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第1部 隠された令嬢
26.本番まで君はおあずけ 披露会編4
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ーー半月前
「今日はパーティーのメインの1つともいうべき、ダンスの練習だ」
この日はいつも王子様とマナーの勉強をする皇城の談話室ではなく、床がピカピカに磨かれた小ダンスホールでの授業だった。
いつもは王子様と2人きりなのに、私の目の前にはアルフリードが立っていた。
「さあ約束通り、相手役はアルフリードにお願いするよ」
約束?
「いくらエルラルゴとはいえ、男は男だから。体を寄せ合うようなダンスの練習相手はさせられないからな」
アルフリードは何の不思議もない、というように片手を自分の腰に当てて言った。
はあ、そうですか……
「はいはい。じゃあアルフリード君、準備お願いします。エミリアちゃんは、彼の左肩に手を置いて……そうそう、で右手は伸ばして」
ダンスの基本姿勢を取ったアルフリードのそばへ行き、王子様の指示に従って、私もダンスのポーズを作っていった。
「もうちょっと、寄ってもらえる?」
王子様は私とアルフリードの背中に手を当てて、グッと押した。
お互いの胸が思った以上に密着して、心臓が瞬時にドクンドクンと鳴り出した。
どうしよう……ダンスの練習ってこんなにドギマギしながらやらないといけないの?
「それから、エミリアちゃん。上を向いてちゃんとアルフリードの顔を見て」
王子様の言葉に反射的に上を見上げると、すぐそこにアルフリードの整った顔が見つめていて、その焦茶色の瞳と目線がぶつかった。
やっぱり、どうすればいいの……頬がみるみる熱くなり出す。
さらに、アルフリードの手が左側の腰に当てられて、グッと体を引き寄せてきた。
何これ……この状態をずっとキープしつつ、さらにステップも覚えないといけないの!?
無理、無理……
王子様が手拍子を取りながら、何か言っているようだけど、全く耳に入ってこなかった。
数分後。
アルフリードはホールの隅の方に設けられた背もたれ付きの椅子に反対側から座って、長い両足を投げ出していた。
ふて腐れているその目線の先には、彼に代わり私とダンスの練習をさせられることになった皇女様の姿。
「なんで、私が男役をやらないといけないんだ……」
私と向き合いながら、皇女様は呆れたように言った。
皇女様相手なら王子様の声に集中しながらステップの練習もできそうだ。
「全くもって、この2人ダメなんだよ。お互いに見つめ合ったまま一歩も動けなくなっちゃって。ちっとも練習になりゃしない」
もう居たたまれない思いでいっぱいです……自分でもどうしてこんなに体が思うように言うことを聞かないのか、分からないのです。
「僕が本番でリードするから、練習なんてしなくていいじゃないか」
口を尖らせながら子供のようにアルフリードが文句を言っている。
「ダンスは立派な社交マナーなんだから、誰とでも踊れるようにしておかないとダメでしょ。君はエミリア嬢に恥をかかせたいのかい?」
「他の男なんかと踊らせないようにすればいいんだろ」
王子様の言うことに、ああ言えばこう言う、という感じのアルフリードとは、披露会当日まで練習をすることは結局なかった。
つまり、彼とダンスをするのは今日が初めてなのだ。
本番であの時みたいに動けなくなってしまうなんて、絶対にごめんだ!
そのために皇女様を相手に何度も練習し、彼と踊っているイメトレもしてきた。
準備は万端……なはず。
私は差し出された彼の手にそっと自分の手を置いて、ダンスフロアへと向かった。
既に何組かの男女が踊っている中をアルフリードは進み、フロアの中央あたりで私に向き合った。
腰に手を当てられて彼の体に引き寄せられても、胸同士が当たって密着しても、大丈夫だった。
よし、これなら無事に切り抜けられそう。
そして、上を見上げて彼の顔を見た。
エスニョーラ邸に迎えにきてから、気づけばボーッとして見つめてくるその顔を、こんなに間近で見つめ返さなければいけないのは、かなり厳しいものがあるように最初は感じられた。
でもダンスが始まってしまうと……
アルフリードは頭はボーッとなってそうなのに、体は切り離されているように私の体を支えながら、軽やかにステップを踏んでいる。
彼の瞳をずっと見つめていると、そこだけに引き寄せられるみたいに、周りの会場の様子や、他に踊っている人達の姿も次第に感じなくなってしまっていた。
まるで、この世界に私とアルフリードと2人だけしかいないみたいな気になっていく。
何も考えなくても彼のリードによって体が勝手に動いてくれるようで、心地よさすら感じてくる。
体が浮いてくるような高揚感に包まれていく。
ずっと、この時間が続いてくれればいいのに……
数曲が過ぎて、少し足に疲れを感じ始めた頃、おもむろにアルフリードは私の隣りに立って肩を抱き寄せた。
「今日はパーティーのメインの1つともいうべき、ダンスの練習だ」
この日はいつも王子様とマナーの勉強をする皇城の談話室ではなく、床がピカピカに磨かれた小ダンスホールでの授業だった。
いつもは王子様と2人きりなのに、私の目の前にはアルフリードが立っていた。
「さあ約束通り、相手役はアルフリードにお願いするよ」
約束?
