百合ゲーの悪女に転生したので破滅エンドを回避していたら、なぜかヒロインとのラブコメになっている。

白藍まこと

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本編

51 お部屋にて

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「やあ、ゆずりは君」

「お、お邪魔します……」

 結局、あたしは羽金はがね先輩の部屋を訪れる事になる。
 寄宿舎では基本的に生活用品は支給されているため、私物だけを運めば済むので引越しの手間はほとんどなかった。

かしこまる事はないよ、今日からここは私達二人の部屋なんだからね」

「は、はぁ……」

 どちらかと言うと畏まってるのは羽金先輩に緊張しているからなんですけどね。
 部屋で待ってくれていた羽金先輩は白シャツにタイトめなデニムという大人のカジュアルな装いだった。
 学院とは違って、部屋という生活感のある空間で会うと私服も相まって違う雰囲気にドギマギしてしまう。

「ふふ、そう言う私の方が落ち着きが無いかもしれないけどね。君とこれから一緒に過ごすのかと思うと胸が高鳴るんだ」

「さ、さようでございますか……」

 た、楽しそうだな羽金先輩……。
 何があたしとのリアンにそんな高鳴る事があるのだろう。

「君はどうかな?」

「ドキドキしてますよっ」

 皆の尊敬と羨望を一身に集める上級生の美人生徒会長。
 そんな人と一緒の生活送るようになったらそりゃ緊張するよねっ。
 誰でもそうなると思うっ!

「意外だね、楪君は物怖じしない性格だと思っていたよ」

「いやいや、あたしなんて基本的に何するにもビクビクしてますよ」

 なんせ不器用そのものの人間ですからね。
 だから前提として大変な事はやりたくないのだっ。

「そうは見えないけど……まあ、それよりも疲れただろう、何か飲むかい?」

「あ、いえ、お構いなく」

「楪君の方から出向いてくれたのだから、歓迎くらいはさせてもらうよ。大した事は出来ないけどね」

 羽金先輩から飲み物を貰うだけでもどれほどの生徒が喜びに震える事か……。
 それをあたし如きじゃ恐れ多いし、敵を作るような予感がして気が進まない。

「コーヒーと紅茶のどちらかしないのだけど、楪君が飲める物はあるかな?」

「あ、どちらでも大丈夫です」  

 選り好みはしません。
 何でも好きです。

「じゃあコーヒーにさせてもらおうかな、淹れておくから荷物を片付けるといい」

「わ、分かりました。ありがとうございます……」

 羽金先輩に催促されるまま荷物を置かせてもらう。
 この間に羽金先輩がわざわざコーヒー煎れてくれているのかと思うと、申し訳ない気持ちが湧き上がってくる。
 ささっと出来るだけ手早く終わらせる。

「お、手際がいいね」

 リビングに戻ると、キッチンから両手にマグカップを持った羽金先輩が現れる。

「座っていいよ」

 羽金先輩はマグカップをテーブルに置きソファに座ると、その隣をぽんぽんと叩いている。

「そこに、ですか?」

「ダイニングテーブルにも椅子はあるけど、こっちの方がくつろげると思うけど?」

 い、いや……羽金麗はがねうららという全然休まらない要因が隣にいらっしゃるので、遠めの椅子の方がまだ落ち着ける気がするのですが……。

「じゃあ……お言葉に甘えて」

 とは言え、断るのも失礼な話だ。
 そもそも、このゲームに対する予備知識があるから変に身構えてしまうのがいけない。
 羽金先輩もただ純粋にあたしと親睦を深めたいだけに違いない。
 百合ゲーだからと言ってヒロインが見境なく少女を好きになるとは限らないのだから。

「あ、忘れてた。楪君は砂糖とミルクはいるかな?」

「出来ればあると、嬉しいですけど……」

「そうかごめん、今取って来るよ」

 羽金先輩は立ち上がると、ぱたぱたと歩いてキッチンへと戻っていく。
 ほどなくして粉砂糖とミルクが入った容器を持ってきてくれた。

「お好みでどうぞ」

 そう言って、あたしの前に置いてくれる。
 マグカップからは湯気が立ち上りコーヒー豆の香ばしい匂いが香っていた。
 適量の砂糖とミルクを入れてかき混ぜると、黒から茶色へと塗り替えられていく。
 
「い、いただきます………」

 口をつけて飲んでいくと、温かさの中にある苦味が舌先に伝わっていく。

「ふふ……普段の学院生活じゃ分からないような事を知れるのがリアンなんだね」

 くすくすと羽金先輩は楽しそうに笑う。

「あたしのコーヒー事情なんて知っても役に立ちませんけど……」

 逆に羽金先輩はブラック派だという情報には学院内でも価値はありそうだけど……。
 あたしだと微妙な事この上なし。

「そうかな、少なくとも君の周りの子達には羨ましがられると思うけどね」

「あたしの周りですか?」

 あたしの周りには基本的に主人公とヒロインしか、いないな……?

「そうさ、涼風すずかぜ君や小日向こひなた君に、マリーローズ君……彼女達に好かれているよね?」

「まぁ……クラスの中では一番仲良くはしてくれてますけど……」

 その皆が、あたし以外と仲良くなっていないのが悩ましいのですが。

「歯切れが悪いね、何か思う所があるのかい?」

「いえ、何と言いますか……気のせいだったらいいんですけど、皆あたしには仲良くしてくれるんですけど、あたし以外とはそこまで仲良くないって言うか……」

 かと言って嫌ってるような雰囲気も全然感じないんだけど。
 ただ、必要以上にベタベタもしないと言うか。
 ドライな感じで、百合成分に欠けているのだ。

「ああ……あはは、それはそうなると思うよ」

 しかし、その話をしても羽金先輩はまた肩を揺らして笑う。
 口元に手を添える所作はとても綺麗だが、あたしは何に笑われているのかちょっとよく分からない。

「どうしてですか?」

「君が中心に回っているからさ」

「あたしが中心……?」

「その輪は君を中心に回っているのだとしたら、君が行動を変えないと変わらないだろうね」

 まぁ……確かに教室ではあたしを中心に皆集まってくれた。
 でも、皆あたしの話をしてなんか争ってる感があったな。
 話題の共通項があたしになっちゃうから自然とそうなるんだろうけど……。

「でも羽金先輩とリアンになる話をした時が一番雰囲気おかしくなりましたよ?」

 お通夜でしたよアレは。

「ふふ、そうだろうね。それは私も想像がつく」

「じゃあ、羽金先輩のせいでもあります」

 それも私の行動だけが原因と言われるとちょっとツラい。

「私は楪君と一番距離が遠かったからね、これくらい大胆に行かないとさ」

 先輩と後輩による距離感はあるのは確かだが。
 何もあたしとここまで近く必要はなかっただろうに。

「それはそうとして、さ」

 羽金先輩はマグカップをテーブルに置く。
 何となくあたしもそれに倣った。
 すると羽金先輩はあたしの方に肩を寄せて、こちらを注視してくる。

「これからどうする?」

「……ど、どうとは」

 するりと指先が伸びて、あたしの顎をつままれる。
 お、おい……何か見た事あるよ、これ。

「君は、私との時間をどこまで深く過ごしたいのかってこと」

 蠱惑的な笑みを浮かべて、その指先はまた唇に触れる。
 ……これっ、羽金先輩との好感度を左右するイベントじゃんっ!
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