スキル【迷宮管理者】に目覚めた俺氏、スレ民たちとめちゃくちゃに発展させるw

もかの

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第45話 俺と妹とドラゴン

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『おや、逃走ですか? 逃げられるとお思いで?』

 俺たちが管理者ボードに目を奪われていると、その奥にはやくも召喚した魔物たちの肉壁を突破してきたスサノオの姿が現れた。
 もはや当たり前のようにワイバーンの飛行速度についてきている。

『私は誠実なのでね。有言実行を座右の銘にしているんです。殺すと一度言ったからには逃がしませんよ』
「安心して。逃げる気なんて最初からないんだから」

 スサノオはレイピアをまっすぐ突き刺してくる。
 切っ先が俺の眼前に迫ったところで、いつの間にか移動していたサボリニキがスサノオの腹部に添えた右手から、ゼロ距離で風魔法を放つ。

『(殺傷能力を極限までに減らし、私を吹き飛ばすことだけに特化した風魔法……もし腹部に風穴をあけるつもりであれば無視して、この少年を殺そうと思いましたが、やはりさすがの判断力ですね)』

 さすがのスサノオも耐え切れず、勢いよく吹き飛ばされる。

「氷室ッ! コイツのスキルがどうなったか手短にまとめてくれ!」
「だってよスレ主。スサノオがいない今のうちに、簡潔に教えて」
「そういうことだスキルくん! どうなったんだ!?」
『いやせめてお前は理解しててくれよ』

 あんな小難しいこと言われても分からんて。
 なめるなよ。きゃむるぞ。

『簡単に言えば、無制限に魔物を召喚したり罠を設置したりできるわけではないが、その代わりに召喚できる魔物のランクとか罠のレベルの制限がなくなったってことだ。ただそのランクとかレベルに応じて消費するポイントが多くなる。例えば、ゴブリン1000体とドラゴン1体が同じポイントみたいにな』

 なるほど。
 つまり弱い魔物はめっちゃ召喚できるようになって、めちゃくちゃ強い魔物は召喚できるようになったけど召喚できる個体数には限りがあるってことか。

 …………待って?

「え、ドラゴン召喚できるの?」
『まぁ、ランク制限なくなったしな』
「えまじで? ほんとに? 嘘じゃない?」
『うざいな』
「は?」

 スキルくんに切れながら魔物一覧を開く。
 一番上にあるタブ【並び替え】をタップし、『ランク順』を選択。
 すると、そこには──タップできる色になったドラゴンの文字がトップにあった。


──────
────
──


  ──そして、ファンタジーでは有名なあいつの名前を見つけた。

「えぐ、ドラゴンいるんだけど!」

:ファーwwwwww
:そんなのも設置できるん!?!?
:現代ダンジョン最強種じゃねえかw
:せっかく伝家の宝刀「何も見てない」を使ったのに
:それはさすがにもうちょい良いもの継いでくれよ

 コメントが流れる中、俺は1つのことに気づいた!

「ドラゴンってさ、デカくて移動も早いよな」

:おっ………………そうだな
:流れ変わったな

「ってことはさ────畑仕事が適任だよな!」

 うんうん、広範囲を一気に耕せるし、移動速いから一瞬で終わる。

 最適すぎないか!?
 なぁ、スレ民!!

:過剰すぎるって
:過剰すぎるって
:過剰すぎるって
:全国の農家を泣かせないでもらって


──
────
──────
────
──


「やっぱ、バカでか畑いるかぁ?」

:まぁ、いるよな
:問題はそんなにデカいの作れるかってことだよな
:↑まぁ、マンション作れたしいけるか
:問題は作るのに時間かかることだよな
:↑まぁ、こっちには100億倍あるしな
:問題はどうやって管理するかだよな
:↑それは……たしかに

 っは! てことは…………!

