学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと

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第6章 体育祭

52 信頼の先に

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「し、失礼しまぁす」

 お昼休みが終わり、わたしは約束を果たすべく生徒会室運営のテントまで足を運びました。

 とは言え、場違い感は否めないので自然と恐る恐るになって声が揺れてしまいます。

「あ、どうかしましたか?」

 すると、手前にいた生徒会のメンバーであろう方から返事を頂きます。

 一般生徒が顔を出せば、気付いた人から対応してくれるのは当然の反応です。

「えっと、あの、その……」

 ですが、当然の反応ができない人がここにいます。

 しどろもどろ。

 ただでさえコミュケーション能力が欠如しているわたしに、接点のない生徒会役員の方を目の前にしては緊張が止まりません。

「……?」

「あー……」

「何でしょう?」

「うー……んと」

「……あの、用がないのでしたらお引き取りを」

 “あー”とか“うー”としか言わないわたしを見かねた生徒会の方に、戻るように催促されます。

「そうですね、失礼しました」

 これだけはいやに滑らかに言葉が出ました。 

 だって、ここはわたしがいるべき空間ではありません。

 回れ右して、本来いるべき場所に戻ることにします。木陰とか、ですかね。

「……ぐえっ」

 しかし、足を踏み出すと同時に首が閉まるような圧力が加わり、それ以上動くことが出来ませんでした。

「貴女、一体何をしに来たのよ……」

 振り返ると、わたしの首根っこを捕まえている千夜ちやさんの姿がありました。

 ジト目を向けられています。

「……アウェイ感を感じたので、引き返すことにしました」

「ほとんどの人がここにホーム感なんて感じないわよ」

 そう言われちゃうと、その通りなんですけど。

 どうやら千夜さんは奥の方で他の役員の方と相談をしていたそうで、わたしを見つけるとすぐに話を切り上げ、こちらに近づいてきてくれたようです。

「あ、会長……?その方、会話が成立しなくて……」

 さっき対応してくれた役員の方が、わたしの奇行を告げ口します。

 千夜さんもわたしの首根っこを捕まえているので、不審者を摘まみ上げている様に見えたのかもしれません。

「いいのよ、私がこの子に用があって来てもらったの」

「会長が……?この人に?」

 “意思疎通が困難な陰キャに会長が何の用?”

 と言わんばかりにキョロキョロする生徒会の方。

 そんな不思議そうな生き物を見る目でわたしのことを観察しないで頂きたい。

「ええ、そうよ。問題ある?」

 しかし、千夜さんがはっきりその意思を伝えると生徒会の方は姿勢を正します。

「いえ、問題はありません。失礼しました」

「いいのよ。私は少し席を外すから、後はお願いね。何かあればすぐに呼んでもらって構わないから」

「はいっ」

 なるほど……。

 出来る上司は部下の自主性を重んじ、下手に口出しせず自由に仕事をさせると言います。

 今の千夜さんがまさにそんな感じでしょうか。

 やはり仕事が出来る女って感じですね。

「……何をそんなに見ているのよ」

「あ、えっと」

 いつの間にか凝視してしまっていたらしく、千夜さんは怪訝そうな表情を覗かせます。

「家だけじゃなくて、やっぱり学校でも頼られる存在なんだなぁと思いまして」

 もちろん千夜さんにだけ届く声で、告げます。

「……っ、無駄話をしているヒマはないわ」

「あっ、はいっ」

 千夜さんは首根っこを掴んでいた手を離すと、急に俯いてテントの外へと歩き出すのでした。

 わたしもその後を追いかけます。






「あ、あの千夜さんっ」

「……何かしら」

「歩くの早すぎませんかっ」

「あっ、そうね」

 早足のままずんずん進んで行くので、追いかけるのも大変なのでした。

 ようやくその速度を緩めてくれます。

「そんなに急ぎの用事なんですか?」

「特に緊急性はないわ」

 じゃあ、なんであんなに早足だったんでしょうか……。

 不思議です。

「わたしは生徒会の何のお仕事を手伝えばいいのでしょうか?」

「見回りよ。本来は二人一組なんだけど、今日は一人欠けているからその代わりが貴女」

「なるほど」

 全くお役に立てる気がしないのですが、大丈夫でしょうか。

「とは言っても基本的に運営は体育委員がやってくれているから、生徒会の仕事は微々たるもの。トラブルがあった際に体育委員の手が足りない場合があれば、協力するのよ」

 有事にすぐ対応できるよう、生徒会の方は交代制で見回りをしているとのことでした。

「ですが、それをどうしてわたしが……?」

 言われるがままにオーケーしましたけど。

 そういう役目なら他の方が適任だったのでは……?

 わたしじゃ何のトラブルも解決できませんよ?

