マドンナからの愛と恋

山田森湖

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家族になった奇跡

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家族になった奇跡

おれ、コウジ。37歳の会社員。
街コンで、同じ高校・同じ水泳部だったレナと再会した。
当時、彼女はマドンナ的な存在。でも今は少しぽっちゃりしていて──それでも、可愛さは変わってなかった。

それがきっかけで、レナと週に一度ウォーキングを始めた。やがて一緒にプールにも通うようになり、自然と距離が縮まっていった。
そして俺たちは結婚し、ついにレナは女の子を出産した。

出産の翌日、俺は仕事終わりに産婦人科へ向かった。
「コウジ、お仕事お疲れ様」
「レナ、元気?」
「うん。ほら、私たちの娘。元気だよ」

レナの腕の中には、すやすやと眠る小さな赤ん坊がいた。
「おっぱいも飲んで、さっき寝たの」
「寝顔、可愛いね」
「寝顔も起きてる顔も、全部可愛いよ。うちのユキちゃん」
「ユキちゃんにしたんだ?」
「うん。“優しい”に、“希望”の“希”でユキ」
「いい名前だと思うよ」

名前も決まり、実感が一気に押し寄せてきた。
「今週末、実家に帰るから」
「わかった。迎えに行くよ」
「うん。着替えとかは昨日、お母さんに渡したから大丈夫」
「じゃあ、今週末な」
「お仕事、頑張ってね」
「ありがとう。じゃあね、レナ、ユキ」

土曜日、俺は2人を迎えに行った。
産婦人科の前で、記念に一枚写真を撮り、レナの実家へ向かう。

実家はすっかり“お迎えモード”で、赤ちゃん用の部屋にはオムツやミルク、着替えが所狭しと並んでいた。
「これくらいないとね。余っても使うからさ」とお義母さん。

レナも実家ということもあり、どこかホッとした表情をしていた。

「ほら、コウジくん、オムツ交換チャンスよ。教えてあげるから」

初めてのオムツ替え。あたふたしながらも頑張る。
「ほら、早くしないと第二陣が来ちゃうわよ」
「は、はい!」

こんなに大変だったとは思わなかった。

夜になると、レナの妹さんもやってきて、お風呂に入れる練習までさせてもらった。
ハードな一日だったけど、「やらなきゃいけない」と強く思った。

赤ちゃんを囲んで盛り上がる女性陣。
その中、俺はお義父さんと2人きりに。

「コウジくん、お疲れ様。でも、これからだぞ。頑張ってくれ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「聞いたよ、今お酒飲んでないんだって?」
「はい。レナが飲めないので」
「実は俺もやってたんだ。考えることは同じだな」

お義父さんは笑いながら続けた。
「俺なんか、家内から“優しいから結婚した”って言われたよ。顔は普通だから、ってさ」
「そんな……」
「でもコウジくんはカッコいいしな、俺より上だよ、ははは」

俺なんか全然だ。お義父さんのように、周りを優しく見守れる男になりたいと思った。
“イケおじ”って、こういう人のことを言うんだろう。

「じゃあ、そろそろ帰ります。よろしくお願いします」
「コウジ、またね」
「はい。また来ます」

帰り際、お義母さんから袋を渡された。
「これ、家に帰ったら飲んで」

中には缶ビールが6本入っていた。
「今週くらい、いいんじゃない? 私の愛情入りよ」

冗談交じりの優しさ。お義母さんの気遣いには、いつも助けられている。

家に帰り、さっそくビールの缶を手に取る。
ふと、ラベルの横に文字があることに気づいた。

「お酒我慢してくれてありがとう。今日は、飲んでもいいぞ」

明らかにレナの字だった。
そのほかの缶ビールのラベルはお義母さんの字。

なんと初めにレナを引き当てた。
やっぱり俺は、レナと出会う運命だったんだ。そう思わずにはいられなかった。

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