断罪するのは天才悪女である私です〜継母に全てを奪われたので、二度目の人生は悪逆令嬢として自由に生きます

紅城えりす☆VTuber

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公爵邸へ

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「お嬢様、やはりこちらのシンプルなドレスがよろしいかと」

「ダメよ。華やかさに欠けるわ。相手は公爵閣下プリンスなのよ」

「だからといって貴方が持ってきたお召し物は、足元の装飾が多すぎよ。お嬢様が歩きづらいじゃない!」

 今日のターレンバラ家は朝から騒がしい。

 メアリーの部屋では上級メイドが何人も集まって、ウィリアムの屋敷に出かける際に着る服選びをしていた。

 普段、メアリーの部屋にここまで人が集まることはない。

 しかし、主人の外出先が公爵邸だと知った彼女たちは、意地でもメアリーを”どんな男でもイチコロにできる姿”にするつもりらしく、各々アクセサリーやドレスを選んで論争を始めたのだ。

 あまりにも騒ぎが大きくなったためか、時々下級メイドがチラホラ様子を見に来ていた。

 結局、選ばれた服を着るのは私なのにね……。

 メアリーは少し呆れつつ、彼女たちが己のために一生懸命ドレス選びをしてくれていることを内心喜んでいた。

「はいはい、みんなありがとう。決めたわ、ドレスはシンプルな物を準備して。アクセサリーは閣下から頂いた耳飾りと、琥珀色のリボンをお願い」

 メアリーが手を叩きながら、論争に終止符を打つ。案が採用されたメイドは「良くお似合いですよ!」と笑顔で呟いたが、逆に不採用となったメイドは眉を八の字にした。

 ドレスアクセサリー共に多数派の意見と、少数派の意見。両方取り入れたつもりだったけど、やっぱり全ての意見が通らない子もいるわよね。

「今回、私がシンプルなドレスを選んだのは閣下から頂いた耳飾りを映えさせるためよ。私と会った時に、まず頂いた耳飾りに視線を誘導できれば印象を良くできるわ。それでも、あからさまに装飾がシンプルすぎると悪印象を与えるから、金飾りのついたリボンでバランスを取るってワケ」

 メアリーがさらりと述べた意見に、全ての使用人が言葉を失う。
 偶然通りかかった使用人頭スチュワートも同様であった。

「これが私の意見だけど、反対する子はいる?」

 メイドたちはお互いに顔を合わせ、数秒後、一斉に首を横に振った。



***


「こちらは南部産の紅茶ですが、口に合うでしょうか?」

「えぇ、少し渋みがありますが甘いケーキと味わうにはピッタリですね」

「では砂糖を多めに使った菓子を用意させましょう」

 澄んだ青空の下。
 公爵邸の庭にあるガゼボの中で、メアリーとウィリアムはアフタヌーンティーを味わっていた。

 ウィリアムは爽やかな笑みを浮かべている一方、メアリーは一生懸命、笑顔を崩すまいと努めていた。

  はじめて公爵邸の中に入ったメアリーは、驚きを隠すことができなかった。

 明らかにターレンバラ家の物よりも豪華そうな銀食器。シェフの腕がどれだけ高いのか素人のメアリーでも分かるほど絶品な茶菓子。

 これが皇族の持つ財力なのだと実感させられる。

「閣下は休日、こうしてよくアフタヌーンティーを楽しまれるのですか?」

「いえ、今日は貴方が来るので特別に用意させました。普段は剣の鍛錬に時間を費やしています」

「あら、勤勉なのですね」

「私にとって剣は趣味なので、別に勤勉だというわけではありませんよ。貴方は休日をどう過ごされているのですか?」

「私は大体、読書か友人を誘ってアフタヌーンティーを楽しんでいます」

「なるほど……やはり、社交界で流れている噂はアテになりませんね。私も貴方も互いに知らないことばかりのようです」

「えっと……その噂というのは?」

「聞かない方がいいですよ。おそらく、貴方のことが気に入らない令嬢が流したデマです」

「あぁ……大体の内容は想像できます」

  どうせ「ターレンバラ伯爵令嬢は毎晩のように身分の高い男を誑かしている」とかくだらない内容に決まっているわ。呆れた。

「ですから、私はもっと貴方について知る時間が欲しいと考えています」

「それが今回、私を邸宅に呼んだ理由でしょうか?」

 ウィリアムがフッと小さく笑う。

 彼の瞳に宿る”なにか”が蝋のように流れ出で、いつかこの身を焼いてしまう。

 そんな感覚がメアリーを襲った。

「おや、気になる方と過ごすのに理由など必要でしょうか?」

 え、それって一体どういうことなの?

 私が一人ぼっちで寂しい時に、グリンダと過ごしたくなるのと同じような感情かしら?

 今までフィネラに利用されるだけの人生を過ごしてきたメアリーにとって、理由もなく他人と過ごす時間は無縁であった。

 メアリーはウィリアムの言葉が理解できないまま、思考を巡らせて、なんとか無難な返答を見つけようとする。

 しかし、暫くの沈黙が続いた後、ウィリアムが再び口を開いたのでメアリーは言葉を返す必要が無くなった。

「いえ、これは冗談です。どうやら混乱させてしまったようですね」

「いえ、混乱なんてしていません。ただ閣下が私を理由もなく呼んで下さるほど信頼していらっしゃることに対して喜んでいただけです」

 ひとまず返答はこれで構わないだろう。

「なるほど。本当にそうでしたら良いのですが……」

 あら、もしかして疑われているのかしら?


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