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食堂にて
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航海七日目。俺の体調が回復したので、皆で船の食堂で食事をする事に。
オルさんみたいな貴族クラスになると、わざわざ食堂で食事をしたりしない。アンリさんみたいな使用人や、俺みたいな従僕が、食堂のキッチンで作られた料理を、部屋まで運んでくるからだ。
それと言うのも食堂は人が集まる場であり、人が集まれば諍いが起こるのが世の必定だから。らしい。中々に治安が悪いぞ異世界。
今回は俺がせっかく船旅をしているのだから、船室に籠もるばかりでは滅入る。と愚痴ったので、食堂での食事が実現した形だ。
食堂は賑わっていた。やはり貴族やら豪商みたいな、上流階級っぽい格好の人たちの姿は見受けられなかったが、結構な数の人々が飲み食いをしている。
俺たちは空いている席に座ると、俺とアンリさんで食堂のカウンターまで食事を取りに行く。
食事は船賃に含まれており、内容は日替わりで決められている。それは貴族であろうが冒険者であろうが変わらない。それにプラスしてお金を払う事で、付け合わせが増えたりお酒が飲めたりするシステムだ。
今日の献立は全粒粉のパンに塩漬け肉、それに豆と葉野菜のスープだった。一日の献立は決まっているので、朝昼晩これだ。流石に飽きるので、俺はお金を支払い全員分の果物を追加した。イルミンと言うさくらんぼのような果物だ。
それを持って席まで戻ってくると、バヨネッタさんとオルさんが酔っ払いに絡まれていた。成程、治安が悪い。
「お高くとまってんじゃねえぞ、お貴族様がよう!」
定型文みたいな絡み方だ。冒険者然としたチンピラが六人、俺たちの席を囲うようにして不平不満を口にしている。そんなものは自分の土地の領主にでも言えば良いのに。とも思うが、言えば反逆罪にでも問われて死罪にでもなるのだろうか? この場で絡んでいるのは、酒のせい? それとも船旅で気が大きくなっているから?
などと色々思考を巡らせてボーッと突っ立っていたら、バヨネッタさんが俺とアンリさんの存在に気付いた。
ダァンッ!
いきなり金の拳銃を天井にぶっ放すバヨネッタさん。その銃声に、一瞬にして食堂は静かになり、衆目がこちらに向けられる。
「あれって、海賊退治で大暴れした魔女じゃないか?」
「え!? 今回の襲撃で、ほとんどの海賊を一人で倒したって言う?」
「死んだな、あの絡んだ奴ら」
口々にバヨネッタさんの先の活躍を囁き合う食堂の乗客たち。対照にそれを耳にして絡んできたチンピラたちは顔を真っ青にしていく。
「去りなさい。そして二度と私の視界に入らない事ね」
バヨネッタさんの言葉に、「し、失礼しました!!」とチンピラたちは謝罪し、そのまま食堂を出て行ったのだった。
「なんかすみません」
「何故ハルアキが謝るの?」
俺がテーブルに食事を置きながら謝ると、バヨネッタさんに怪訝な顔をされた。
「いや、俺が食堂で食事がしたいなんて言わなければこんな事には」
「確かにそうね。でも、本当に食堂で食事をしたくなければ、私は断っていたわ」
バヨネッタさんの言葉にオルさんやアンリさんが首肯する。まあ、そう思って貰っているなら、ありがたい。と思うべきか。
食事としてはパンはなんか硬いし、肉は当然しょっぱいし、スープはなんかちょっと酸っぱかった。スープの葉野菜が酢漬けで、味付けのメインになっているようだ。
なんと言うか、あまり美味しくない食事なのだが、これまでの七日間ずっとこんな感じなのでもう慣れている。ただ、家の味は恋しくなるが。
「しかし、海賊退治、バヨネッタさん大活躍だったみたいですね」
無言で食事もなんだから、先程乗客たちが囁いていた事をバヨネッタさんに振る。
「別にどうと言う事はないわ。あの海賊退治の本当の立役者はハルアキなんだし」