「ドっラゴーーーンっっっ!!!!!」

:だから過剰すぎるんよww
:もうスタンピード、ドラゴンに戦ってもらえよw
:結局ドラゴンに帰ってくるんかよww


──
────
──────
────
──


『そ、速報ですッ! アメリカのダンジョンにて新種の魔物が現れました!
 先ほど、ダンジョン配信を行っていたアメリカの高ランクパーティーが○×ダンジョンのボス部屋に突入したところ、これまでに一度も情報が出ていない新種の魔物、ドラゴンが現れました!
 パーティーメンバーは全員即座に退避したことで無事であるようです。当番組スタッフが生還したパーティーのリーダーに話を伺ったところ、「その姿を見た瞬間、勝てないことを悟った。おそらく、いや絶対に、今この世にいるどんな冒険者でも勝つことは難しいだろう」とのことです。そしてこちらは、配信に映ったドラゴンの姿になります!』
『いやぁ……新種の魔物とはこれまたかなり久しぶりですね……。それも、空想上の生物と言われていたドラゴンとは。おそらくですが、──」

 適当にテレビをつけたまま琴葉と一緒に夕飯の準備をしていると、突然その画面が変わりそんな速報が報道される。
 緊迫した声で伝えているものだから、俺は思わず手を止めてテレビを見てしまう。

 そこには──まるで絵に描いたように凶悪で並外れたデカさをした風貌をしていて、赤く光る鋭い眼光は配信を貫通して俺たち視聴者に威圧感を与えてきた。

「こわ……」
「か、かっこいい……っ!」
「琴葉?」

 俺が恐怖で怯えている中、一人感性のズレたことを言い放つ妹の方を振り返る。
 まるでイケメンアイドルを見るかのようにキラキラと目を輝かせていた。
 それを見て俺は目を細めた。

「えっと、怖くないのか?」
「え、かっこいいじゃん!」
「いや……それも分かるけどさ?」
「この無骨な筋肉とか……」
「ボディビルダーかな」
「いつまでも睨みつけてくるこのお目目とか……」
「ドMかな」
「どこをとってもかっこいいじゃん……っ!!」
「今のところ、ドSなボディビルダーを好きって言ってるようなものなんだが」

 すると琴葉はと突然ダンッと机に手をついて立ち上がり、声高らかに宣言した。

「決めたっ! 私絶対ドラゴンさんに会う!!」
「え、えぇ~……」

 どう考えても無理すぎるし、妹をそんな死地に送らせたくはないのだが、まだ小学生のかわいい妹の目標を「あきらめろ」とは言えるわけもなく……。
 うーん…………あ、せや!

「俺がいつか見せてあげるからな!」


──
────
──────


 ……ついに、念願のドラゴンを召喚できるのか──っ!

『……あのさぁ。ずっと空中に居座られると面倒なんですよ。逃げる気がないなら、いい加減下に降りて戦ってくれませんかねぇ』
「そうなんだ。ならもうしばらく空中にいようかな──」
『まぁ、どっちでもいいんですけど……とりあえずこの鳥は殺したんで』

 いつの間にかワイバーンの首を切り落としていたスサノオは、霧散するワイバーンを背に地上へ降りて行った。

「どわあああああああああああ!!!」
「ケンヤ! 僕たちは先に下で待ってよう」
「でもこいつは──そうか風魔法で。了解!」

 足場がなくなり自由落下をする俺をこれまた背に、サボリニキとケンヤは勢いよく地上に降りていく。


 ♢ ♦ ♢


 足元に空気のクッションを展開する。
 それを使って僕とケンヤは着地する。

『さて、それじゃあ最後の戦いと行きましょうか』

 そしてすぐにスサノオは僕たちと距離を詰めてくる。
 相変わらずバカみたいな速さで近づいてくる──けど!

「もう慣れたよ」

 僕に向かって振るってくるレイピアの軌道を風魔法で無理やり反らし、空気の刃を纏わせた右手を、レイピアを持つ手に向かって振り下ろす。

 まずは武器を奪う──!!

