マドンナからの愛と恋

山田森湖

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もう一度、君と泳ぐ

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もう一度、君と泳ぐ

おれ、コウジは34歳の会社員。
ある日、街コンで高校時代の同級生・レナと再会した。しかも同じ水泳部だったレナ。あの頃、彼女は学校の“マドンナ”みたいな存在だった。

正直、久しぶりに会ったレナは少しぽっちゃりしていた。でも、それが何だってんだ。あの笑顔は、あの頃と変わってなかった。

その日をきっかけに、レナと週に一度ウォーキングを始めた。さらに一緒にプールにも通うようになった。彼女の泳ぎは、昔と変わらず美しくて、見とれてしまう。

先週は、映画と買い物、そのあとレナの家でご馳走になった。お互い、少しお酒も入ってて、つい、思いを伝えようとした。でもその瞬間、レナはおれの言葉をキスで塞いだ。

「シラフの時に聞きたい。今度、聞かせて」

そう言われてしまった。「今度」って、いつだ。普段のウォーキングじゃ、告白なんて雰囲気にならない。だからおれは決心した。

《次の土曜のウォーキング、少し遠出しない? ここなんだけど》

そうメッセージを送ると、地図と写真を添えた。
「いいよ、行こうよ」「楽しみにしてる」
やった、成功だ。

そして当日。
「おはよう、レナちゃん」
「おはよう、それこの前買ったやつだよね。やっぱり似合う」
「ありがとう。これも見て」
おれが見せたのは、前にレナからもらった赤いリストバンド。
「私も持ってきたよ」と、レナも同じリストバンドを見せた。

1時間ほど車を走らせ、有名なウォーキングスポットへ。
道中はずっと笑い合ってた。映画の話、あの日の惣菜の話――あの夜のことも。

「でもお酒飲みすぎて、あんまり覚えてないや」
ほんとに? あんな大胆なこと、忘れるかな…。

到着すると、すでにたくさんの人がウォーキングしていた。
「広いね、今日だけじゃ全部は無理かも」
「じゃあまた来よう。今日はこのコースを歩こう」

2時間たっぷり歩き、2人とも汗びっしょり。
「じゃあ、温泉行こうか」
近くの温泉で疲れを癒す。1時間ほど入り、レナがあがってきた。

さっきのスポーティーなウェアとは打って変わって、花柄のスカート。
「待たせたね。気持ちよかった~」
「うん、ほんとリフレッシュできたよ」

そのあと、レナが行ってみたいという近くの遊園地風の施設へ。
広場にレジャーシートを広げて、お昼を食べる。
レナのお弁当は、いつものおにぎりに加えて唐揚げ、煮物も入っていて豪華だった。

「おいしい、この煮物」
「よかった、初めて作ったの。気に入ってくれて嬉しい」

春の陽気に包まれながら、遊園地を散策。動物と触れ合いながら、ゆったりとした時間を過ごした。

気づけば日が落ちていた。
「レナちゃん、ちょっと寄り道してもいい?」
「うん、明日も休みだし」

30分ほど車を走らせ、小高い丘へ。そこは「星が降る丘」と呼ばれる場所。
周りはカップルばかり。ベタな場所に、ベタなシチュエーション――でも、今日はそれでいい。

ベンチに座り、空を見上げると――まさに星が降ってくるようだった。
レナが見とれている。その手にそっと、おれの手を添える。

「レナちゃん、おれ、ずっとずっと君が好きだった。高校の頃から、今も変わらずに」
「ありがとう、コウジくん」
「太ったからとか、関係ない。レナちゃんはレナちゃん。おれの大好きな人だ。だから、付き合ってほしい」
「もっと早く言ってよ……。私も、ずっと好きだったのに」

レナは泣きながらおれに抱きついた。そして、おれたちは口づけを交わした。
「コウジくん、今日……帰りたくない。一緒にいて。幸せ、噛み締めたいの」

その夜、おれたちはホテルで一緒に過ごした。スケベな気持ちがなかったとは言わない。でもそれ以上に、レナとの“つながり”を確かめたかった。

「コウジ、ありがとう。好きだよ」
「レナ、好きだよ」

おれの告白は成功した――というより、レナが成功させてくれたんだと思う。
だから、思う。
これからもずっと、一緒に歩んでいこうって。
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