47 / 77
本編
47 絆を結びましょう
しおりを挟む「ど、どうでしょうかっ、明璃ちゃんとのリアンは……!?」
「まさかそう来るとは思わなかったな……」
困惑したように頬をかく羽金先輩。
とは言え、原作通りの展開が上手く行かない事はさすがのあたしも分かってきた。
問題はこの課題をクリアするために、どうアプローチしていくかだ。
「何か問題があったでしょうか?」
「いや、問題以前と言うか……私は小日向君の事はあまり
知らないし……リアンになる理由がないよ」
本来であれば明璃ちゃんは、千冬さんとの生徒会選挙を一緒にやっていて、それをきっかけに羽金先輩との距離も縮まるはずだった。
それをあたしが代わりにやってしまった事で、親密度が上がっていない。
だから、異なる方法でリアンに繋ぎ合わせるアプローチが必要だ。
「理由で言えば、そもそも羽金先輩はどうして千冬さんとのリアンを拒んでいるんですか?」
そもそも羽金麗という人物は、なるべきリアンを拒んでいる。
その理由を紐解けば、羽金先輩に認めてもらう糸口が見えるかもしれない。
「私かい? ……そうだね、私は出来るだけ既存の枠組みを撤廃したいと思っているんだ」
「それが千冬さんとの関係が?」
「私個人に涼風君に対する悪感情はないよ? 彼女はとてもいい子だからね。でも、会長と副会長は必ずリアンにならないといけないなんて、個人の自由を無視しているだろ?」
「でも、それを含めての仕組みなんじゃ……」
「プライベートは切り分けるべきさ。“伝統”を軽んじるつもりはないけれど、価値観をアップデート出来ないのは“老化”と一緒だよ」
つまり羽金先輩は伝統を重んじてはいるけども、時代にそぐわないものは改善したいとう人物なのだ。
この価値観を明璃ちゃんに繋げて行ければ、あるいはっ。
「でしたら明璃ちゃんとリアンになれば、羽金先輩の考えを示せると思います」
「それは、どういう事かな?」
「まだ転入したばかりで学院の事をよく分かっていない明璃ちゃんは、言わば真っ白な状態です。その彼女とリアンになれば、羽金先輩の“悪しき伝統を撤廃し、新しい学院を作る”意思表示として皆に伝わると思うんです」
それに人間関係の点から見ても、本来であれば主人公とヒロイン同士なのだから相性が良いのは保証済み。
今はまだきっかけを失っているだけに過ぎない。
「……うん、なるほどね。でも、そういう君はどうなんだい?」
「あたしですか?」
「そういう君だってリアンはいないんだろ、何か理由があるんじゃないのかい?」
ああ……あたしにリアンがいないのは楪柚稀のせいであって、選り好みをしているわけではない。
一人は楽だけど、誰かいてくれたらそれはそれで楽しいだろうし。
「いえいえ、あたしは学院側が認めてくれるなら誰でも歓迎ですよ。ただ明璃ちゃんとのリアンだけは、彼女のためにならないと思っているだけです」
基本的に“あたしのような悪い見本を転入生に見せるべきではない”という意見を主張させてもらっている。
「……君の話は分かったよ」
そう言って朗らかに微笑む羽金先輩。
え、もしかして?
「い、いいんですかっ?」
「ああ、君の願いを叶える方法を前向きに検討させてもらうよ」
「ほ、本当ですかっ!?」
や、やった!
流石は生徒会長、話が分かっていらっしゃる!
「だから今日はもう休むといい、明日も学院での勉強があるからね」
「わ、分かりましたっ、ありがとうございますっ! 羽金先輩!」
そうして、あたしは喜びに軽やかなステップをしながら自室へと戻るのだった。
◇◇◇
「ふぅ……朝日が眩しいわね」
翌日の朝、今日は晴れやかな空が広がっている。
降り注ぐ陽ざしに、手をかざした。
「ふふ……これも全てが上手く行った証拠ね」
きっとお天道様もあたしの頑張りを褒めてくれているのだ。
それしか考えられない。
「何を道の真ん中で空を見ているのよ」
どんっと背中に軽い衝撃が加わり、何かと振り返れば千冬さんが怪しい者を見るような目でこちらを見ていた。
「わ、千冬さんっ……ちょっと今日は眩しいなと思って」
「何で眩しいのに空を仰ぐのよ、余計に眩しいでしょうが」
それ言わないでよ……。
ちょっと悦に入っちゃってたんだよね。
でも恥ずかしいから言えなくて、何と説明しようか困っていると……。
「……昨日は悪かったわね」
「え?」
あたしの沈黙が気まずい空気に感じたのか、千冬さんの方から話しを続けてくれた。
そして意外にも謝罪の言葉で。
「貴女を無視して私個人の感情を爆発させすぎたわ……だから謝ろうと思って」
隣を歩きつつ、ちらちらとあたしを見ながら千冬さんは謝り続ける。
「いやいやっ、千冬さんが謝らないでよ。相談に乗ってくれただけでもありがたいんだからっ」
非常識な相談をしたのはあたしの方なのだから、千冬さんが罪悪感を感じる必要はない。
むしろもう怒ってない事が分かって、こちらの方が一安心したくらいだ。
「そう……ならいいのだけれど。でも、どうするの? 貴女の事だから小日向には直接言ってないんでしょ?」
「ふふ……千冬さん、それがどうにかなりそうなんですよ」
「あら、そうなの? 意外ね、どうしたのよ」
「それが……」
事の詳細を語ろうとして、ふと思い留まる。
“羽金麗と小日向明璃”
原作ではこのリアンに対して、千冬さんは羽金先輩に相当な苛立ちを覚えて反抗する。
伝統を真っ向から否定され、尚且つ気になっている明璃ちゃんも取られたような形になるからだ。
自尊心と恋心を両方取り上げられたような気持ちになれば誰だって感情が荒立つ。
さて、今回はどうだろう。
羽金先輩と明璃ちゃんとを繋げるのに、あたしが一枚嚙んでいる。
こうなると怒りの矛先はあたしに向いてしまうだろう。
せっかく千冬さんが謝ってくれたのに、またお怒りになってしまう結末が目に見えていた。
「……い、いずれ分かるよ……」
どうせバレて怒られるのは既定路線なのだが、小心者のあたしはそれを先伸ばしにしてしまう。
その曖昧な回答に千冬さんは首を傾げる。
「まぁ、解決したのなら良かったけれど」
「……うん、ごめんね」
「どうして謝るのかしら」
「……いや、一応先に言っとこうかなって」
断罪の時には大人しく受け入れよう。
ほどなくして、その時は訪れた。
「ちょっと柚稀ちゃん!? これは一体どういう事ですかっ!?」
昼休みに意気揚々と羽金先輩にリアンの申請をしに行った明璃ちゃんだが、その帰りの足取りは鬼気迫るものだった。
きっと羽金先輩は事の経緯を説明するのに、あたしの名前も出したのだろう。
誠心誠意、これは明璃ちゃんの為であると説得しよう。
「……あたしは明璃ちゃんの事を思ってやったんだよ」
「これのどこがわたしの為なんですかっ、ひどいですよ柚稀ちゃんっ」
「仕方ないの、羽金先輩と明璃ちゃんがリアンになる方があたしなんかより学べる事がたくさんあると思って――」
「どうして羽金さんと柚稀ちゃんがリアンになってるんですかっ!?」
「――てえええええええええっ!?」
それはあたしも知らないんですけどおおおおっ。
11
あなたにおすすめの小説
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる