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申し訳ございません。あいにく先約がございまして。
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場所を移す事になり、多岐個人のマンションに連れてこられ、大きなソファーに座らされている。
室内は、落ち着いたインテリアで部屋に漂う空気も優しい感じがした。
本当ならリラックスするところだが今は違う。
ものすごく落ち着かなかった。
なぜ自分はこんなところにいるのだろうか?
営業マンの仮面がない今、俺は素の日下朝日に戻っている。
どんな顔をしてここに居ればいいのか、それが分からなかった。
戸惑う俺をよそに、多岐は髙そうなカップに注がれたコーヒーをことりと俺の前に置いた。
どこまでも優雅でどこまでも優しい空気を醸し出している。
さっきの必死さはどこへいったのか……。
俺はカップを手に取ることもなく、じっと多岐をみつめた。
「それで、話って?」
我ながら声が硬い。何を言われるのか……だいたいは想像がつく。
おそらく二人の事だろう。多岐と三木の―――。
本人から面と向かって告げられるのは想像しただけでもつらい。
出来れば聞きたくなんかない。
「もう少しで来ると思うので少々お待ちいただけるでしょうか。―――来たら、お話します」
多岐一人が話すのではなく三木が来たら二人の事を二人で話す、ということなのだろうか…。
どこまでも残酷だ。
「そんなに不安そうな顔しないでください。僕たちは……『ぴんぽーん』」
呼び鈴の音が多岐の言葉を遮った。
『僕たち』多岐は僕たちと言った。
僕たち、俺はその中に含まれない。
自分一人が蚊帳の外にいる感じがして……心がじくじくと痛んだ。
玄関でぼそぼそと何かをしゃべっている二人の声が聞こえた。
内容まではわからなかったが疎外感が強まる。
しばらくしてリビングにやって来たのは、やはり三木だった。
手にはなぜかバラの花束を持っていた。
二人が俺の前に座った。俺は二人を直視できなくて視線をさっと外した。
「日下―――。話を聞いてほしい」
「………」
ガサガサという音の後にバラの花束が俺の腕の中に押し付けられた。
「え?」
俺は思わず三木の顔を見た。
三木はとても真剣な瞳で俺の事をみつめていた。その瞳に熱を宿して。
多岐へちらりと視線を向けると三木と同様に真剣な眼差しで俺の事を見ていた。
二人の様子に俺は観念して一つ息を吐くと佇まいを正した。
二人が真剣に俺に言うことがあるというのなら、俺も真剣に聞かなくてはいけない。二人のことが大事だから。
「きいてやる。話してみろ」
「日下、俺はお前が好きだ。可愛くてしょうがない」
「へ?お、お、お、俺???」
覚悟を決めたはずが、いきなりの告白に俺は動揺を隠せなかった。
多岐の事が好き、ではなく俺の事が好きと三木が言ったからだ。
「いつ……から?」
「入社して2年目くらいの時だったかな。雨の日に午後周りをしていたお前が上半身裸でずぶ濡れで帰って来たことがあっただろう?」
あぁ、あの日か。
6年前のあの日のことを思い浮かべ意識を6年前のあの日に飛ばしてしまっていた。
「―――で……、……だから、俺は………だ」
三木の告白を殆ど聞いていなかった。しまった!と思ったが聞いていなかった、とは言えず……。
その事に三木も気が付いたのだろう。苦笑いを浮かべている。
「まぁ、なんだ、そういうことだ。俺は言いたいことは全て言った。たとえお前に届いていなくても……。悔いはない」
「え……あ……。ごめ……ん」
「ん。気にすんな。俺とお前は一番のともだちだ。な、そうだろう?」
「あ、あぁ」
三木はにかっと笑って右手を前に出してきた。
俺もおずおずと右手を出し、こつんとぶつけた。
「じゃ、ともだちの俺は立ち去るわ。あとは王子様にまかせた」
三木は多岐を見てそう言い多岐が頷くのを確認すると本当に帰って行った。
室内は、落ち着いたインテリアで部屋に漂う空気も優しい感じがした。
本当ならリラックスするところだが今は違う。
ものすごく落ち着かなかった。
なぜ自分はこんなところにいるのだろうか?
