百合ゲーの悪女に転生したので破滅エンドを回避していたら、なぜかヒロインとのラブコメになっている。

白藍まこと

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本編

39 軌道修正を図りたい

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 今日も今日とて学院での生活は始まる。
 あくび混じりに教室の席に着くと、ルナがこちらに歩いてくる。

「昨日はありがとうユズキ、また行こうね」

「あ、うん。……また行けるタイミングがあったらね?」

 なんせ外出には副会長様の監視を潜り抜けないといけませんからね。
 近日中には無理だろうが、どこかでそんなタイミングがあればなぁとは思う。

「楽しみにしてる」

 そうしてルナとの挨拶を終える、朝から爽やかである。






ゆずりは、今時間いいかしら?」

「あ、はい」

 今度は黒髪の少女、千冬さんがあたしを尋ねてくる。

「今の生徒会のイメージについて聞きたいのだけれど」

「最高だよ」

 なんせヒロインが二人もいる生徒会ですからね。

「回答が単純すぎるわよ」

「シンプルイズベスト」

「それは思考の果てに辿り着くもので、貴女は入口で止まっているからそんな単語しか出ないのよ」

 うーん、この千冬ちふゆさんの辛辣さがいいんだよねぇ。
 クセになります。






「……ゆ、楪さん。さっきちらっと聞こえてきたんですけど、外出されたって本当ですか?」

 すると今度は隣の主人公、明璃あかりちゃんから声が掛かる。

「あ、うん、ちょっとだけね」

「わ、わたしも一緒に行きたいですっ」

「あ、ルナとかい?」

 ヒロインを奪って申し訳ない。

「楪さんとですっ」

「……あー」

 あたしかぁ。
 個人的にはいいけど、フルリスとしてはよくないぁ。

「今度ね」

「断る時の常套句じょうとうくじゃないですかっ」

「時間が空いてれば」

「同じですよっ」

 とは言え、物語が進んで主人公とヒロインとの仲が進行すれば、あたしが明璃あかりちゃんとの距離を縮めるのも問題ないんだろうけど。

「ほら、あんまり外出すると生徒会に怪しまれちゃうから」

「でも、その割には涼風すずかぜさんから生徒会の相談を受けていましたよね?」

「……あー」

 そう言われると、そうだなぁ。
 千冬さんも少し変わったムーブをする。

「そういう小日向こひなたは生徒会に興味あるの?」

「いえいえ、ないですよっ。わたしなんかがあんな凄い人達の中に入れるわけないじゃないですかっ」

「そっかぁ」

「……えっと、楪さん、露骨に話題を変えて話を反らそうとしてませんか?」

「授業始まるね」

「まだ休み時間ですよっ」

「五分後に」

「休み時間の五分ってかなり余裕ありますよっ、話題を反らさないでくださいっ」

「……(精神統一)」

「無視ですか!?」






 ちょっと待て。

 何だかあたしを中心に、主人公とヒロインが立ちまわっているように感じるのは気のせいだろうか。
 これ一歩間違えば自意識過剰のイタ女だから、あんまり意識しないようにしてたけど。
 朝の一幕でこれだぞ?
 違和感がすごすぎるっ。

 やはり、追放ルート回避のために全員と仲良くしていた弊害と考えるしかない。
 悪女のヘイトが軽減した分、明璃ちゃんへの好感度チャンスも減らしてしまったのだ。
 悪女としての立ち振る舞いは、同時に明璃ちゃんとの対比を作り、彼女を際立てる演出になっていたのだ。

「……ま、でも慌てる必要はない。あたしはこの先の展開を知っているんだから」

 そう、あたしは未来を知る女。
 これまでは“楪柚稀の未来をどう修正するか”に注力してきた。
 そのせいで、フルリスにおける明璃ちゃんの影響力が落ちてしまったのは否めない。
 だが、当初の目的を完遂しつつある今、今度は“明璃ちゃんの影響力を取り戻す”事に集中する事が出来る。

「変革から、微調整の段階に来たのね」

 とは言え、軌道修正レベル。
 この世界の理を知るあたしに不可能はない。
 恐らく、多分、絶対。



        ◇◇◇



「あ、ルナちょっといい?」

 昼休みに、あたしはルナを尋ねてみる。

「いいよ?」

 ルナは席に座ったままこちらを向いて、自身の太腿をパンパンと叩く。
 ていうか太腿長っ……、足全体が長いからあたしの思い描く太腿のイメージとちがいすぎる。
 これで細いとかどうなってるんだ?

「ていうか、足叩いて何のアピール?」

「座っていいよ?」

 ルナの太腿の上に?
 はは、冗談きついぜ。

「あたしが乗ったらそんな細い足折れちゃうよ」

 ちなみにあたしの体重はトップシークレットだ。
 痩せてる方と言っても、ヒロイン様のような常識離れした数値からは程遠い。
 リアル人間準拠なので、絶対に言いたくない。

「折れないし、折れても本望」

 何がルナをそうさせるのか。
 ちょっと狂気の片鱗を見てしまったような気がするが、聞かなかった事にする。

「まぁすぐ終わる話だから」

「そうなんだ、昼食はまだいいの?」

 ヴェリテ女学院では昼食は全員食堂で取るようになっている。
 教室で机の位置をずらして思い思いに食べるのは淑女としての品に欠けるそうだからだ。
 ルナは昼食は取らず、あたしは悪女で周りから引かれるのが嫌でいつも昼休みギリギリにしている。
 よって今の教室の人影はまばらだ。

「あたしはもう少し後で行くからいいんだけどさ、それより聞きたいんだけどルナは小日向こひなたの事どう思ってる?」

 すると、ルナはきょとんと首を傾げる。

「……クラスメイト」

「……マジか」

 思っていたよりも遠かった。
 彼女のぱちぱちと瞬いてる瞼の反応が何よりの証拠だろう。

「気になったりとかは?」

「するね」

「あ、やっぱり?」

 そ、そうだよね。
 なんせ主人公なんだから気にはなりますわよね。

「うん、ユズキに構って欲しそうにしてるから。それが気になる」

「……なるほど?」

 明璃あかりちゃんの注意が、あたしに向いているのが気になるのか。
 つまり明璃ちゃんに対して“ユズキじゃなくて、ルナの方を見てよ”という無意識が働いているらしい。

「それならちょっと今度一緒に話してみない? ほら、あたしは小日向とそこそこ話せるし」

 まぁ良くも悪くもあたしはフルリスの登場人物と誰隔てなく話せるポジションを確立している。
 あたしが橋渡しとなって彼女達の間を取り持つのだっ。

「いや、話さなくていい」

「……え?」

 ルナにきっぱりと断れた。
 その言葉に一切の迷いは感じられない。

「あ、でも、ほら……外出した時に“ルナも人と打ち解けよう”的な事言ってたし……?」

「でも、その相手がコヒナタである必要はないよね?」

「いや、まぁ……そうだけど」

 え、あれ、なんかあたしの見当違い?
 こんなに頑なに拒否されるとは思わなかったから、あたしの方が面を食らってしまう。

「あ、コヒナタが嫌いとかではないよ。ユズキがそこまでしなくていいって言ってるだけ」

「そ、そっか……」

 だ、だよね、特に明璃ちゃんが嫌われる理由はないのだから。
 いや、しかし……こうも明確にお断りされるとなると、もっと間接的に明璃ちゃんと接触させなきゃいけないのか?
 案外ハードル高いぞ……。

「それにお話するのなら、ルナはユズキとがいいな?」

 首を傾げて微笑みながら、下からあたしを覗いてくる。
 こ、この可愛い奴め……。
 その手には乗らないぞっ。
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