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優しい貴方だから
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「それから私は結婚と同時に屋敷を離れました。数年後、屋敷で働いている同僚からお嬢様がターレンバラ家に嫁ぐという情報が手紙を通して伝わりました。しかし、それから手紙が我が家に届くことがなくなって……」
セシリアは泣き崩れながら話し続ける。
メアリーは一見、冷静な表情を崩さずに話を聞いているように見えるが、よく見ると唇を噛み締めている。
「恐ろしい事実を知ったのです。お嬢様がターレンバラ家へと向かった翌日、奥様から旦那様、使用人にいたるまで全員が呪いで亡くなっていたのです」
「呪いで死んだ方の遺体状況は知ってる? 死因が呪いだと分かったということは、なにかしら不審な死に方をしていたのでしょう?」
「聞いた話によれば死亡してから、それほど時間が経っていないのに、なぜか死後何ヶ月も放置されたかのような状態だったとか」
我が家の懲罰部屋で見つかった死体と状況が一致している。
偶然とは思えない。
「話してくれてありがとう。辛い思いをしたわね」
メアリーはセシリアの手を、そっと握った。
「メアリーお嬢様。長年働いて傷だらけになった汚い手など握っていただく必要はありません」
「まぁ、どうして? 私は長年苦労してきた証が汚いとは思わないわ」
「貴方はやはりフィネラお嬢様とは違いますね。演技ではなく心の底から私の心配をして下さっていると分かる」
メアリーの一言に対して、セシリアは信じられないと言わんばかりの表情を浮かべた。
「メアリーお嬢様、お願いです。どうか早くお屋敷を離れて下さい。貴方のような方がフィネラお嬢様の犠牲にはなって欲しくありません」
「彼女の言う通りです、メアリー。ラングスレッタ家にも、いくつか先祖から引き継いだお屋敷があります!」
今まで隣で静かにセシリアの話を聞いていたグリンダが駆け寄ってくる。
「伯爵令嬢である貴方にとっては少々手狭かもしれませんが、それでも良ければお父様にたのんで貸して貰いますよ」
「二人とも、お気遣いありがとう。だけど今は屋敷から離れることができないわ。まだ、やるべきことがあるから」
そう、まだメアリーには逃げるつもりなど、全くない。復讐は必ず成し遂げる。あの女から地位も名声も奪い取って、私は今度こそ自由になるの。
***
セシリアに情報を提供してくれた謝礼として、申し訳程度の金貨を渡したメアリーはラングスレッタ家から立ち去ろうとしていた。
馬車に乗り込もうとするメアリーを、グリンダが呼び止める。
「メアリー、待って」
「あら、どうしたの?」
メアリーが片足だけ乗り込んでいた馬車から降りると、今にも泣きそうなグリンダに手を握られる。
「もし私にもできることがあったらなんでも言って下さい。私は貴方に救ってもらった恩返しがしたいの」
「ありがとう、グリンダ。でも私、大したことはしてないわ」
「そんな事はありません。もしメアリーが私を助けてくれなかったら、私は今頃、毎日のようにアンソニーお兄様の顔色をうかがいながら生活しなければなりませんでした。私にとってメアリーは人生を変えてくれた恩人なんです」
今にも泣きそいなグリンダをメアリーが抱きしめる。
「そんな大袈裟なこと言わないで。私は、ただ自分がやりたくて貴方を救っただけよ。でも、貴方がそう言ってくれて嬉しいわ。私は最高の友人を手に入れたのね」
「……はい」
グリンダは静かに答える。
かつて、フィネラに洗脳されていた頃のメアリーならグリンダのことを”フィネラの計画を遂行するための道具”として見なしていた可能性もあっただろう。
だが、今のメアリーにそのような考えは全くなかった。
セシリアは泣き崩れながら話し続ける。
メアリーは一見、冷静な表情を崩さずに話を聞いているように見えるが、よく見ると唇を噛み締めている。
「恐ろしい事実を知ったのです。お嬢様がターレンバラ家へと向かった翌日、奥様から旦那様、使用人にいたるまで全員が呪いで亡くなっていたのです」
「呪いで死んだ方の遺体状況は知ってる? 死因が呪いだと分かったということは、なにかしら不審な死に方をしていたのでしょう?」
「聞いた話によれば死亡してから、それほど時間が経っていないのに、なぜか死後何ヶ月も放置されたかのような状態だったとか」
我が家の懲罰部屋で見つかった死体と状況が一致している。
偶然とは思えない。
「話してくれてありがとう。辛い思いをしたわね」
メアリーはセシリアの手を、そっと握った。
「メアリーお嬢様。長年働いて傷だらけになった汚い手など握っていただく必要はありません」
「まぁ、どうして? 私は長年苦労してきた証が汚いとは思わないわ」
「貴方はやはりフィネラお嬢様とは違いますね。演技ではなく心の底から私の心配をして下さっていると分かる」
メアリーの一言に対して、セシリアは信じられないと言わんばかりの表情を浮かべた。
「メアリーお嬢様、お願いです。どうか早くお屋敷を離れて下さい。貴方のような方がフィネラお嬢様の犠牲にはなって欲しくありません」
「彼女の言う通りです、メアリー。ラングスレッタ家にも、いくつか先祖から引き継いだお屋敷があります!」
今まで隣で静かにセシリアの話を聞いていたグリンダが駆け寄ってくる。
「伯爵令嬢である貴方にとっては少々手狭かもしれませんが、それでも良ければお父様にたのんで貸して貰いますよ」
「二人とも、お気遣いありがとう。だけど今は屋敷から離れることができないわ。まだ、やるべきことがあるから」
そう、まだメアリーには逃げるつもりなど、全くない。復讐は必ず成し遂げる。あの女から地位も名声も奪い取って、私は今度こそ自由になるの。
***
セシリアに情報を提供してくれた謝礼として、申し訳程度の金貨を渡したメアリーはラングスレッタ家から立ち去ろうとしていた。
馬車に乗り込もうとするメアリーを、グリンダが呼び止める。
「メアリー、待って」
「あら、どうしたの?」
メアリーが片足だけ乗り込んでいた馬車から降りると、今にも泣きそうなグリンダに手を握られる。
「もし私にもできることがあったらなんでも言って下さい。私は貴方に救ってもらった恩返しがしたいの」
「ありがとう、グリンダ。でも私、大したことはしてないわ」
「そんな事はありません。もしメアリーが私を助けてくれなかったら、私は今頃、毎日のようにアンソニーお兄様の顔色をうかがいながら生活しなければなりませんでした。私にとってメアリーは人生を変えてくれた恩人なんです」
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「そんな大袈裟なこと言わないで。私は、ただ自分がやりたくて貴方を救っただけよ。でも、貴方がそう言ってくれて嬉しいわ。私は最高の友人を手に入れたのね」
「……はい」
グリンダは静かに答える。
かつて、フィネラに洗脳されていた頃のメアリーならグリンダのことを”フィネラの計画を遂行するための道具”として見なしていた可能性もあっただろう。
だが、今のメアリーにそのような考えは全くなかった。
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