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第82話 チーム戦学年トーナメント決勝戦
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翌日の2回戦でもブルーホライズンの快進撃は続く。圧倒的な力の差を見せつけて勝利を掴んで準決勝にコマを進めていく。
さて彼女たちの現在の能力であるが、わかりやすくステータスをここに挙げてみる。
【竹内 真美】 16歳 女
職業 剣士
レベル 20
体力 110
魔力 120
敏捷性 104
精神力 145
知力 44
所持スキル 剣術ランク3 パーティー指揮ランク2 二刀流剣術ランク2 身体強化ランク1
【蛯名 ほのか】 16歳 女
職業 剣士
レベル 20
体力 107
魔力 82
敏捷性 123
精神力 101
知力 44
所持スキル 剣術ランク3 敏捷性上昇ランク2 盾術ランク2 身体強化ランク1
【片野 渚】 16歳 女
職業 槍士
レベル 20
体力 117
魔力 79
敏捷性 88
精神力 85
知力 39
所持スキル 槍術ランク3 気配察知ランク3 風属性魔法ランク1 身体強化ランク1
【山尾 美晴】 16歳 女
職業 戦士
レベル 20
体力 142
魔力 34
敏捷性 69
精神力 72
知力 29
所持スキル 戦斧術ランク3 盾術ランク3 気合強化ランク3 身体強化ランク1
【荒川 絵美】 16歳 女
職業 槍士
レベル 20
体力 91
魔力 60
敏捷性 79
精神力 85
知力 40
所持スキル 槍術ランク3 敏捷性上昇ランク2 身体強化ランク1
【山浦千里】 16歳 女
職業 魔法使い
レベル 22
体力 99
魔力 198
敏捷性 70
精神力 98
知力 52
所持スキル 剣術ランク1 火属性魔法ランク2 氷属性魔法ランク1 水属性魔法ランク1
対戦する各校のチームメンバーがおよそレベル12~15で体力の数値にすると60~70程度であるのと比較すれば、個々の強さは一目瞭然。しかも聡史に鍛えられた確固たる連携によるプラスアルファまで考えるとオープントーナメントに出場してもそこそこ活躍ができる可能性すら秘めている。
そのうえランク上昇のボーナスともいうべきか、各自に新たなスキルが生まれているのでますます個人の能力が上昇している。
ここまで安定して力を発揮できるようになったのは、やはり魔法使いの千里の加入が大きい。元々千里の職業は剣士であったが、このところ魔法に専念しているためかいつの間にか魔法使いに上書きされている。どうやら職業というのはかなり柔軟性があるようで、しばらく別の職業の訓練をしていれば新たに上書きされるらしい。
聡史が元々魔法剣士だったのが、あのような大層な職業に変わったのもこのような効果かもしれない。ただし美鈴、明日香ちゃん、カレンの3人は、いまだに職業の記載がないのはいったいどのような意味があるのか不明。
◇◇◇◇◇
さて、1学年チーム戦トーナメントの出場者に関して一時は美鈴の生徒会副会長としての進退が懸かる事態まで発展した例の一件だが、ブルーホライズンの快進撃を目の当たりにして騒ぎを起こしたグループの誰もがその口を閉じざるを得ない。
最初からある程度ブルーホライズンの活躍を予想していた上級生たちは、小さくなって応援席に座っている1年生グループをニヤニヤしながら見ている。「ほら、言わんこっちゃない」「未熟者は分を弁えていろ」という呟きと失笑が上級生の間から漏れるのは致し方ないであろう。
このスタンドに流れるムードを察した桜は、聡史に向かって自己流の解決策を提案する。
「お兄様、どうもあの一角がお通夜のような状態です。よかったらこの私が直々に沈み込んだムードを明るくして差しあげましょうか?」
「嫌な予感しかしないが、一応どんな方法を用いるのか聞かせてもらおうか」
「お兄様、沈んだ空気を払拭するには体を動かすしかございませんわ! この私があの連中を訓練で死ぬほど追い詰めて差し上げます。あのような煩わしい連中は何も考えないように頭の中身をきれいさっぱり作り変えればよろしいのです」
