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一日三食、昼寝は自由
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「暇ねぇ。ド派手な事件でも起きないかしら?」
白いベッドや簡素な木製テーブル。
窓は小さく、幼児ぐらいしか抜けられそうにもない。
これだけ見れば監獄にふさわしい内装だが、よくよく観察してみると、ベッドの中にはフカフカの綿が詰まっていて、牢の天井は高くて窮屈に感じない。
食事は一日二回。ただし間食があるため、実質三回。着替えも毎日支給され、風呂には毎日入れる。
さすが特権階級の人間用に作られた牢屋だ。少なくともメアリーからしてみれば、全然不便は感じなかった。
アルバス塔の二十三階。それなりに綺麗な牢屋に囚われたメアリーは呑気にあくびをしながら窓の外を眺めていた。
「今まで不安になって泣き出したり、両親を呼ぶ令嬢は散々見てきたが……」
「あそこまで落ち着いている令嬢は初めて見たぞ」
「ターレンバラ家は使用人を雇えないほど没落していないはずだが、どうして着替えから掃除まで一人でできるんだ?」
「というか物騒なことを言っているな……」
牢屋の中で焦らず気ままに過ごすメアリーを見て、警備兵たちは困惑していた。
誰の手も借りずきちんと一人で生活できるメアリーを見た医務室の婦長に至っては、まるで孫を可愛がる祖母のように、ときどきお菓子を渡しに行っている。
「デカイ事件なんて早々起こらないだろ」
「だよなぁ。たとえば、俺たちが無駄話をしているところを皇族に見られたりとか……」
あはは、と高笑いをしながら警備をする兵士数人。背後から近づく影には気づかない。
「ほぅ、私に見られるとまずい自覚はあるのですね?」
異変に気づいた巡回兵。
おそるおそる振り返ると、そこに居たのは――。
「ウィリアム公爵閣下!」
皇族本人であった。
「無駄話をしている自覚があるのなら、さっさと黙って手を動かせ!」
「はっ、はい!」
青ざめながら走り去る兵を見るウィリアムはため息をつきながら「ここも改革が必要なようですね」と呟いた。
***
「貴方が無事なようで良かったです」
「もしかして私が拷問されていないか、心配していらっしゃったのでしょうか?」
「まぁ……不届き者の兵士が多そうなので」
独房の中。メアリーはベッドに、ウィリアムは椅子に座り向かい合いながら話し合っていた。
個室の中で男女が二人。さらに、メアリーは現在、罪人。ウィリアムは大体なにをしても許される身分である。
ウィリアムからしてみれば、なにかをする絶好のチャンスである。しかし、いつも通り彫刻のような澄まし顔でメアリーと話している辺り、彼の人柄がどれだけ良いのか分かる。
「閣下は私の様子を見にここへ?」
「いや、貴方を牢屋の外に出すために来ました。どのような手段を使ったのかは、聞かないでいただけると助かります」
あぁ、たぶん権力を色々行使して関係者を黙らせたのだろうなとメアリーは察する。
こちらを見ていたウィリアムは、なにかに気づき、椅子から立ち上がった。メアリーの横髪に触れ耳飾りを見る。
ウィリアムの手が意外と大きいことに気づいたメアリーの心臓はドクリと高なった。
「この髪飾り……片方は私がプレゼントしたものですが、もうひとつは貴方の所有物ですか?」
「そうですよ」
メギスから貰った宝石を変化させて作った耳飾りだ。実質メアリーのものですよ。
「でしたら良いのですが……」
ウィリアムは安堵したように笑ってから、椅子に腰掛けた。
なんだろう……ちょぴり気まづいというか……罪悪感が芽生えたというか……。
メアリーは二人きりである状況を利用して、ウィリアムに夜の女王から聞いた話を報告した。メギスの正体だけは伏せ、その他は要点を掻い摘みながら話す。ちょうどフィネラの状態がムリアであることを話し終わった時――バタバタと複数の足音が近づいてきた。
足音の主は王宮騎士であった。
騎士は息を荒らげながら主に告げる。
「閣下、大変です」
「どうした?」
「突如民衆が一斉に暴動を?」
「場所は?」
「それが……魔道士の報告によれば帝国全体だそうです」
「そんなまさか!」
立ち上がり、指揮を撮り始めるウィリアムを見ながらメアリーは思考を巡らせていた。
国全体で一斉に暴動?
魔法でも使わなければ不可能だわ。
洗脳の呪いでも使ったのかしら?