「俺が?」
意味が分からず首を傾げる。
「あなたの勘の良さを初見で知っていたから、私は何か起こると思ってこの船の船長たちに話に行ったのよ。そうしたら案の定と言うべきか、海賊が現れたの」
はあ、あの悪寒が誰かの役に立つ事もあるんだねえ。
「多分だけど、ハルアキの勘の良さはギフトね」
「ギフト……ですか?」
バヨネッタさんにそう言われ、思い浮かぶのは、全然違うと分かっていても、季節の贈り物とか、結婚の引き出物である。
「この世において、神の力の一端である『能力』を行使するには、およそ三種類の方法があるのよ」
と語りだすバヨネッタさん。へえ、三種類。
「一つが魔法陣や魔道具を駆使して行使される『魔法』。もう一つが神や天使の祝福によって行使が可能になる『スキル』。そして最後が本人が生まれ持ち神から授かった天恵『ギフト』よ」
成程、俺は生来『勘の良さ』なり『危機回避』だかのギフトを持って生まれてきたって訳か。
「いや俺、異世界人ですけど?」
俺はこの世界の住人じゃないから、魔法やスキルとは無縁だと思うんだが。
「そうね。ハルアキの世界ではあまり意味がなかったかも知れないわね。だってハルアキの世界ではレベルアップとかしないのでしょう?」
そうだ。レベルアップしなければ、『勘の良さ』や『危機回避』もほとんど意味をなさないだろう。俺が地球でそれに気付かず生活していたとしても不思議じゃない。
「でもそれなら、バヨネッタさんの『鑑定』で見抜けなかったんですか?」
俺にギフトがあると言うなら、バヨネッタさんなり、桂木翔真なりが気付いていないのはおかしい。
「ギフトは隠れステータスなのよ。『鑑定』では見抜けないわ」
そうなのか、でもそれなら納得だ。そしてもう一つ納得した事がある。あの多重事故だ。
あの天使が起こした多重事故は、死者重症者行方不明者を多数出した大事故だった。その中で俺は軽症。友人たち五人がとんでもない目に合っていたと言うのに。これももしかしたら俺のギフトのお陰だったのかも知れない。
まあ、ギフトのお陰で今まで生き残れてきたんだとしたら、俺にそんなギフトを贈ってくれた神様に感謝だな。
オルさんみたいな貴族クラスになると、わざわざ食堂で食事をしたりしない。アンリさんみたいな使用人や、俺みたいな従僕が、食堂のキッチンで作られた料理を、部屋まで運んでくるからだ。
それと言うのも食堂は人が集まる場であり、人が集まれば諍いが起こるのが世の必定だから。らしい。中々に治安が悪いぞ異世界。
今回は俺がせっかく船旅をしているのだから、船室に籠もるばかりでは滅入る。と愚痴ったので、食堂での食事が実現した形だ。
食堂は賑わっていた。やはり貴族やら豪商みたいな、上流階級っぽい格好の人たちの姿は見受けられなかったが、結構な数の人々が飲み食いをしている。
俺たちは空いている席に座ると、俺とアンリさんで食堂のカウンターまで食事を取りに行く。
食事は船賃に含まれており、内容は日替わりで決められている。それは貴族であろうが冒険者であろうが変わらない。それにプラスしてお金を払う事で、付け合わせが増えたりお酒が飲めたりするシステムだ。
今日の献立は全粒粉のパンに塩漬け肉、それに豆と葉野菜のスープだった。一日の献立は決まっているので、朝昼晩これだ。流石に飽きるので、俺はお金を支払い全員分の果物を追加した。イルミンと言うさくらんぼのような果物だ。
それを持って席まで戻ってくると、バヨネッタさんとオルさんが酔っ払いに絡まれていた。成程、治安が悪い。
「お高くとまってんじゃねえぞ、お貴族様がよう!」
定型文みたいな絡み方だ。冒険者然としたチンピラが六人、俺たちの席を囲うようにして不平不満を口にしている。そんなものは自分の土地の領主にでも言えば良いのに。とも思うが、言えば反逆罪にでも問われて死罪にでもなるのだろうか? この場で絡んでいるのは、酒のせい? それとも船旅で気が大きくなっているから?