「予想通りの回答をありがとう。いいから大人しくしていろよ。余計な被害者が増えるだけだからな」
「お兄様、これでも私はずいぶん妥協しておりますわ。本来ならばとっくに校舎裏に…」
「シャァァラップ! いいから相手が自分から進んでお前の訓練を希望するまでは動くんじゃない!」
「どうにも不完全燃焼ですわね。仕方がありませんから連中に関しては手出しを控えるようにします」
まだ不満が残る表情をしている桜だが、しぶしぶ自分の意見を引っ込めている。これ以上騒ぎが大きくなるのを食い止めた聡史はホッと胸を撫で下ろすのであった。
◇◇◇◇◇
八校戦は2週目の水曜日を迎えて、いよいよチーム戦の準決勝と決勝戦を迎える。午前中に各学年の準決勝を行い、午後には決勝戦が組まれている。
第1魔法学院では、ブルーホライズンと近藤勇人が率いる〔蒼き稲妻〕の2チームが準決勝にコマを進めている。
朝9時に開始される第1試合には第1魔法学院の代表であるブルーホライズンが出場。ここまで圧倒的に対戦相手を下してきたブルーホライズンは、この時点で優勝最有力候補に数えられている。
そして彼女たちは大方の予想通りに準決勝を勝ち上がる。同時に第5試合でも近藤勇人率いる蒼き稲妻が勝ち上がって、第1魔法学院の応援席は一部を除いて大いに盛り上がりを見せているのであった。
◇◇◇◇◇
午後になっていよいよ決勝戦が開始される。
この試合のブルーホライズンはこれまでとガラリと試合の入り方を変えている。
盾を手にする美晴が開始戦前に立ってその直後に渚が待機する態勢だけでも今までとは違うのだが、そこにもってきて、ほのかが二人とはやや離れた場所で左手には普段よりも大型の盾を持ってダッシュする構えを見せている。これまでは自陣深くから千里の魔法を合図に戦闘に入っていたのとはガラリとフォーメーションを入れ替えた形。
これは盾を装備するほのかが絵美に代わって入ったことで、彼女も飛んでくる魔法に対処が可能であるゆえの変更。だが、この並び方を見て対戦相手の第5魔法学院は大いに戸惑っている。
1回戦で勇者を破った第5魔法学院のチームは、カレンの魔法によって負傷から回復したリーダーの分析能力によってここまで勝ち残ってきている。もちろん彼はブルーホライズンの戦いぶりを分析して対策を立てたつもり。
だがその対策の根本がブルーホライズンのフォーメーションを見た瞬間に崩れ去ったよう。まさか決勝になってフォーメーションを変えるとは、奇策に属する冒険と言われても仕方がない。だがブルーホライズンの面々の表情には確固たる自信が漲っている。
じつはこの戦闘隊形こそがブルーホライズンにとってはゴブリンの集団を相手取る際の本来の姿。飛んでくる魔法や弓矢を前衛の美晴とほのかの盾で防ぎながら相手に打ち掛かっていくやり方こそが、一番戦い慣れたフォーメーションといえよう。
「試合開始ぃぃ!」
審判の合図によって準決勝が幕を開ける。同時に美晴とほのかが前方を警戒しながら前進を開始。美晴の直後には槍を構える渚も続いていく。
第5魔法学院の面々も最初の戸惑いから立ち直って、これを何とか迎え撃とうと動き出す。魔法使いとリーダーが前進し始めた美晴とほのかに向かってファイアーボールを放つが、彼女たちが手にする盾によって簡単に防がれていく。味方の魔法が防がれた状況を見た第五魔法学院の前衛は、前進してくるブルーホライズンの3名を押し留めるために動かざるを得ない。
彼らはそれぞれがブルーホライズンに打ち掛かっていく。ブルーホライズンの三人はわざと中央を開ける形で左右に展開しながら、打ち掛かってくる第5魔法学院の前衛を相手にしている。
前衛の味方が接近戦に持ち込んでいる状況を見た第5魔法学院の魔法使いは同士討ちを避ける意味で魔法の発動を一旦休止。だがこれこそが真美が立てた作戦に他ならない。
「千里、一気に決めて!」
「ファイアーボール!」
千里が広げた左右の手からは同時に2発のファイアーボールが飛び出していく。
「えっ!」
慌てたのは第5魔法学院のリーダー。真っ直ぐに陣地に向かって2発のファイアーボールが飛んでくるが、速度が速すぎて対処できない。他に手立てもなく彼はその場に蹲るしかないという絶体絶命の状況。
ドカドカーン!
