申し訳ございません。あいにく先約がございまして。

ハリネズミ

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三木志朗の受難

(5)

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諦めたはずの二度目の恋。
俺は未練がましく気が付けば志摩を目で追っていた。

このままでは仕事にならない。
気持ちを切り替える為に、休憩と称して屋上に上りたばこをくゆらせる。

情けないな…。
俺はもっと物分かりのいい性格だと思っていた。
日下の時は辛く悲しかったけどそれはいずれ時間が解決してくれる類の物だ。
しかし、今のこの気持は少し違っていた。いくら時間が経過したとしてもこの痛みは癒える気がしない。

出来上がった関係を壊すべきじゃないなんて恰好つけた事思ってたくせに志摩の事を諦める事が出来ないでいる。
「あの日俺たちキスしましたよね」って言ってしまいたくなる。
志摩をあの男から奪って、あの男より愛して、あの男より大事にして、あの男より…。

あぁ、もう末期だ。

吐き出す煙と一緒に志摩への気持ちも出て行ってしまえばいいのに。

空に消えていく煙を見ながらそう思った。




*****
「三木」
振り返ると志摩が立っていた。
「し…志摩さんも休憩、ですか?」
口角を上げ不自然にならないような笑顔を作る。

志摩はそれを見て眉間に皺を寄せた。

あぁ、この人にはバレちゃうんだったか。
今度は隠す事なく溜め息をつく。

「悩みでもあるのか?私でよければ相談にのるぞ?」
無表情のはずなのに少し心配そうに見える。
そう見えるのは俺の願望か。

「いえ…。ちょっと疲れただけですよ」
無理に笑う事はしないが口では嘘をつく。
認めなければ灰色で疑わしくあっても真実にはならないから。

「先日私は、お前は気持ちを隠すのがうまい、と言ったな。私以外気づいていない、とも」
「はい…」
「それは、私もそうだからだ。私は気持ちを隠すのがお前よりもうまい」
「?」

何を言いたいのか戸惑っていると、
志摩の綺麗な顔が近づいてきて、あ!と思った時には唇が俺の唇に触れていた。
「え」

突然の事に硬直する俺。
無表情のはずの志摩は頬を薄っすらと朱に染めはにかむように笑った。

どきどきどきどきどき。
心臓が煩くて何も聞こえない。

志摩の唇が「す・き・だ」と動く。
ぶわりと顔が真っ赤になるのが分かった。

「あ…あの……あの……!」
「三木は、私の事…どう思ってる?」
「いや、だって…静流くん…は?」

一瞬ぽかんとした顔をする志摩。
志摩のその反応に俺の方がぽかんとなる。

「しずは、静流は弟だけど…?私との付き合いに弟の許可が……?」
「お…とう、と…?」
「年は離れているが血の繋がった弟だ。あ…私を送ってくれた時に何か失礼な事でも?あいつはちょっとイタズラ好きで困る」
「あ、いえ。何も」
弟…。
じゃあこの恋は終わらせなくていいのか。
「あは…」

滲んできた涙を誤魔化すように声を上げて笑った。
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