などと色々思考を巡らせてボーッと突っ立っていたら、バヨネッタさんが俺とアンリさんの存在に気付いた。
ダァンッ!
いきなり金の拳銃を天井にぶっ放すバヨネッタさん。その銃声に、一瞬にして食堂は静かになり、衆目がこちらに向けられる。
「あれって、海賊退治で大暴れした魔女じゃないか?」
「え!? 今回の襲撃で、ほとんどの海賊を一人で倒したって言う?」
「死んだな、あの絡んだ奴ら」
口々にバヨネッタさんの先の活躍を囁き合う食堂の乗客たち。対照にそれを耳にして絡んできたチンピラたちは顔を真っ青にしていく。
「去りなさい。そして二度と私の視界に入らない事ね」
バヨネッタさんの言葉に、「し、失礼しました!!」とチンピラたちは謝罪し、そのまま食堂を出て行ったのだった。
「なんかすみません」
「何故ハルアキが謝るの?」
俺がテーブルに食事を置きながら謝ると、バヨネッタさんに怪訝な顔をされた。
「いや、俺が食堂で食事がしたいなんて言わなければこんな事には」
「確かにそうね。でも、本当に食堂で食事をしたくなければ、私は断っていたわ」
バヨネッタさんの言葉にオルさんやアンリさんが首肯する。まあ、そう思って貰っているなら、ありがたい。と思うべきか。
食事としてはパンはなんか硬いし、肉は当然しょっぱいし、スープはなんかちょっと酸っぱかった。スープの葉野菜が酢漬けで、味付けのメインになっているようだ。
なんと言うか、あまり美味しくない食事なのだが、これまでの七日間ずっとこんな感じなのでもう慣れている。ただ、家の味は恋しくなるが。
「しかし、海賊退治、バヨネッタさん大活躍だったみたいですね」
無言で食事もなんだから、先程乗客たちが囁いていた事をバヨネッタさんに振る。
「別にどうと言う事はないわ。あの海賊退治の本当の立役者はハルアキなんだし」
「俺が?」
意味が分からず首を傾げる。
「あなたの勘の良さを初見で知っていたから、私は何か起こると思ってこの船の船長たちに話に行ったのよ。そうしたら案の定と言うべきか、海賊が現れたの」
はあ、あの悪寒が誰かの役に立つ事もあるんだねえ。
「多分だけど、ハルアキの勘の良さはギフトね」
「ギフト……ですか?」
バヨネッタさんにそう言われ、思い浮かぶのは、全然違うと分かっていても、季節の贈り物とか、結婚の引き出物である。
「この世において、神の力の一端である『能力』を行使するには、およそ三種類の方法があるのよ」
と語りだすバヨネッタさん。へえ、三種類。
「一つが魔法陣や魔道具を駆使して行使される『魔法』。もう一つが神や天使の祝福によって行使が可能になる『スキル』。そして最後が本人が生まれ持ち神から授かった天恵『ギフト』よ」
成程、俺は生来『勘の良さ』なり『危機回避』だかのギフトを持って生まれてきたって訳か。
「いや俺、異世界人ですけど?」
俺はこの世界の住人じゃないから、魔法やスキルとは無縁だと思うんだが。
「そうね。ハルアキの世界ではあまり意味がなかったかも知れないわね。だってハルアキの世界ではレベルアップとかしないのでしょう?」
そうだ。レベルアップしなければ、『勘の良さ』や『危機回避』もほとんど意味をなさないだろう。俺が地球でそれに気付かず生活していたとしても不思議じゃない。
「でもそれなら、バヨネッタさんの『鑑定』で見抜けなかったんですか?」
俺にギフトがあると言うなら、バヨネッタさんなり、桂木翔真なりが気付いていないのはおかしい。
「ギフトは隠れステータスなのよ。『鑑定』では見抜けないわ」
そうなのか、でもそれなら納得だ。そしてもう一つ納得した事がある。あの多重事故だ。
あの天使が起こした多重事故は、死者重症者行方不明者を多数出した大事故だった。その中で俺は軽症。友人たち五人がとんでもない目に合っていたと言うのに。これももしかしたら俺のギフトのお陰だったのかも知れない。
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