2発のファイアーボールはリーダーが蹲っている場所から5メートル離れた地点に正確に着弾して爆風を巻き起こす。ようやく怪我から回復したばかりの第5魔法学院のリーダーは、爆風に煽られて陣地の台上から地面に叩き落されている。この大会において最も不幸な目に遭ったのは、おそらく彼ではないだろうか。
「そこまでぇぇ! 勝者、赤!」
リーダーが陣地の台から落ちたのを見届けた審判が試合の終了を告げる。これにて1学年チーム戦の決勝の勝敗が決する。Eクラスの女子たちで結成されたブルーホライズンが、八校戦という晴れ舞台でついに栄光の座を掴んだ瞬間であった。
「やったー! ついに優勝だぁぁぁ!」
「わ、私たち優勝しちゃったのね」
「何事も一番になるのは気分がいいなぁ」
口々に感想を述べながら彼女たちは抱き合って喜びを分かち合っている。これが底辺から栄光を掴んだ者の本来の姿だろう。優勝したのがいかにも不本意などという不届きな感想を口にする明日香ちゃんが古今東西どこにも見当たらない変わり者に違いない。
「さあ、一番先に伝えたい人の所に行きましょう!」
挨拶が終わると、真美の掛け声でブルーホライズンのメンバーが駆け足で聡史のいるスタンドに向かう。
「「「「「師匠! 本当にありがとうございました~!」」」」」
「よくここまで頑張ったな。だがここがゴールではないから、明日からもビシビシいくぞ」
最底辺からここまで成長した姿を見た聡史も、この場は目を細めて彼女たちを褒めている。だが褒めるだけではなくて気を引き締めることも忘れないのは、いかにも聡史らしい。
「「「「「「はい、よろしくお願いします!」」」」」
5人揃ったこの返事も、1週間訓練免除につられて買収に応じるどこかの誰とは大違い。明日香ちゃんは彼女たちの爪の垢でも飲んでもらいたい。
この後の3学年チーム戦も勇人の活躍で勝利を飾り、第1魔法学院の応援席は大いに盛り上がる。
残る種目はデビル&エンジェルが出場するチーム戦オープントーナメントのみで八校戦もいよいよ大詰めを迎えるのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「面白かった」
「続きが気になる」
「早く投稿して!」
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さて彼女たちの現在の能力であるが、わかりやすくステータスをここに挙げてみる。
【竹内 真美】 16歳 女
職業 剣士
レベル 20
体力 110
魔力 120
敏捷性 104
精神力 145
知力 44
所持スキル 剣術ランク3 パーティー指揮ランク2 二刀流剣術ランク2 身体強化ランク1
【蛯名 ほのか】 16歳 女
職業 剣士
レベル 20
体力 107
魔力 82
敏捷性 123
精神力 101
知力 44
所持スキル 剣術ランク3 敏捷性上昇ランク2 盾術ランク2 身体強化ランク1
【片野 渚】 16歳 女
職業 槍士
レベル 20
体力 117
魔力 79
敏捷性 88
精神力 85
知力 39
所持スキル 槍術ランク3 気配察知ランク3 風属性魔法ランク1 身体強化ランク1
【山尾 美晴】 16歳 女
職業 戦士
レベル 20
体力 142
魔力 34
敏捷性 69
精神力 72
知力 29
所持スキル 戦斧術ランク3 盾術ランク3 気合強化ランク3 身体強化ランク1
【荒川 絵美】 16歳 女
職業 槍士
レベル 20
体力 91
魔力 60
敏捷性 79
精神力 85
知力 40
所持スキル 槍術ランク3 敏捷性上昇ランク2 身体強化ランク1
【山浦千里】 16歳 女
職業 魔法使い
レベル 22
体力 99
魔力 198
敏捷性 70
精神力 98
知力 52
所持スキル 剣術ランク1 火属性魔法ランク2 氷属性魔法ランク1 水属性魔法ランク1
対戦する各校のチームメンバーがおよそレベル12~15で体力の数値にすると60~70程度であるのと比較すれば、個々の強さは一目瞭然。しかも聡史に鍛えられた確固たる連携によるプラスアルファまで考えるとオープントーナメントに出場してもそこそこ活躍ができる可能性すら秘めている。