 自分で言ってて悲しいですけど。

「……貴女が言ったことでしょ」

 ぼそりと千夜さんが呟きましたが、わたしは何のことかと首を傾げます。

「私が思ったことを人に伝えるように薦めたのは、貴女でしょ」

 たしかに、言いました。

 普段から自分の気持ちを押し殺す千夜さんに対して、そう言ったのを覚えています。

 でもそれは、どちらかと言うと日和ひよりさんや華凛かりんさんの為を思っての言葉だったのですけどね。

 ……でも。

「千夜さんの方から、わたしを選んで貰えたのなら嬉しいです」

 力になれる気は全くしていませんが、それでも千夜さんから求められる事に悪い気はしません。

「貴女には感謝しているの」

「……ん?」

 あれ、幻聴ですかね。

 なんか今すっごいこと言われた気がします。

「……次、聞き逃したら怒るわよ」

「すいません、はい、ちゃんと聞きます」

 信じられなくて聞き返したんですけど。

 そういうわけにもいかないようです。

「貴女のおかげで、私は息がしやすくなった気がするの」

「……えっと」

「肺がどうとか、呼吸苦とかそういう下らない意味じゃないわよ。察しなさい」

「……ですよねぇ」

 すいません。

 ただでさえ身に余る言葉を頂戴しているので、そんな多彩な言葉を使われると尚のこと理解が追い付かないのです。

「姉妹の仲も前よりずっと良くなったと思っているわ」

「それは……嬉しいですね」

 わたしもそうなって欲しくて頑張った事はあったので、千夜さんにそう感じてもらえるのなら喜ばしい限りです。

「不思議ね。姉妹の仲を直してくれたのは、血の繋がりのない義妹だなんて」

「……でもそれは本来の月森さんたちの仲があればこそですよ」

 本当にいがみ合う仲であれば、わたしなんかがどうこう出来ることはなかったでしょう。

 ただ、ボタンが少しずつ掛け違っていただけ。

 だからこそ、他人で、外側にいるわたしの方がそのボタンを掛け直すことが出来た。

 ただ、それだけの話なのです。

「……だから、ね。貴女は私達……いや、私にとっても、必要な存在になっていると思うの」

 千夜さんの一切揺れることのないその瞳が、わたし真っすぐに射抜きます。

 その視線を反らすことが出来ません。

「それで、もし貴女がよければ、その――」

 ――と、千夜さんが何かを言い掛けた。

 その瞬間でした。

「ねえ、何なの、何なのそれっ!?」

「あらあら、お弁当ですよ?お昼ご飯が入っていたんですよ?」

 まるでカットインするかのように見知った声が飛び込んでくるのでした。

「そうじゃなくてっ、お弁当そのものについて話しているんじゃなくてっ!その浮かれた弁当箱は何だって聞いてんのっ!」

「ハートちゃんです♡」

 両手にあるハートのお弁当を頬に寄せる日和さん。

 可愛いですけど……なにやってるんでしょう、あのお二人。

「絶対明莉のやつじゃんっ!なんでいつもの弁当箱じゃなくて、二人だけ違うのよっ!」

「あら、心の形を表現するのに物を使うのは古典的な方法じゃないですか?」

 そして、華凛さんは何をそこまで目くじらを立てているのでしょう。

 そして、日和さんはあのお弁当箱を心って言ってたような……あれ、心臓って言ってませんでしたっけ……聞き間違いでしょうか。

「……あの子たち」

 そして隣にいる千夜さんの声には怒気が籠り始めていましたっ。

 はわわ……!

 周りにいる生徒の方々も、お二人の言い争いを遠巻きから見守っています。

「あの、これって……トラブルになるんですかね?」

「あの子たちのせいで野次馬も集まってるし……そうなるわね」

「あ、でも、これって体育委員の方が解決してくれるんじゃ……」

「体育委員の代表はあの子華凛よ」

 オーマイガァ。

 体育委員長であり、学園のアイドルの二人が口論している。

 それは誰も止められません。

 ……となれば。

「生徒会の出番なんですね」

「……残念ながら、そうなるわね」

 鼻息荒く返事をしてくれる千夜さん。

 それについさっき、姉妹の仲は良くなったと仰ってくれたばかりなのに……。

「ほら行くわよ」

 すると、千夜さんがわたしの手を握ってきます。

 ちょっとドキッとしてしまいましたが今はそんな場面じゃないことくらい、わきまえています。

「やっぱり、わたしもですか?」

 勿論、千夜さんのお手伝いとして一緒にいましたけど。

 果たして力になれるかどうか……。

「貴女が一番、私達のことを理解してくれているんでしょ?」

「……!」

 それは千夜さんがわたしに向けてくれる最大の信頼で。

 そして、わたしが求めていたことです。

 推しのことを理解し、推しの信頼を得る。

 これが喜びじゃなくて、何が喜びでしょうか。

「もちろんですっ!」

 だから、わたしはやっと自信を持って千夜さんの手を握り返すことが出来ます。
 
 体育祭はまだまだ終わりそうにありません。

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