いや、それとも――。
「暴動が起こる前になにか予兆はなかったの? たとえば人々の様子に変化とかは?」
メアリーから問いを受け、騎士は視線を泳がせながら答える。
「予兆らしきことはありませんでしたが……そういえば、暴動を起こした民衆は全員『声が聞こえる』と言っていたような……」
白いベッドや簡素な木製テーブル。
窓は小さく、幼児ぐらいしか抜けられそうにもない。
これだけ見れば監獄にふさわしい内装だが、よくよく観察してみると、ベッドの中にはフカフカの綿が詰まっていて、牢の天井は高くて窮屈に感じない。
食事は一日二回。ただし間食があるため、実質三回。着替えも毎日支給され、風呂には毎日入れる。
さすが特権階級の人間用に作られた牢屋だ。少なくともメアリーからしてみれば、全然不便は感じなかった。
アルバス塔の二十三階。それなりに綺麗な牢屋に囚われたメアリーは呑気にあくびをしながら窓の外を眺めていた。
「今まで不安になって泣き出したり、両親を呼ぶ令嬢は散々見てきたが……」
「あそこまで落ち着いている令嬢は初めて見たぞ」
「ターレンバラ家は使用人を雇えないほど没落していないはずだが、どうして着替えから掃除まで一人でできるんだ?」
「というか物騒なことを言っているな……」
牢屋の中で焦らず気ままに過ごすメアリーを見て、警備兵たちは困惑していた。
誰の手も借りずきちんと一人で生活できるメアリーを見た医務室の婦長に至っては、まるで孫を可愛がる祖母のように、ときどきお菓子を渡しに行っている。
「デカイ事件なんて早々起こらないだろ」
「だよなぁ。たとえば、俺たちが無駄話をしているところを皇族に見られたりとか……」
あはは、と高笑いをしながら警備をする兵士数人。背後から近づく影には気づかない。
「ほぅ、私に見られるとまずい自覚はあるのですね?」
異変に気づいた巡回兵。
おそるおそる振り返ると、そこに居たのは――。
「ウィリアム公爵閣下!」
皇族本人であった。
「無駄話をしている自覚があるのなら、さっさと黙って手を動かせ!」
「はっ、はい!」
青ざめながら走り去る兵を見るウィリアムはため息をつきながら「ここも改革が必要なようですね」と呟いた。
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「貴方が無事なようで良かったです」
「もしかして私が拷問されていないか、心配していらっしゃったのでしょうか?」
「まぁ……不届き者の兵士が多そうなので」
独房の中。メアリーはベッドに、ウィリアムは椅子に座り向かい合いながら話し合っていた。
個室の中で男女が二人。さらに、メアリーは現在、罪人。ウィリアムは大体なにをしても許される身分である。
ウィリアムからしてみれば、なにかをする絶好のチャンスである。しかし、いつも通り彫刻のような澄まし顔でメアリーと話している辺り、彼の人柄がどれだけ良いのか分かる。
「閣下は私の様子を見にここへ?」
「いや、貴方を牢屋の外に出すために来ました。どのような手段を使ったのかは、聞かないでいただけると助かります」
あぁ、たぶん権力を色々行使して関係者を黙らせたのだろうなとメアリーは察する。
こちらを見ていたウィリアムは、なにかに気づき、椅子から立ち上がった。メアリーの横髪に触れ耳飾りを見る。
ウィリアムの手が意外と大きいことに気づいたメアリーの心臓はドクリと高なった。
「この髪飾り……片方は私がプレゼントしたものですが、もうひとつは貴方の所有物ですか?」
「そうですよ」
メギスから貰った宝石を変化させて作った耳飾りだ。実質メアリーのものですよ。
「でしたら良いのですが……」
ウィリアムは安堵したように笑ってから、椅子に腰掛けた。
なんだろう……ちょぴり気まづいというか……罪悪感が芽生えたというか……。
メアリーは二人きりである状況を利用して、ウィリアムに夜の女王から聞いた話を報告した。メギスの正体だけは伏せ、その他は要点を掻い摘みながら話す。ちょうどフィネラの状態がムリアであることを話し終わった時――バタバタと複数の足音が近づいてきた。
足音の主は王宮騎士であった。
騎士は息を荒らげながら主に告げる。
「閣下、大変です」
「どうした?」
「突如民衆が一斉に暴動を?」
「場所は?」
「それが……魔道士の報告によれば帝国全体だそうです」
「そんなまさか!」
立ち上がり、指揮を撮り始めるウィリアムを見ながらメアリーは思考を巡らせていた。
国全体で一斉に暴動?
魔法でも使わなければ不可能だわ。
洗脳の呪いでも使ったのかしら?
いや、それとも――。
「暴動が起こる前になにか予兆はなかったの? たとえば人々の様子に変化とかは?」
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