そのうえランク上昇のボーナスともいうべきか、各自に新たなスキルが生まれているのでますます個人の能力が上昇している。
ここまで安定して力を発揮できるようになったのは、やはり魔法使いの千里の加入が大きい。元々千里の職業は剣士であったが、このところ魔法に専念しているためかいつの間にか魔法使いに上書きされている。どうやら職業というのはかなり柔軟性があるようで、しばらく別の職業の訓練をしていれば新たに上書きされるらしい。
聡史が元々魔法剣士だったのが、あのような大層な職業に変わったのもこのような効果かもしれない。ただし美鈴、明日香ちゃん、カレンの3人は、いまだに職業の記載がないのはいったいどのような意味があるのか不明。
◇◇◇◇◇
さて、1学年チーム戦トーナメントの出場者に関して一時は美鈴の生徒会副会長としての進退が懸かる事態まで発展した例の一件だが、ブルーホライズンの快進撃を目の当たりにして騒ぎを起こしたグループの誰もがその口を閉じざるを得ない。
最初からある程度ブルーホライズンの活躍を予想していた上級生たちは、小さくなって応援席に座っている1年生グループをニヤニヤしながら見ている。「ほら、言わんこっちゃない」「未熟者は分を弁えていろ」という呟きと失笑が上級生の間から漏れるのは致し方ないであろう。
このスタンドに流れるムードを察した桜は、聡史に向かって自己流の解決策を提案する。
「お兄様、どうもあの一角がお通夜のような状態です。よかったらこの私が直々に沈み込んだムードを明るくして差しあげましょうか?」
「嫌な予感しかしないが、一応どんな方法を用いるのか聞かせてもらおうか」
「お兄様、沈んだ空気を払拭するには体を動かすしかございませんわ! この私があの連中を訓練で死ぬほど追い詰めて差し上げます。あのような煩わしい連中は何も考えないように頭の中身をきれいさっぱり作り変えればよろしいのです」
「予想通りの回答をありがとう。いいから大人しくしていろよ。余計な被害者が増えるだけだからな」
「お兄様、これでも私はずいぶん妥協しておりますわ。本来ならばとっくに校舎裏に…」
「シャァァラップ! いいから相手が自分から進んでお前の訓練を希望するまでは動くんじゃない!」
「どうにも不完全燃焼ですわね。仕方がありませんから連中に関しては手出しを控えるようにします」
まだ不満が残る表情をしている桜だが、しぶしぶ自分の意見を引っ込めている。これ以上騒ぎが大きくなるのを食い止めた聡史はホッと胸を撫で下ろすのであった。
◇◇◇◇◇
八校戦は2週目の水曜日を迎えて、いよいよチーム戦の準決勝と決勝戦を迎える。午前中に各学年の準決勝を行い、午後には決勝戦が組まれている。
第1魔法学院では、ブルーホライズンと近藤勇人が率いる〔蒼き稲妻〕の2チームが準決勝にコマを進めている。
朝9時に開始される第1試合には第1魔法学院の代表であるブルーホライズンが出場。ここまで圧倒的に対戦相手を下してきたブルーホライズンは、この時点で優勝最有力候補に数えられている。
そして彼女たちは大方の予想通りに準決勝を勝ち上がる。同時に第5試合でも近藤勇人率いる蒼き稲妻が勝ち上がって、第1魔法学院の応援席は一部を除いて大いに盛り上がりを見せているのであった。
◇◇◇◇◇
午後になっていよいよ決勝戦が開始される。
この試合のブルーホライズンはこれまでとガラリと試合の入り方を変えている。
盾を手にする美晴が開始戦前に立ってその直後に渚が待機する態勢だけでも今までとは違うのだが、そこにもってきて、ほのかが二人とはやや離れた場所で左手には普段よりも大型の盾を持ってダッシュする構えを見せている。これまでは自陣深くから千里の魔法を合図に戦闘に入っていたのとはガラリとフォーメーションを入れ替えた形。
これは盾を装備するほのかが絵美に代わって入ったことで、彼女も飛んでくる魔法に対処が可能であるゆえの変更。だが、この並び方を見て対戦相手の第5魔法学院は大いに戸惑っている。
1回戦で勇者を破った第5魔法学院のチームは、カレンの魔法によって負傷から回復したリーダーの分析能力によってここまで勝ち残ってきている。もちろん彼はブルーホライズンの戦いぶりを分析して対策を立てたつもり。