「いくらエルラルゴとはいえ、男は男だから。体を寄せ合うようなダンスの練習相手はさせられないからな」
アルフリードは何の不思議もない、というように片手を自分の腰に当てて言った。
はあ、そうですか……
「はいはい。じゃあアルフリード君、準備お願いします。エミリアちゃんは、彼の左肩に手を置いて……そうそう、で右手は伸ばして」
ダンスの基本姿勢を取ったアルフリードのそばへ行き、王子様の指示に従って、私もダンスのポーズを作っていった。
「もうちょっと、寄ってもらえる?」
王子様は私とアルフリードの背中に手を当てて、グッと押した。
お互いの胸が思った以上に密着して、心臓が瞬時にドクンドクンと鳴り出した。
どうしよう……ダンスの練習ってこんなにドギマギしながらやらないといけないの?
「それから、エミリアちゃん。上を向いてちゃんとアルフリードの顔を見て」
王子様の言葉に反射的に上を見上げると、すぐそこにアルフリードの整った顔が見つめていて、その焦茶色の瞳と目線がぶつかった。
やっぱり、どうすればいいの……頬がみるみる熱くなり出す。
さらに、アルフリードの手が左側の腰に当てられて、グッと体を引き寄せてきた。
何これ……この状態をずっとキープしつつ、さらにステップも覚えないといけないの!?
無理、無理……
王子様が手拍子を取りながら、何か言っているようだけど、全く耳に入ってこなかった。
数分後。
アルフリードはホールの隅の方に設けられた背もたれ付きの椅子に反対側から座って、長い両足を投げ出していた。
ふて腐れているその目線の先には、彼に代わり私とダンスの練習をさせられることになった皇女様の姿。
「なんで、私が男役をやらないといけないんだ……」
私と向き合いながら、皇女様は呆れたように言った。
皇女様相手なら王子様の声に集中しながらステップの練習もできそうだ。
「全くもって、この2人ダメなんだよ。お互いに見つめ合ったまま一歩も動けなくなっちゃって。ちっとも練習になりゃしない」
もう居たたまれない思いでいっぱいです……自分でもどうしてこんなに体が思うように言うことを聞かないのか、分からないのです。
「僕が本番でリードするから、練習なんてしなくていいじゃないか」
口を尖らせながら子供のようにアルフリードが文句を言っている。
「ダンスは立派な社交マナーなんだから、誰とでも踊れるようにしておかないとダメでしょ。君はエミリア嬢に恥をかかせたいのかい?」
「他の男なんかと踊らせないようにすればいいんだろ」
王子様の言うことに、ああ言えばこう言う、という感じのアルフリードとは、披露会当日まで練習をすることは結局なかった。
つまり、彼とダンスをするのは今日が初めてなのだ。
本番であの時みたいに動けなくなってしまうなんて、絶対にごめんだ!
そのために皇女様を相手に何度も練習し、彼と踊っているイメトレもしてきた。
準備は万端……なはず。
私は差し出された彼の手にそっと自分の手を置いて、ダンスフロアへと向かった。
既に何組かの男女が踊っている中をアルフリードは進み、フロアの中央あたりで私に向き合った。
腰に手を当てられて彼の体に引き寄せられても、胸同士が当たって密着しても、大丈夫だった。
よし、これなら無事に切り抜けられそう。
そして、上を見上げて彼の顔を見た。
エスニョーラ邸に迎えにきてから、気づけばボーッとして見つめてくるその顔を、こんなに間近で見つめ返さなければいけないのは、かなり厳しいものがあるように最初は感じられた。
でもダンスが始まってしまうと……
アルフリードは頭はボーッとなってそうなのに、体は切り離されているように私の体を支えながら、軽やかにステップを踏んでいる。
彼の瞳をずっと見つめていると、そこだけに引き寄せられるみたいに、周りの会場の様子や、他に踊っている人達の姿も次第に感じなくなってしまっていた。
まるで、この世界に私とアルフリードと2人だけしかいないみたいな気になっていく。
何も考えなくても彼のリードによって体が勝手に動いてくれるようで、心地よさすら感じてくる。
体が浮いてくるような高揚感に包まれていく。
ずっと、この時間が続いてくれればいいのに……
数曲が過ぎて、少し足に疲れを感じ始めた頃、おもむろにアルフリードは私の隣りに立って肩を抱き寄せた。
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