスにとって人生で最高の日になったと思う。
 何度泣いて喜んだことか。

 しかし、喜んでいられたのは束の間。

 魔道士は姿を消してしまい、彼の言う”対価”とななにか聞き出せなかったんだ。

 その上、グレイスはこの後息を引き取ることになった。




 いつものメアリーなら、まず「支払う代償を知らずに契約なんてしたの?」などと考えるであろう。

 だが、今は”怪しい取引をしてくれてまで私を助けてくれたことへの感謝”と”自身の正体を知ったことで生じた複雑な心境”が入り交じっていた。

 むしろ、後者の方が大きいぐらいだ。

「教えて下さり、ありがとうございます。頭が混乱しているので少しばかり情報を整理する時間を下さい」

「分かった。部屋で休んできなさい」

 メアリーはなにも返事をせず、弱々しい足取りで部屋に戻る。

 侍女の手を借りず、さっさとドレスからネグリジェに着替えてベッドに入った。

 髪飾りを全て外し、両肩から垂れる己の髪を眺めながらメアリーは頭を抱えた。

 私は怪しい魔法によって生を賜った存在。

 もしかして私がメギスが驚くほどの魔力を持っている原因と関係があるのだろうか?

 それよりも、『魔女』ではないことを証明するために回帰したのに……。

 これでは、どのみち私はバケモノような存在ではないか。

 自分の正体が分からないことが、ここまで辛いだなんて。

 両目から涙が溢れてきた。
 泣いたところで、なにも事態は好転しないのに。
 何度も何度も涙を拭いているうちにまぶたが重くなってきて、メアリーは深い眠りに落ちた。


***


 メアリーは気づくと森の中にいた。
 前方には透き通った湖があって、金色の蝶々が舞っていた。足元には地面から生えた宝石がキラキラと輝いている。

「変な森ね。まるで絵本の世界みたい」

「当たり前よ。だって貴方の夢だもの」

 隣から突然女性の声が響く。
 視線を右隣に移すと、美しい女性が立っていた。髪は地面に着きそうなぐらい長い銀髪で、まとっているドレスはブルー。
 彼女の背中からは虹色の羽が生えていた。

「どうして泣いているの? メアリー」

「貴方……妖精?」

「大丈夫よ。怖いことはなにもしないから」

 名も知らぬ妖精は眩しい笑顔を浮かべた。偽善に満ちたフィネラのものとは違う。母親のような暖かい笑顔だ。

「私が泣いているのは……自分がバケモノだって分かったから」

「あら、誰がそんなこと言ったの?」

 妖精はメアリーの頭を撫でる。

「それは貴方が勝手に思い込んでいることでしょう?」

「それはそうだけど……」

「心配ならメギスやグリンダちゃんに聞いてみなさいな」

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