だがその対策の根本がブルーホライズンのフォーメーションを見た瞬間に崩れ去ったよう。まさか決勝になってフォーメーションを変えるとは、奇策に属する冒険と言われても仕方がない。だがブルーホライズンの面々の表情には確固たる自信が漲っている。
じつはこの戦闘隊形こそがブルーホライズンにとってはゴブリンの集団を相手取る際の本来の姿。飛んでくる魔法や弓矢を前衛の美晴とほのかの盾で防ぎながら相手に打ち掛かっていくやり方こそが、一番戦い慣れたフォーメーションといえよう。
「試合開始ぃぃ!」
審判の合図によって準決勝が幕を開ける。同時に美晴とほのかが前方を警戒しながら前進を開始。美晴の直後には槍を構える渚も続いていく。
第5魔法学院の面々も最初の戸惑いから立ち直って、これを何とか迎え撃とうと動き出す。魔法使いとリーダーが前進し始めた美晴とほのかに向かってファイアーボールを放つが、彼女たちが手にする盾によって簡単に防がれていく。味方の魔法が防がれた状況を見た第五魔法学院の前衛は、前進してくるブルーホライズンの3名を押し留めるために動かざるを得ない。
彼らはそれぞれがブルーホライズンに打ち掛かっていく。ブルーホライズンの三人はわざと中央を開ける形で左右に展開しながら、打ち掛かってくる第5魔法学院の前衛を相手にしている。
前衛の味方が接近戦に持ち込んでいる状況を見た第5魔法学院の魔法使いは同士討ちを避ける意味で魔法の発動を一旦休止。だがこれこそが真美が立てた作戦に他ならない。
「千里、一気に決めて!」
「ファイアーボール!」
千里が広げた左右の手からは同時に2発のファイアーボールが飛び出していく。
「えっ!」
慌てたのは第5魔法学院のリーダー。真っ直ぐに陣地に向かって2発のファイアーボールが飛んでくるが、速度が速すぎて対処できない。他に手立てもなく彼はその場に蹲るしかないという絶体絶命の状況。
ドカドカーン!
2発のファイアーボールはリーダーが蹲っている場所から5メートル離れた地点に正確に着弾して爆風を巻き起こす。ようやく怪我から回復したばかりの第5魔法学院のリーダーは、爆風に煽られて陣地の台上から地面に叩き落されている。この大会において最も不幸な目に遭ったのは、おそらく彼ではないだろうか。
「そこまでぇぇ! 勝者、赤!」
リーダーが陣地の台から落ちたのを見届けた審判が試合の終了を告げる。これにて1学年チーム戦の決勝の勝敗が決する。Eクラスの女子たちで結成されたブルーホライズンが、八校戦という晴れ舞台でついに栄光の座を掴んだ瞬間であった。
「やったー! ついに優勝だぁぁぁ!」
「わ、私たち優勝しちゃったのね」
「何事も一番になるのは気分がいいなぁ」
口々に感想を述べながら彼女たちは抱き合って喜びを分かち合っている。これが底辺から栄光を掴んだ者の本来の姿だろう。優勝したのがいかにも不本意などという不届きな感想を口にする明日香ちゃんが古今東西どこにも見当たらない変わり者に違いない。
「さあ、一番先に伝えたい人の所に行きましょう!」
挨拶が終わると、真美の掛け声でブルーホライズンのメンバーが駆け足で聡史のいるスタンドに向かう。
「「「「「師匠! 本当にありがとうございました~!」」」」」
「よくここまで頑張ったな。だがここがゴールではないから、明日からもビシビシいくぞ」
最底辺からここまで成長した姿を見た聡史も、この場は目を細めて彼女たちを褒めている。だが褒めるだけではなくて気を引き締めることも忘れないのは、いかにも聡史らしい。
「「「「「「はい、よろしくお願いします!」」」」」
5人揃ったこの返事も、1週間訓練免除につられて買収に応じるどこかの誰とは大違い。明日香ちゃんは彼女たちの爪の垢でも飲んでもらいたい。
この後の3学年チーム戦も勇人の活躍で勝利を飾り、第1魔法学院の応援席は大いに盛り上がる。
残る種目はデビル&エンジェルが出場するチーム戦オープントーナメントのみで八校戦もいよいよ大詰めを迎えるのであった。
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