『……チッ』

 一瞬。
 ほんの一瞬だけスサノオは嫌がる表情を見せると、によって、僕の右腕が凍り風魔法が相殺された。
 結果的に、スサノオの腕は切断できず、ドンという鈍い音がなるだけに終わった。

 これはマズイ……ッ!
 この距離、僕の武器が相殺された。

 一瞬で危険を察した僕は、速さ最重視で煩雑な空気の塊をスサノオとの間に作成、バーストさせる。

「う──ッ!」

 スサノオと距離を離すことはできたが、自らへ影響を気にする暇がなかったので僕はかなりのダメージを追ってしまう。

「ケンヤ! 行くな! 今攻めてもカバーできな──」
『なら、まずはあなたを殺しましょうか』

 大した怪我も負っていないスサノオが、片膝をついている僕を見逃すわけがなかった。

 細いレイピア切っ先なのに、僕の視界のほとんどが埋まる。
 ケンヤは間に合わない。
 脳が死を理解したからなのか、時間が恐ろしくゆっくり流れるように感じる。
 命が奪われるまでのカウントダウンが脳裏によぎる。
 
 これは死────

「チェエエエストオオオオオオオッッッ!!

 僕の眼前にまで迫ったところで、スサノオは真横からぶつかってきた謎の巨大生物に吹き飛ばされる。
 角膜をわずかにかすったのか左目から激痛がするが、それよりも何があったのかが気になって仕方がなかった。

 顔をあげる。
 ドラゴンがいた。
 あとついでに、その上にスレ主がいた。

「お前さぁ! 確かにお前の風魔法があったら生き残るけどさぁ! そもそもお前が俺を連れて行ってくれればよかっただけじゃないんか!? そこに愛はあるんか!」
「ごめんせっかくかっこよかったのに台無しかも」
「えマジ? 今俺かっこいいターンだったん?」
「うん」
「……はよ言えよ!!! って、お前左目どうしたん!? ほらよ!」