営業マンの仮面がない今、俺は素の日下朝日に戻っている。
どんな顔をしてここに居ればいいのか、それが分からなかった。
戸惑う俺をよそに、多岐は髙そうなカップに注がれたコーヒーをことりと俺の前に置いた。
どこまでも優雅でどこまでも優しい空気を醸し出している。
さっきの必死さはどこへいったのか……。
俺はカップを手に取ることもなく、じっと多岐をみつめた。
「それで、話って?」
我ながら声が硬い。何を言われるのか……だいたいは想像がつく。
おそらく二人の事だろう。多岐と三木の―――。
本人から面と向かって告げられるのは想像しただけでもつらい。
出来れば聞きたくなんかない。
「もう少しで来ると思うので少々お待ちいただけるでしょうか。―――来たら、お話します」
多岐一人が話すのではなく三木が来たら二人の事を二人で話す、ということなのだろうか…。
どこまでも残酷だ。
「そんなに不安そうな顔しないでください。僕たちは……『ぴんぽーん』」
呼び鈴の音が多岐の言葉を遮った。
『僕たち』多岐は僕たちと言った。
僕たち、俺はその中に含まれない。
自分一人が蚊帳の外にいる感じがして……心がじくじくと痛んだ。
玄関でぼそぼそと何かをしゃべっている二人の声が聞こえた。
内容まではわからなかったが疎外感が強まる。
しばらくしてリビングにやって来たのは、やはり三木だった。
手にはなぜかバラの花束を持っていた。
二人が俺の前に座った。俺は二人を直視できなくて視線をさっと外した。
「日下―――。話を聞いてほしい」
「………」
ガサガサという音の後にバラの花束が俺の腕の中に押し付けられた。
「え?」
俺は思わず三木の顔を見た。
三木はとても真剣な瞳で俺の事をみつめていた。その瞳に熱を宿して。
多岐へちらりと視線を向けると三木と同様に真剣な眼差しで俺の事を見ていた。
二人の様子に俺は観念して一つ息を吐くと佇まいを正した。
二人が真剣に俺に言うことがあるというのなら、俺も真剣に聞かなくてはいけない。二人のことが大事だから。
「きいてやる。話してみろ」
「日下、俺はお前が好きだ。可愛くてしょうがない」
「へ?お、お、お、俺???」
覚悟を決めたはずが、いきなりの告白に俺は動揺を隠せなかった。
多岐の事が好き、ではなく俺の事が好きと三木が言ったからだ。
「いつ……から?」
「入社して2年目くらいの時だったかな。雨の日に午後周りをしていたお前が上半身裸でずぶ濡れで帰って来たことがあっただろう?」
あぁ、あの日か。
6年前のあの日のことを思い浮かべ意識を6年前のあの日に飛ばしてしまっていた。
「―――で……、……だから、俺は………だ」
三木の告白を殆ど聞いていなかった。しまった!と思ったが聞いていなかった、とは言えず……。
その事に三木も気が付いたのだろう。苦笑いを浮かべている。
「まぁ、なんだ、そういうことだ。俺は言いたいことは全て言った。たとえお前に届いていなくても……。悔いはない」
「え……あ……。ごめ……ん」
「ん。気にすんな。俺とお前は一番のともだちだ。な、そうだろう?」
「あ、あぁ」
三木はにかっと笑って右手を前に出してきた。
俺もおずおずと右手を出し、こつんとぶつけた。
「じゃ、ともだちの俺は立ち去るわ。あとは王子様にまかせた」
三木は多岐を見てそう言い多岐が頷くのを確認すると本当に帰って行った。
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