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第5話「距離の測り方」
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第5話「距離の測り方」
月曜日の夜、拓海は遅く帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま」
「遅かったね」
「ちょっと仕事で」
拓海はそれだけ言って、シャワーを浴びに行った。
私は彼の様子を見ながら、何となく違和感を覚えた。
最近、拓海は少し変わった気がする。
以前より、携帯を見る時間が長くなった。
そして、私に話しかけることが少なくなった。
翌日、私は在宅で仕事をしていた。
昼休み、携帯を見ると、健人からLINEが入っていた。
『最近どう?また会えたら嬉しいな』
私は画面を見つめる。
返信するべきか、しないべきか。
でも、結局、私は返信した。
『元気だよ。今週は忙しいけど、来週なら空いてる』
送信ボタンを押した瞬間、罪悪感が襲ってくる。
でも、何も悪いことはしていない。
ただの友達だ。
昔の友達と会うのは、普通のことだ。
夕方、千晶から電話がかかってきた。
「美咲、聞いて!あの後輩と飲みに行ったの!」
「早いね」
「でしょ?もう、すごく楽しかったの。やっぱり、ときめきって大事だよね」
千晶は興奮気味に話す。
「でもさ、ときめきって続かないじゃん。すぐに冷めちゃうし」
「それでもいいの。その瞬間が大事なんだよ」
その瞬間。
私には、もうそれがない。
「美咲は旦那さんとときめいてる?」
千晶の質問に、私は言葉に詰まる。
「まあ、落ち着いた関係だから」
「落ち着きすぎじゃない?たまにはドキドキしなきゃ」
ドキドキ。
最後にドキドキしたのは、健人と再会したときだった気がする。
その夜、拓海が帰ってきた。いつもより早い。
「おかえり」
「ただいま。今日は早く終わった」
「そっか」
拓海はソファに座り、テレビをつける。
私はキッチンで夕飯を作りながら、拓海の背中を見つめる。
この人と、どれくらい会話してないだろう。
ちゃんとした会話。
仕事の話も、趣味の話も、最近全然していない。
「拓海」
「ん?」
「最近、仕事どう?」
「まあ、忙しいけど、普通」
「そっか」
会話はそこで途切れる。
私は何を話せばいいのか分からない。
夕飯を並べて、二人で向かい合って座る。
「いただきます」
「いただきます」
テレビの音だけが響く。
拓海は黙々と食べている。
私も黙々と食べる。
「美味しい?」
「うん、美味しい」
「そっか」
また沈黙。
私たち、いつからこんなに会話がなくなったんだろう。
食後、拓海は風呂に入り、私は食器を洗う。
携帯が鳴る。健人からだ。
『来週の水曜日とか、どう?』
私は返信する。
『水曜日、大丈夫』
『じゃあ、また代官山で会おう』
『うん』
返信を終えて、画面を閉じる。
罪悪感がまた襲ってくる。
でも、同時に、少しだけ心が躍る。
寝室に入ると、拓海はベッドに入っていた。
「今日、疲れた?」
「まあまあ」
私もベッドに入る。
電気を消す。
暗闇の中で、拓海の気配を感じる。
以前なら、こういう時、拓海は私を抱いた。
でも、最近はそれも少なくなった。
私は拓海の背中を見つめる。
触れたい気もする。
でも、どう触れればいいのか分からない。
結局、私は何もせずに目を閉じた。
月曜日の夜、拓海は遅く帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま」
「遅かったね」
「ちょっと仕事で」
拓海はそれだけ言って、シャワーを浴びに行った。
私は彼の様子を見ながら、何となく違和感を覚えた。
最近、拓海は少し変わった気がする。
以前より、携帯を見る時間が長くなった。
そして、私に話しかけることが少なくなった。
翌日、私は在宅で仕事をしていた。
昼休み、携帯を見ると、健人からLINEが入っていた。
『最近どう?また会えたら嬉しいな』
私は画面を見つめる。
返信するべきか、しないべきか。
でも、結局、私は返信した。
『元気だよ。今週は忙しいけど、来週なら空いてる』
送信ボタンを押した瞬間、罪悪感が襲ってくる。
でも、何も悪いことはしていない。
ただの友達だ。
昔の友達と会うのは、普通のことだ。
夕方、千晶から電話がかかってきた。
「美咲、聞いて!あの後輩と飲みに行ったの!」
「早いね」
「でしょ?もう、すごく楽しかったの。やっぱり、ときめきって大事だよね」
千晶は興奮気味に話す。
「でもさ、ときめきって続かないじゃん。すぐに冷めちゃうし」
「それでもいいの。その瞬間が大事なんだよ」
その瞬間。
私には、もうそれがない。
「美咲は旦那さんとときめいてる?」
千晶の質問に、私は言葉に詰まる。
「まあ、落ち着いた関係だから」
「落ち着きすぎじゃない?たまにはドキドキしなきゃ」
ドキドキ。
最後にドキドキしたのは、健人と再会したときだった気がする。
その夜、拓海が帰ってきた。いつもより早い。
「おかえり」
「ただいま。今日は早く終わった」
「そっか」
拓海はソファに座り、テレビをつける。
私はキッチンで夕飯を作りながら、拓海の背中を見つめる。
この人と、どれくらい会話してないだろう。
ちゃんとした会話。
仕事の話も、趣味の話も、最近全然していない。
「拓海」
「ん?」
「最近、仕事どう?」
「まあ、忙しいけど、普通」
「そっか」
会話はそこで途切れる。
私は何を話せばいいのか分からない。
夕飯を並べて、二人で向かい合って座る。
「いただきます」
「いただきます」
テレビの音だけが響く。
拓海は黙々と食べている。
私も黙々と食べる。
「美味しい?」
「うん、美味しい」
「そっか」
また沈黙。
私たち、いつからこんなに会話がなくなったんだろう。
食後、拓海は風呂に入り、私は食器を洗う。
携帯が鳴る。健人からだ。
『来週の水曜日とか、どう?』
私は返信する。
『水曜日、大丈夫』
『じゃあ、また代官山で会おう』
『うん』
返信を終えて、画面を閉じる。
罪悪感がまた襲ってくる。
でも、同時に、少しだけ心が躍る。
寝室に入ると、拓海はベッドに入っていた。
「今日、疲れた?」
「まあまあ」
私もベッドに入る。
電気を消す。
暗闇の中で、拓海の気配を感じる。
以前なら、こういう時、拓海は私を抱いた。
でも、最近はそれも少なくなった。
私は拓海の背中を見つめる。
触れたい気もする。
でも、どう触れればいいのか分からない。
結局、私は何もせずに目を閉じた。
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