 どうしたのかと聞いておきながら僕に回答する時間を与えるまでもなくヒールスライムをかけてくれる。
 その背後でドラゴンが追加で2体降りてきた。

「スレ主……強くなりすぎじゃない?」
「待て待て、なんでドラゴンこんなにいるんだよ!!」

 合流したケンヤが正しい反応を示す。

「あとこれ見てほしいんだけどよ……スキル【迷宮管理者ラビリンス・アドミニストレータ】、魔物装備・ドラゴンッ!」

 スレ主が名前で全部ネタバレしてるスキルを唱えると、スレ主の体が激しく光り、

『何度私を吹き飛ばしたら気が済むんですかねぇ!』

 しかし、スレ主の変身を待たずにスサノオが僕たちのもとに歩いてくる。
 そして、光に包まれているスレ主を見つけたスサノオはにやりと笑う。

『隙だらけの君から殺すとしましょうか』
「まっずぅ……ケンヤ、スレ主を守るよ!」
「ったく、なんでコイツは戦犯しないと気が済まねえんだよ!」

 スサノオはレイピアを強く握り直し、地面を強く踏み込むと──

「──スレ主いいいいいいいいいいいいい!!! なんで俺がいないところでちょっとおもしろそうなことしてるんだよ!!!」

 その後ろからア○レちゃんのごときスピードで突進してきたバカニキに、スサノオはまた吹き飛ばされた。

「あれ、今なんかいた?」
「ったく、今年の新人は存在を認識せずにボスと戦うのか。っと、すまない遅くなったな」

 九条さんも合流したところで、スレ主の変身が終わった。

「とう! どうよこのすが──なんか人増えてね?」
「おおおおおおおおお!!! スレ主かっけぇ!!!」
「お、バカニキじゃん! だろ!?」

 小学生二人はいったん置いておき、僕は九条さんに現在の状況を話す。

「──……なるほど。状況よくわかった。して、お前のその腕は溶かせないのか?」
「いや、そういうわけじゃないんですけど…………」
「私が溶かそうか?」

 僕が風魔法の名手なら、九条さんは炎魔法の仙人だ。
 おそらく九条さんなら一瞬でこの氷を溶かしてくれるだろうけど、

「これ、たぶんスサノオの技じゃないんです。だから解析しようかなとおもいまし──」
『その必要はないですよ』

 吹き飛ばされていたスサノオが帰ってくる。
 有効打はまだ一つもないので、当然のごとく怪我なしであった。

『君たちの人数が多くなりましたからね。本当なら姿を見せることなく勝ちたかったのですが──本気でいって差し上げましょう。こちらへどうぞ!』

 スサノオは声を張り、どこかにいる誰かを呼び込む。
 すると、スサノオのすぐそばの何もない空間からゆっくりとソレが姿を現した。

 氷でできた人形のような女性であった。
 そんな存在に──ただ一人、スレ主だけが強い拒否反応と怒りをあらわにした。



「お前──琴葉に何をした──ッ!!」

 俺はすぐに気が付いた。
 その氷の少女が琴葉とそっくりであることに。

『クク、何もしてませんよ。これは彼女のコピーです。そうですね……せっかくですし、あの日の真相を話してあげましょう』

 スサノオがそう言うと、レイピアを器用にクルクルとまわしながら語り始めた。

『あの日のスタンピードを起こしたのも私です。そしてその時も今回同様、とある目的があったのです──彼女の、あなたの妹を回収することでした。
「なぜなん──!!! …………どうしてだ?」
『クク! 正確に言えば、あなたの妹が15歳で手に入れる予定だったスキルを回収することが狙いでした。そのスキルは──【創造神《イザナミ》】。話せば長くなるので簡単に言うと、ここ地球にダンジョンを作った者とです。いちはやくそれに気が付いた私は、その日のうちに回収したというわけです。あの時はまだ15歳になっていなかったので使えませんでしたが、ここで封印している間に覚醒。こうしてコピーを作成したというわけです。あぁ、君の両親は妹が暴走しないように回収しただけですよ』

 …………おいおいおい、それってつまり、琴葉の偽物は絶対に倒せないってことじゃないのか?

『クク! いいですね。その顔が見たかったんです。その恐怖と絶望に包まれた顔がねぇ──』
「でも、完全なコピーはんだね?」

 スサノオの高笑いを遮って、サボリニキは自信をもって言い返す。

「完全なコピーは作れなかった。だから日本全国スタンピードを利用して一度日本を滅ぼし、使用可能な断片的力で徐々に自分だけの世界を作ろうとした。まぁ、完全なコピーができていたら僕たちはもう死んでいるだろうしね。あってるでしょう、誠実なスサノオさん?」
『……えぇ。彼女を封印したのは逃げ出さないことだけではなく、解析することが本当の狙いです。現在の解析度は99.9パーセント。明日完了する予定だったんですけどねぇ』
「解析が完了したら……琴葉をどうしていたんだ?」
『もちろん殺していました』

 やっぱり。

「お前はここで消す」
『クク。ぜひ有言実行してほしいものですが……残念ながらもう無理です。このコピーには勝てませんし、もう終わりです』

 それでもスサノオはもう待ってくれない。

『それでは命令です。このドラゴン3匹と5人を殺しなさい』

 スサノオは最後の命令を下した。
 俺たちはそれを見守るだけ。
 スサノオの言っていることがすべて本当の場合、俺たちはもう何もできることがないからな。

 もう、死を受け入れていた。




















 だが。
 いつまでたってもは訪れなかった。

 琴葉のコピーは、どれだけ待っても動かない。
 虚空を、いや、俺を見つめるだけであった。


『──……なにをしているのですかッ!!』


 そしてそれは──スサノオにとって想定外のことであった。
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